■日本的価値観の構造 2008年03月31日 再掲 思索 1.日本的価値観の構造 日本的価値観とは何かと問いかけてみたとき、「和の精神」であるとか、「武士道精神」であるとかいろいろな答えが返ってくるだろうけれど、これほど人によって同じ言葉にならない価値感覚も珍しい。日本的価値観ってなかなか一言で言い表せられない。 これについて考えてゆくうちに、日本の価値観も伝統的な日本建築と同じ構造を持っているのではないかと気づいた。 武家屋敷などの…続きを読む
■都市化と日本人の美意識は両立するか 2008年03月31日 再掲 思索 1.都市化と日本人の美意識 日本人の美意識の中にある、あるがままが美しいという感覚が現代都市と両立するかどうかについて考えてみたい。 西欧の美の源流としてギリシャまで遡れば、存在そのものに美を内包するという立場と、存在を認識している人が美の価値を認めているという立場があるけれど、そもそも美の概念の対象そのものは広範で、定義そのものが難しい。 ここでは、都市化と日本人の美意…続きを読む
■日本人の美意識 2008年03月31日 再掲 思索 1.日本人の美意識 「僕もたまに外国のひとと碁を打ったり、将棋を指したりする機会がある。そのやってみた感じでは、どうも外国人は部分観で損をしても、総合力を出す力を持っているように思う。同じくらいの技量の日本人だと、部分部分にすばらしい力を出すことはあっても、調和観で負けている。いいかえれば、外国人のうつ手はギコチないようでもバランスがとれている」 昭和の大名人、故升田幸三の著書…続きを読む
【お知らせ】 本日よりしばらく謹慎・内観期間を取らせていただきます。 2008年03月30日 お知らせ 3/28のエントリーでお知らせさせていただきましたとおり、本日より4/4頃まで新規エントリーをお休みさせていただきます。 といっても、今週末だいぶ内観・内省することができ、あと一息のところまで来ている感じがあります。 本日から新規エントリー分の記事を書き始めたいと思っていますが、記事作成には数日は時間が必要ですので、お時間をいただきたくお願いいたします。 再開は早ければ4/5か…続きを読む
法灯を継ぐ (チベットについて 最終回) 2008年03月30日 時事 チベット仏教の聖地はラサ。だけど仏教そのものの聖地というわけじゃない。仏教の聖地は無論インド。 チベット仏教はインド仏教のいわば分家筋にあたるものだけど、本家のインド仏教は13世紀にイスラム教徒によって滅ぼされてしまった。 だけど、そのときインドの大僧院の座主がチベットへ逃れて、大切に守り伝えてきた教えや戒律の全てをチベットの僧侶に託したことで、仏教の本流はチベット仏教が受け継ぐこと…続きを読む
独立の代償 (チベットについて その2) 2008年03月29日 時事 チベットは独立を訴えている。無論その意思は尊重すべきであるし、支持すべきものではあるのだけれど、仮に独立できたとして、本当に独立を維持できるのかという問題はまた別にある。 独立国というのはなにも完全な自治を行っているというだけじゃない。外部に対する備えと窓口がなくちゃならない。軍備と外交がそれ。 チベットは天然資源が豊富だし、なによりヒマラヤを擁した水源がある。それは中国にとって、長…続きを読む
いつもの手 (チベットについて その1) 2008年03月28日 時事 チベット騒乱について再考してみたい。全3回シリーズでエントリーする。 チベット騒乱で、デモ隊の中にチベット人を装った警察官が刀を手に潜入していたのを目撃していたとの報道がされている。 本当だとすると、チベット族弾圧の口実のための自作自演か、上海閥による胡政権への揺さぶりなのかもしれない。 これまでの経緯について、「チベット事件のまとめガイドライン」殿で纏められている…続きを読む
【おしらせ】 次のシリーズエントリー後、しばらく謹慎いたします。 2008年03月28日 お知らせ 昨日の「ふたたび毒餃子」でいただいたコメントを切っ掛けにして、いろいろ振り返っているのですが、表題のとおり、次のシリーズエントリー終了後、しばらく謹慎したいと思ってます。 というのも、チベット関連記事のエントリーあたりから、どうも記事の質が変容しているような印象を受けたからです。 もしかしたら、自分の知らないうちに精神のダークサイドに堕ちてしまっているのかもしれません。 明日か…続きを読む
ふたたび毒餃子 2008年03月27日 時事 すみません。今日のエントリーは楽させていただきます。^^; 「チョンは小説より奇なり」さんの3/22のエントリー記事が、毒餃子のこれまでの経緯をわかりすく纏めていらっしゃいますので、引用させていただきます。 3/22のエントリー記事より引用 01月30日…中国製冷凍ギョーザで千葉と兵庫で10人が食中毒・うち1人が重体。ギョーザから有機リン系薬物「メタミドホス」が…続きを読む
最後の抗議(チベットデモと弾圧について 補追1) 2008年03月26日 時事 今回のチベット争乱に関して、エントリー中に気づいた点があったので、補追としてエントリーする。 ダライラマ14世は、今回の争乱に対して、原因や死者数を把握するため、国際的な独立調査団を要望するとともに、「中国指導部、特に胡錦濤(国家)主席とはいつでも会う用意がある」と述べ平和的解決を望まれている。そして今回の争乱が制御できなければ引退する、とも。 今回のチベットデモにしても…続きを読む
北京五輪が失敗するとき(チベットデモと弾圧について 最終回) 2008年03月25日 時事 昨日までのエントリーでは、中国が五輪成功を第一に大切なものと位置付けていると仮定してみたけれど、もし北京五輪が第一でない場合はその扱いは変る。 もし、中国政府が五輪ではなくて、政権維持を第一目的に置いていた場合、特にまだ政権基盤が盤石でない胡錦涛総書記が自身の権力を揺るぎないものにしようとしたときのことを考えてみる。 [Asagi's photo]より 中国共産党最…続きを読む
ショー・ザ・フラッグ(チベットデモと弾圧について その3) 2008年03月24日 時事 今回の中国政府によるチベット弾圧が一向に改善されない場合、欧米諸国と中国との対立はどんどん先鋭化していくだろう。そのときに世界から、日本はどちらの側なのか、というショー・ザ・フラッグが求められる。国の意思レベルとしての立場を問われる。 本当の意味において、人権というものを、人の命というものをあなた方は理解しているのか、と。 たとえば、アメリカ側から昨今の日本を眺めたとすると、…続きを読む
胡錦涛国家主席訪日の目的(チベットデモと弾圧について その2) 2008年03月23日 時事 今回起こっている抗議行動は、今までと違って同時多発の抗議デモ。一番中共が恐れるパターン。 チベット、四川、青海、甘粛省だけでなく、内蒙古やウイグル自治区でも同じようなデモが起こったら、鎮圧も大変になる。情報統制にも限界がある。 今回のチベット抗議行動で、中国政府はダライ・ラマ派との「人民戦争」だと声明を出した。人民戦争という文言は、日中戦争時の人民解放軍のスローガンであっ…続きを読む
抗議デモの拡大(チベットデモと弾圧について その1) 2008年03月23日 時事 先日来ブロガー諸氏が触れられているけれど、例のチベットはラサでの抗議行動とその弾圧について、4回に渡ってエントリーする。 3月10日から始まったチベットの抗議行動は、多数の死傷者を出しながら、その規模を広げている。民間活動団体「チベット人権民主化センター」によると、武力鎮圧への抗議デモは四川、青海、甘粛の3省計5か所に拡大しているという。 それに対して、中国当局は武装…続きを読む
普遍的価値(相互信頼とは何か 最終回) 2008年03月22日 思索 今や世界各国の上位レイヤー同士では、物凄い量の相互通信が行われている。もちろんグローバル社会になってきたから。 今の世界では、膨大な通信の中にあって、その内容をその都度咀嚼できないと価値観の消化不良を起こしてしまう。 そんな文化のコスモポリタンの中に長くいると、相反する価値観の間で社会の混乱を招くこともある。そんなとき往々にして起こるのは、半ば強権的に「これが正しいのだ」と規定して皆…続きを読む
現代の開国の問題(相互信頼とは何か その14) 2008年03月21日 思索 これまでの実績から見る限り、日本はその十八色目の糸を巧みに縦糸に織り込んで、新しい考えとして建て増ししてゆくであろうと予想されるのだけれど、当時と今とで違っている点がある。 ひとつは、グローバル化が進んだことで、新しい価値観の普及および均質化のための鎖国、価値観においての鎖国をすることが非常に難しいということ。 純粋な意味での鎖国をする為には、自国内で完結した自給自足が完備していない…続きを読む
十八色目の糸(相互信頼とは何か その13) 2008年03月20日 思索 相互信頼性が高いというのは、相手の行動や言動を信じて(予測して)行動しても不都合が起きないということ。西洋は契約という考えでそれを担保しているけれど、日本は自分も他人も日本的価値観構造を持っているが故に、最適な選択をするであろう、という前提で成り立っている。 日本におけるコミュニケーションは単に相互理解という意味だけではなく、その場に応じて最適な色を適用して対応できるかという値踏みを行って…続きを読む
コミュニケーションで得られるもの(相互信頼とは何か その12) 2008年03月19日 思索 コミニュケーションで得られるものは、相互理解。相互信頼はその先の話。 確かに理解の度合いが進めば進むほど信頼感が増すのは確か。だけどそれは、相手のアイデンティティや考え方に筋が通っていて、自分がそれを許容できる場合。 [Asagi's photo]より たとえば、なにかの事情で生活苦に喘ぎ、何度か窃盗かなにかで捕まった経験がある人がいたする。そんな人とコミュニケ…続きを読む
智慧とお金(相互信頼とは何か その11) 2008年03月18日 思索 お金の威力ってけっこう凄い。たいていの悩みなんて、お金があれば解決できることがほとんど。なぜかといえばお金は価値を貨幣換算して詰め込んだものだから。貨幣価値は別の価値に容易に転換できるから問題解決の力を持っている。 [Asagi's photo]より お金は「時間」を買える。 お金は「空間」を買える。 お金は「労力」を買える。 お金は「情報」を買える。 …続きを読む
下位レイヤーの大切さ(相互信頼とは何か その10) 2008年03月17日 思索 本当に注意しないといけないのは下位レイヤーの状態。地域共同体・知人レイヤーと血縁レイヤーがしっかりしているかどうか。 この下位レイヤーがほどけることは、国の歴史や民族のアイデンティティの喪失を意味する。上位レイヤーは、国家だとか会社だとか思想だとか抽象性・汎用性の高いものだけれど、下位レイヤーは、個人の生活そのものに根ざした個別的・具体的なもの。だからこの下位レイヤーに流れているものほど、…続きを読む
縁起の糸の結び直し(相互信頼とは何か その9) 2008年03月16日 思索 相互信頼性が崩れた状態というのはいってみれば、縁起の糸が切れたりほどけているようなもの。糸が切られた対象は村八分みたいな状態。 どこまで糸が切れたら相互信頼が崩壊したと判断するかは難しいのだけど、そのレイヤーが機能しなくなるくらいまで相互信頼の喪失による糸の切断がある、というのもひとつの目安。 どこまで機能しているかという観点から、日本のレイヤーを見てみると各レイヤーそのものはまだ機…続きを読む
相互信頼性を破壊するもの(相互信頼とは何か その8) 2008年03月15日 思索 開国して新しい価値観が入ってくるとき、その入り口から社会的均質性は崩れてゆく。古くは仏教伝来、戦国期のキリスト教伝来の時期、明治の開国から今の時期なんかはそう。縁起の織物の一部に違う色の糸が入ってくる。 「世界調和の交響曲」のコメントで新快速 播州赤穂行き様から、日本の相互信頼性が崩れている事例として、安全や食品偽装等の問題や、ブログ炎上などを挙げられている。こうした事例を含めて、日本の縁…続きを読む
契約と均衡(相互信頼とは何か その7) 2008年03月14日 思索 今の社会で「契約」という考えはとても大きな意味を持つ。キリスト教圏でもイスラム教圏でも「神との契約」というインフォーマルな「戒」が脈々と流れているから。 日本人からみれば、外人は契約にうるさいし、仕事でも契約したことしかやらなくて気が利かないって思うこともあるけれど、さもありなん。「神との契約」が根本にあるから一字一句そのとおりにする。むしろそのとおりにしなければならない。気を利かせて余計…続きを読む
相互信頼性とは何か(相互信頼とは何か その6) 2008年03月13日 思索 相互信頼性とは、社会生活を成立させる要素、規範を互いに尊守するだろう、という暗黙の了解。 法律で定められた規範は目に見える形で、また同時に国内に広く普及し運用されているものだから、人々は法律ぐらいは守るだろうという了解がある。法律を犯せば罪に問われるのだから、普通はしない筈だ、と。 だけど、世の中は法律だけで成り立っているわけじゃない。 法律が想定していなかった出来事や、マナー…続きを読む
空気を読むという法意識(相互信頼とは何か その5) 2008年03月12日 思索 日本は個人の価値観と社会的規範、つまり「聖」と「俗」が分離していない社会。 「聖」の部分は家庭内教育や伝統的価値観で形成されることが多いから、縦糸がおもな役目。「俗」は社会規範、社会を治めていく規範だから横糸が担う。 日本の縁起の糸は「十七色の縦糸」で触れたとおり、横糸から新しい色の糸が繋がってきても、そのまま縦糸の中に織り込んでしまう構造を持つから、最終的には「聖」の縦糸も「俗」の…続きを読む
日本人の法感覚(相互信頼とは何か その4) 2008年03月11日 思索 当日比野庵からリンクしている「途転の力学」さんの「日本人の法感覚とは」というエントリーにおいて、日本人の法感覚として、明治以降日本が輸入した「法」体系は、西洋のキリスト教的倫理観に基づいたものであるがゆえに違和感を感じているとし、「コミュニティ」には、本来「法」に頼らない問題解決能力が備わっていると述べている。 日本人の法感覚の淵源はおそらく聖徳太子の十七条憲法にまでさかのぼる…続きを読む
十七色の縦糸(相互信頼とは何か その3) 2008年03月10日 思索 日本は開国と鎖国を周期的に繰り返しては、他国の文物・思想を輸入しては咀嚼していった。 これを縁起のレイヤー構造で説明すると、開国の時期には、上位レイヤーである思想レイヤーと経済レイヤーを開放して新しい価値観を受信して、鎖国の時期にその受信した情報を下位レイヤーである、地域共同体・血縁レイヤーに伝達していったプロセスといえる。 それは開国の時期に、上位レイヤーの横糸に全く新しい色の…続きを読む
建て増し構造を保証した第十条(相互信頼とは何か その2) 2008年03月09日 思索 十七条憲法には、価値観の建て増しという日本的価値観の構造の原型が見て取れるといったけれど、その建て増し構造を成立させた理由はその憲法自身の中にある。第十条がそれ。 十条ではこう説いている。 「十に曰わく、忿(こころのいかり)を絶ち瞋(おもてのいかり)を棄(す)て、人の違(たが)うを怒らざれ。人みな心あり、心おのおの執(と)るところあり。彼是(ぜ)とすれば則ちわれは非とす。われ是と…続きを読む
十七条憲法(相互信頼とは何か その1) 2008年03月08日 思索 「世界調和の交響曲」のエントリーで、新快速 播州赤穂行様から『日本の「縦糸」「横糸」は強固であるという前提を、今後も持ち続けて良いのだろうか』というコメントをいただいたのを機会に、日本における相互信頼性とはなにかについて考えてみたい。全15回シリーズでエントリーする。 相互信頼性とは何かを考える前に、社会秩序を保つ上での「律法」について考えてみる。 律法というのは明文化された…続きを読む
Japan Blog Award 2008 授賞式参加報告 2008年03月07日 時事 10大ニュース まずは、総合グランプリのカータンさん、おめでとうございます。 とってもお洒落な会場でした。 今、さくっとJBAの公式HPを覗いてきましたが、詳細情報がないみたいなので、現地情報をば。 授賞式の進行は以下のとおり 19:00 開式 19:01 開会挨拶 19:02 JBA2008実行委員代表 挨拶 19:05 アワード説明・審査員紹介 19:10 各カテ…続きを読む
中国製毒餃子事件 追考 2008年03月06日 時事 すっかりぐだぐだになってきた毒餃子事件について、追考する。 [Asagi's photo]より 2月28日、中国公安省が記者会見し、中国国内で殺虫剤が混入された可能性は極めて低いと発表し、「中国側に責任はない」と宣言した。 日本に責任を押し付ける形のこの宣言。事態は次のフェーズに入ったとみるべきだと思う。次のフェーズとは、政府が中長期的布石を打っておくべきであるというこ…続きを読む