菩提と救済(思考と伝達について 最終回) 2008年02月29日 思索 「上求菩提 下化衆生(じょうぐぼだい げけしゅじょう)」という言葉がある。 上に向かっては精進を積んで悟りを求め、下に向かっては衆生を救済せよという仏教用語。仏道修行者の心得。 考えることと、伝えることの関係の鍵はここにある。 [Asagi's photo]より 考えること、上に向かって悟りを求める気持ちが強くなれば、思考はどんどん厳密になって、その表現も「正確さ…続きを読む
たとえ話の利点と欠点(思考と伝達について その10) 2008年02月28日 思索 ネットの世界では、表現者の自由度が高いために、自然と類は友を呼ぶようになる。同じ趣味思考の人たちだけで、コミュニケーションが盛んになって、「ネット魚群」を形成するようになる。 文章は誰を対象にしているかで、その内容や表現は当然異なってくる。 既存メディアとの対抗メディアとして考えるのか。同好の士を求めるための書き込みなのか。それとも自分用のメモなのか。 誰を対象としてい…続きを読む
哲学の文章(思考と伝達について その9) 2008年02月27日 思索 文章もジャンルによっては、難解なものがある。たとえば哲学書なんかの類(たぐい)。 哲学がわかりにくいのは、難解な表現や、そもそも意味の分からない単語が沢山あるから。 [Asagi's photo]より 哲学って抽象概念をよく扱う。目にみえなくて、形もないから五感で感知できないものがほとんど。直覚的に捉えられない。 哲学者は、思索の果てに、新しい概念を発見する。それ…続きを読む
ソムリエの表現能力(思考と伝達について その8) 2008年02月26日 思索 「子供の頃、近所のおばあさんの家に入り浸ってたことがあるんだけど、その時にごちそうになった、干し柿を思い出した。」 人気漫画「神の雫」で、フランスワインのジゴンダスを口にしたときのセリフ。 ソムリエは、嗅覚や味覚情報を的確な文字情報に変換できる名人。本人しか体験できないワインの味と香りをさまざまな表現を駆使して記号化する。 香りや味を表現するために、他の皆が知っているも…続きを読む
概念の伝達(思考と伝達について その7) 2008年02月25日 思索 日本語は場や状況設定を行う、すなわち思考の演算式をどのページに書くかといった初期設定を決めてしまえば、言葉をどんどん省略しても会話が成立する。 昨日のエントリーでいえば、10人おのおののキャラの思考の演算式は10枚の紙にそれぞれ独立して書き込まれる。 [Asagi's photo]より 読み手は主語がなくても、文章表現で何ページの演算式かを読み取って、主語を補う。結構複…続きを読む
会話におけるキャラ設定(思考と伝達について その6) 2008年02月24日 思索 日本語では、人物属性は、男言葉、女言葉に代表されるように文章表現で使い分けできるし、互いの関係性も敬語表現で分かる。 さらには、しばしば省略される主語でさえも、使おうとすれば、同じ人称、特に一人称の表現が多様だから、それと語尾表現を少し使い分けるだけで、キャラ設定すらできてしまう。 [Asagi's photo]より たとえば、ある人物の発言した意見にその他の人物が一…続きを読む
日本語の表現(思考と伝達について その5) 2008年02月23日 思索 論理的でない文章ってなにかというと、数式におきかえて考えてみると、「項」に複数の意味があって、どの意味なのか特定できないとか、「項」と「項」を繋ぐ演算式が間違っていて、どう計算してもその答えにはならないとき。矛盾した文章。 前者は表現の曖昧さにつながり、後者は論理が飛躍しすぎていると言われる。 表現が曖昧になるというのは、項である主語や目的語になっている単語に複数の意味があっ…続きを読む
日本語は論理的か(思考と伝達について その4) 2008年02月22日 思索 よく日本語は外国語と比べて論理的でないとか、いやそうでもないとかいった議論がある。 論理って、前提と結論とその間を結ぶ理由の塊のこと。その塊が連鎖したものが文章。 だから、前提と結論と理由をきちんと記述することさえできれば、それは論理的な言語ということになる。 その意味で最も厳密な言語はおそらく数学。 [Asagi's photo]より 前提は何々と定義して…続きを読む
文字記号(思考と伝達について その3) 2008年02月21日 思索 世界中や日本国内でもネットブログで様々な記事がアップされているけれど、その媒体はもちろん文字。文字記号。 文字は記号として伝達媒体として働くけれど、揮発しないし、他の記号にも容易に変換できるから、昔から情報伝達の主役だった。 [Asagi's photo]より 文字は形あるものや、形のないものを文字「記号」に置き換えることで、コミュニケーション媒体の主役を担っていた。 …続きを読む
指向性と置換性(思考と伝達について その2) 2008年02月20日 思索 文化芸術活動におけるコミュニケーションって、なにかの形ある作品や記号に置き換えたものを媒体として行われる。だから受け取る側は、ほとんどが視覚と聴覚でそれらを検知することになる。 それら五感で検知できる、形あるものの中で、最も汎用性の高いものが文字を主体とする「記号」。 [Asagi's photo]より 特に不特定多数の人とコミュニケーションをとろうと思うと作品そのもの…続きを読む
知性と五感(思考と伝達について その1) 2008年02月19日 思索 考えることと伝えることについて考えてみたい。全11回シリーズでエントリーする。 [Asagi's photo]より 考えたことを誰かに伝えたりして交流することを、俗にコミュニケーションと呼ぶ。 コミュニケーションはラテン語の「communicatio」に由来していて「分かち合うこと」がその原義だといいう。 誰かとコミュニケーションするとき、何かの対象を分かち合うこ…続きを読む
戒律と取引コスト(中国産毒餃子事件について再考 最終回) 2008年02月18日 時事 政治 経済学用語で「取引コスト」というものがある。 「取引コスト」とは、「交換されたものの価値を計るための費用と、権利の保護や契約の遵守と執行のための費用」のこと。 たとえば、商品の輸入ひとつとっても、それが確かな商品であって、約束の期日に契約した数量がきちんと納められて、支払も完全に行われることが前提となっている。こうした取引をつつがなく完了させるための費用が取引コスト。 …続きを読む
やっぱり板ばさみ(中国産毒餃子事件について再考 その4) 2008年02月17日 時事 政治 これまでの報道をみるかぎり、どうやら中国は「個人の犯罪だった」という矮小化作戦を実行して、日本政府もそれに乗っているようにもみえる。すでに両政府間で合意があるのかもしれない。 岸田国民生活担当相は2月7日午前、TV番組で中国製毒餃子事件について「結果論だが、企業の食の安全に対する危機管理に問題があったのではないか」と述べて、日本の輸入業者の責任に言及した。 [Asagi's ph…続きを読む
「やらない」と「させない」(中国産毒餃子事件について再考 その3) 2008年02月16日 時事 政治 福田総理はかつて、靖国参拝の是非について問われ、「相手の嫌がることはやらない。」と答えた。確かに今回の毒餃子事件について、中国に責を問うことは「相手の嫌がること」だろう。 だけど、日本国民にしてみたら、毒食品を無差別に食べされられるのはたまらない。中国産食材の輸入停止をしていない現状は、日本国民にとっても「嫌がること」 福田総理は中国の嫌がることと、日本国民の嫌がることの狭間で立ち往…続きを読む
無為無策の効用(中国産毒餃子事件について再考 その2) 2008年02月15日 時事 政治 今の段階でも、日本政府は中国産食品に対して、輸入禁止措置をとることもなく、抗議もなく、対外的には特になにもしない、無為無策の状態にある。 [Asagi's photo]より 仮にこの無為無策になんらかの効用があるとすれば、国民の自衛意識を促したことと、中国の実態を国民に明らかにしたことだろう。 国民の生命が危険にさらされた、という事態にあって政府レベルでなにもしない…続きを読む
日本の勝利(中国産毒餃子事件について再考 その1) 2008年02月14日 時事 政治 続々と事実が明らかになってきた感のある中国産毒餃子事件について、さらに考えてみたい。全5回シリーズでエントリーする。 [Asagi's photo]より 今回の毒餃子事件については、先々週、「質と量」、「板ばさみ」でエントリーして、離れにまとめて「中国製餃子中毒事件について」としてエントリーしたけれど、だいだい拙記事で予測したような展開になってきつつある。 その記事で、…続きを読む
いのちをいただくということ (捕鯨問題について考える 最終回) 2008年02月13日 政治 思索 捕鯨問題で環境保護団体は、鯨は賢い生き物だから、殺すのは可哀想だ、と言っている。そんな人でも普段の食事では、なにかを食べている。たとえベジタリアンであっても野菜は食べるはず。 普段から野菜は平気に採って食べているけれど、もし野菜に感情があって、声を出せるとしたら料理なんかできなくなる。「やさいごろしー」と叫ぶニンジンに包丁は入れられない。 野菜の品種改良や遺伝子組み換えは気に…続きを読む
いのちの序列 (捕鯨問題について考える その9) 2008年02月12日 政治 思索 エコロジー神学からスチュワードシップという考えが生まれてきたけれど、この考えであっても日本人の自然観とはまだ対立する部分がある。 支配だとか、管理だとか言ったところで、人が動物を支配・管理または保護して「あげる」という考え方が根底にあるのは変わりない。 人が動植物を管理するということは、しっかり管理すべきものと、適当でいいものとを人間が勝手に決めている、ということを意味してる。言い換…続きを読む
日本的共生の思想 (捕鯨問題について考える その8) 2008年02月11日 政治 思索 山川草木みな仏性有り。悉皆成仏、悉有仏性。日本人はすべてのものに「いのち」を見出していた。 日本人的感性では、他の動植物を食べるということは「いのち」をいただくのと同じ。 歴史的に、日本人の殺生は生態系を壊さない範囲の「間引き」という考えが中心。採れた作物、獲った獲物は感謝していただくし、時には彼らのために供養すらする。日本各地にある鯨神社なんかはその一例。 そこには、自然を管…続きを読む
スチュワードシップ (捕鯨問題について考える その7) 2008年02月10日 政治 思索 ――神は彼らを祝福して言われた。「生めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを支配せよ」(創世記1章28 節)―― 西洋、特にキリスト教文明圏では、神と人と動植物がはっきりと区別されている。創世記では、神は人にすべての生き物を支配せよ、と命じている。 従来のキリスト教の伝統的自然観では、自然を支配すべき対象と見なして、自然からある意味搾…続きを読む
世界一という意識の対立と背景のズレ (捕鯨問題について考える その6) 2008年02月09日 政治 思索 これまでに争われてきた捕鯨問題の争点はWikipediaによると下記7点となっている。 1.資源としてのクジラ 2.自然保護問題としてのクジラ 3.知的生物としてのクジラ 4.文化としての捕鯨 5.原住民生存捕鯨 6.ホエールウォッチングとの対立 7.人道的捕殺問題 それぞれについての様々な意見はあるのだろうけれど、これを更につきつめてみると、鯨を資…続きを読む
民主国家と独裁国家におけるプロパガンダの違い (捕鯨問題について考える その5) 2008年02月08日 政治 思索 プロパガンダそのものの意味合いも、相手が民主国家か、独裁国家なのかで少し異なる。そのポイントは民意が反映されるかどうか。 民主国家では良くも悪くも民意が国策に反映する。だから民間レベルで反撃しても、相手国の民意がなるほどそうだ、と思えばやがて国政に影響してブレーキをかけることができる。また「反撃のルート」のエントリーでも言ったように、民間レベルと国レベルとの2つの反撃ルートがあるから、決定…続きを読む
反撃のルート (捕鯨問題について考える その4) 2008年02月07日 政治 思索 プロパガンダに対して反撃をするとき、民間レベルで行うのと国家レベルで行うのはその意味合いが多少異なる。民間レベルでの反撃は、いくら激しく対立したとしても、それは国家意思ではない、と逃げをうつことができる。決定的な対立になるまでに時間を稼げる。 国家レベルの抗議になると、後戻りが聞かない。国が対外的に過ちを認めた場合は謝罪と賠償がついて回る。 だから、戦争のように白黒はっきり付くものな…続きを読む
抗議の分割払い (捕鯨問題について考える その3) 2008年02月06日 政治 思索 例の動画に対する反応は様々だけど、YOUTUBEのコメント欄をはじめとするネット上では日本に対する非難が主流で、新聞などのメディアでは、賛否両論、中には、自分達も牛や鶏を食べるよな、といった自省のコメントもあるそうだ。またオーストラリア地元紙でも、比較的中立的な意見も掲載されたらしい。 少なくとも非難一辺倒ではなくなった。 日本人はキレるギリギリまで我慢して最後に大爆発してしまうとこ…続きを読む
日豪プロパガンダ戦 (捕鯨問題について考える その2) 2008年02月05日 政治 思索 オーストラリアが日本の調査捕鯨に反対していることをめぐり、「豪州も希少な野生生物を殺している。人種差別ではないか」と批判する動画がYOUTUBEに投稿され、波紋を呼んだ。 閲覧は約3週間で80万回以上。豪州の公共放送ABCが、「品がないことだが、両国の関係には影響しない」とするスミス外相の反応を報じる事態にまでなった。 以前、「プロパガンダと逆輸入」や「特亜による精神侵略と使用…続きを読む
日豪捕鯨問題 (捕鯨問題について考える その1) 2008年02月04日 政治 思索 南極海で日本の調査捕鯨船に米環境保護団体のメンバー2人が拘束された事件が起こった。今回は、捕鯨問題について考えてみたい。全10回シリーズでエントリーする。 昨年11月のオーストラリア総選挙で、環境保護を掲げた労働党が圧勝した。労働党は「日本の調査捕鯨監視」を選挙公約に挙げており、もともと反捕鯨の強硬派。 オーストラリアでは、クジラ・ウオッチングが人気で、捕鯨反対の世論が根強い…続きを読む
板ばさみ(毒入り中国製餃子について 続編) 2008年02月03日 時事 昨日のエントリーで終わるつもりでしたが、被害が拡大していている現状を踏まえ、追記エントリーします。 中国冷凍猛毒餃子の件で、続々と健康被害があったことが明らかになってきた。 読売新聞の全国調査によると、被害者は1月31日現在で、30都道府県、計368人に広がっているという。また、天洋食品の加工食品は、少なくとも19道県の327の保育園、幼稚園と小中高校などの給食で使われて…続きを読む
質と量 (毒入り中国製餃子について) 2008年02月02日 時事 先日、食のリテラシーのエントリーを上げたばかりだったのだけど、先ごろ、生協で購入した中国製冷凍餃子を食べて食中毒を起こし、入院していたことが明らかになった。 本当は何ヶ月か前に分かっていたらしいのだけど、事ここに至っては、隠しきれなくなったのだろう。 報道各社も大きく取り上げている。ただ「不二家」や「赤福」「吉兆」に比べてこちらのほうが遥かに深刻な問題なのに関わらず、まるで腫…続きを読む
縁起のレイヤーが結ぶ世界 《エピローグⅢ》 と 「こころの翻訳」 2008年02月01日 思索 エピローグのⅢです。9章から最終回までのまとめです。文末に補追の3として、「こころの翻訳」をエントリーします。 ※コメントは敬称略 9.縁起レイヤー内通信の問題 概要:各縁起レイヤー内の通信は言語を媒体にして行われ、心の働きである知・情・意を伝達する。各縁起レイヤーごとに知・情・意の伝達の優先順位が異なる コメント:マルコおいちゃん 日比野さん、こ…続きを読む