所信表明の僅かな変化とステルスモード

  10月28日、野田首相は、衆院本会議で所信表明演説を行った。 内容は、第3次補正予算案や復興増税などの関連法案の成立をめざすとしたものだけれど、中身そのものは、首相就任後始めての所信表明となる9月13日のものと大差ない。 まぁ、前回から1ヶ月半くらいしか経っていないから、そんなに中身が変わるものではないことは分かるけれど、ひとつ注目したい点がある。それは、増税の優先順位…

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民主党のTPP対立

  「農協はTPP反対でわめいて走っているが、物の分かる人を何人か捕まえて中立化する。あるいはこちらの応援団を中につくっていく」 仙谷由人政調会長代行 於:10/29 軽井沢・前原グループ勉強会 1.TPP推進派の理屈 TPP交渉参加問題について、政府が参加のメリットとデメリットを分析した内部文書を作成していたとの報道があった。内部文書が表に出てくること自体、政府内の対立の証…

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中野無双、とくダネを一刀両断

  「一行で言うと最大の問題は、国民にとって殆どメリットがなくて、メリットがあると言われていることは全部嘘っぱちで、で、デメリットは沢山あって、しかも農業だけじゃなくて、食の安全とか雇用とか環境とか色々あるにも関わらず、それについて全くマスコミが報道してないことにありますので、最大の問題はマスメディアですね」 京都大学大学院 工学研究科  中野剛志准教授 1.中野准教授のキレ芸 …

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ヘタれた中国とステルス・ノダ

   「今後の中日関係の健全な発展のためには、まず日本の新内閣および政府の各中国関係部門の公務員が中日間の4つの政治文書を学び直し、既存の共通認識や両国関係の原則を熟知し、かつ厳格に遵守して、政策の連続性と信頼性を確保することが必要だ。」 10.26 人民日報 「中日関係は『温故創新』を4つの政治文書の恪守が前提」 1.我々は揉め事を挑発することを望まない 10月24日、中国…

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アメリカの世界戦略と日本の岐路

  昨日につづいて、今度は「TPPの大局的見地とは何か」のエントリーのコメント欄で、opera様にいただいたコメントの返事をかいていたら、またまた長くなりましたので、これもエントリーさせていただきます。 まずは、いただいたコメントです。 今回のエントリーを読んで、「あぁ、なるほど」と思ったのは、保守系とされる一部の論客がTPP参加を強硬に主張する理由です。「TPPは中国包…

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TPPの大局的見地とは何か

   昨日のエントリー「TPPに参加するメリットとは何か」のコメント欄で、かめを愛する者様からコメントをいただいたのですけれども、お返事が長くなったので、エントリーとして上げさせていただきます。 まずは、いただいたコメントを以下に引用します。 参加したら「どうなる」という議論も大切ですが、「どうする」「どうもっていく」という議論も必要なのではないでしょうか。例えば、農業分野は自…

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TPPに参加するメリットとは何か

   10月24日、総理官邸で開かれた政府・民主三役会議に野田首相、輿石幹事長や前原政策調査会長など、政府・民主党の幹部が出席して、TPP交渉参加の是非について、来月のAPEC前までに党の意見集約を行い、方針決定することを確認した。 1.対立する民主党 意見集約というのは簡単だけれど、TPP交渉参加に意欲を見せる官邸と裏腹に、民主党内部では対立が激化している。 10月…

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アメリカの「撤退後」を検証する(「幻想の平和」纏めメモ 第5回)

  今日は、「幻想の平和」纏めメモの第5回です。前回の「抑止安心から委任へ」の続きになります。 今節で、レインは、覇権的戦略の前提条件を挙げ、それらについて反論を述べていきます。 5.戦略と国際経済 レインは、今のアメリカが取る覇権的な大戦略には「アメリカがユーラシアから撤退した場合、3つの面で国益を損なう」という前提がある、という。 その前提とは次のとおり。 …

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TPPブロック経済圏と日本の未来

「24の分野っていうのはいろんな分野があります。医療とかそういった分野もあれば、農業もあり、そういった問題をひとつをきちっと集めて議論していく。それから、特に、この問題は、外交、安全保障といった観点からの検討も必要だと思います。」 谷垣禎一自民党総裁 於:10/15 テレビ東京 1.ブロック化する世界 10月20日、野田首相はNHKの番組で、TPP交渉参加問題について「一定…

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花王デモと反格差デモ

  10月21日の昼、東京茅場町で、第2回の花王デモが行なわれた。 平日にも関わらず、主催者発表では、約700人超、200~250人の梯団が3つほどできたようだ。前回の二千人と比べれば、人数は減ったものの、同一主旨での2回目のデモで、これほど集まるのも珍しい。 それ以前に、何処か特定の団体が主催して、デモをするというのではなくて、ネットでの呼びかけに応じる形で人が集まり、ま…

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注目される北極海航路

「夏を迎えるごとに北極海は氷が減っている。大気と海洋の温暖化によって氷圏がどんどん縮小し、盛夏の氷面積は70年代末と比べて2~3割も少ない」 ノルウェー極地研究所・アリルド・スンドフィヨード氏 ロシアのプーチン首相は9月23日までに、「北極海航路」をスエズ運河に比肩する「世界的な大動脈」に発展させる方針を示し、インフラ整備に力を入れるよう関係当局に発破をかけたとの報道がある。 …

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ユーラシアを南北に縦断せよ

  「自由と繁栄の弧」の真ん中に位置し、豊かな資源・エネルギーを有する中央アジア・コーカサス地域に、皆様の注意を向けて頂きたいと思います。この地域を通り、ユーラシア大陸をタテ・ヨコ双方でつなげることに、日本は協力します。これを、「ユーラシア・クロスロード」構想と名付けます。 麻生太郎元総理 於:2009.6.30 日本国際問題研究所フォーラム 1.インド発アフガン経由モスクワ行き …

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ミャンマーの民主化と焦る中国

  「新政権の最重要の課題は、良い統治と汚職のない政府をつくるために共に働くことである。そのために、連邦政府、州・地域政府は透明で、説明責任を有し、憲法と法律に基づいた仕事をしなくてはならない。国民の声を尊重し、全ての国民が参加できるようにしなければならない。政府の仕事は迅速、かつ効果的でなければならない」 テイン・セイン ミャンマー大統領 於:2011.3.31 施政方針演説 1…

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EUも中国もブロックする三日月

   「我々は強力な超国家的統合モデルを提案し、それは現代世界の極の1つとなるとともに、ヨーロッパとダイナミックなアジア太平洋地域を結び付けることが出来る効果的なつなぎ役となるだろう。それはつまり、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが参加する関税同盟と同じ構成国からなる統一経済圏を基盤にして、さらに緊密な経済・通貨政策の調整を行う必要があり、完全な経済同盟を作り上げることも含まれている。」 ウ…

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南シナ海を最良の戦場とする中国

  南シナ海がキナ臭くなってきました…。 1.武器輸出三原則の見直し 榛葉賀津也元副防衛相を座長とする民主党防衛部門会議は10月13日、原則すべての武器輸出を禁じる「武器輸出三原則」の見直しを政府に求める方針を改めて確認した。 内容は、武器輸出を例外的に認める基準は次のとおり。 1)完成品の海外移転は平和構築や人道目的に限定 2)国際共同開発・生産の対象国は抑…

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世田谷ラジウム

  10月13日、文部科学省は、 東京都世田谷区弦巻の区道で最大3.35uSv/hもの高放射線量が検出された原因は、隣接する民家の床下にあった瓶の中の放射性物質だったと発表した。 民家の床下から見つかった放射性物質は、木箱の中に数十本の試験管のような瓶の中に白い粉の状態で入っていた。瓶は、木箱と紙箱で2重に梱包されており、大きい瓶は高さ7、8センチで太さは5、6センチで、茶色に変…

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どじょうのツンデレ

   「民主党は料理は自民党に作らせ、自分は食べることしか考えていない」 自民党幹部 10月13日、民主党の前原政調会長は、自民党の茂木政調会長と国会内で会談し、第3次補正予算案と復興増税に関する民主・自民・公明3党の協議をスタートさせることで大筋合意した。 それを受けて、同じく13日には、自民党の茂木政調会長は、公明党の石井政調会長と、民主党との3党協議を14日に行うことを…

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デクシア破綻とギリシャ危機

  今日は、ギリシャ危機についてです。   1.デクシア破綻 10月10日、EUの金融大手デクシアが破綻した。 デクシア(Dexia)は、1996年にベルギー系のCredit Communal de Belgiqueと、フランス系のCredit Local de Franceが合併して設立された公的金融機関で、ベルギーに本拠を置くヨーロッパ有数の金融グループ。 ベ…

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TPP交渉参加と野田首相の指導力

  「私が算出した政府試算は、関税撤廃等の自由化を10年やった場合の累積だ。TPP参加、不参加で3兆~4兆円差がつくとみているが、1年で3000億~4000億程度、GDPなら0.1%相当にしかならない」 野村証券金融経済研究所 主席研究員 川崎研一氏 於:「週刊東洋経済」インタビュー 2011.3 1.TPPに参加してもGDPは殆ど成長しない 野田首相が、TPPへの交渉参…

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抑止安心から委任へ(「幻想の平和」纏めメモ 第4回)

  今日は、「幻想の平和」纏めメモの第4回です。前回の「ユーラシアにあるアメリカの同盟国たち」の続きになります。 今節で、レインは、同盟国には国防の責任を負わせるべきだと主張していきます。 4.抑止安心から委任へ レインは、覇権主義者たちはユーラシアへの軍事的コミットメントを「ユーラシアでの大国間戦争での損害に対する保険的政策」だといい、それが戦争の発生を防いだり…

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放射能を怖がるな

  今日はちょっと趣向を変えて…。 10月9日のエントリー、「ウォール街占拠デモとダライ・ラマの後継者」 のコメント欄で、ちび・みみ・むぎ・はな様から、" 「歴史通」11月号の茂木弘道氏の論説は如何だろうか"とのコメントを戴いたので、お返事も兼ねて、エントリーします。 1. 「歴史通」11月号の茂木弘道氏の論説 「歴史通」11月号の茂木弘道氏の論説というのは、「放…

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はやぶさ/HAYABUSA

  公開中の「はやぶさ/HAYABUSA」を観賞してきましたので、今日はレビューを兼ねてこの話題を。 これまで、日比野庵では、なんどか「はやぶさ」についてエントリーをしてきました。 こんなこともあろうかと、エンジン同士を繋いでおいた(小惑星探査機「はやぶさ」について 前編)  選手交代のない宇宙(小惑星探査機「はやぶさ」について 後編)  「はやぶさ」の耐熱技術  …

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ウォール街占拠デモとダライ・ラマの後継者

  今日も、少しホットな話題から…。 1.ウォール街占拠デモ アメリカの「ウォール街占拠デモ」が全米に拡大・長期化している。 「ウォール街を占拠せよ」とのスローガンを掲げ、ローワー・マンハッタンで9月中旬に始まったこの抗議デモは、金融危機のあおりで広がる米大手企業と平均的な国民との貧富の格差への抗議運動として、日に日に拡大している。起点となったニューヨークでは、当初は…

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世論と小沢に挟まれた尾根道

  「どうしていくかの方向性がはっきり出ていない。失望感もあるだろうし、閣僚が本当に適材適所なのか、『政治とカネ』問題などもあると思う」 谷垣禎一・自民党総裁 ANNは10月1、2日に掛けて行った、世論調査で、野田内閣の支持率は47.2%と、政権発足直後の54.6%から7ポイント以上も下がり、早くも5割を割り込んだ。 自民党の谷垣総裁は、内閣が方向性を出していないことや閣僚の…

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日本の復活を告げる「ダイヤモンド・リング」

  「我々はこんなに素晴らしい国を代表していることを誇りに思わないといけない」 アルベルト・ザッケローニ サッカー日本代表監督 1.野田首相からは、未来の日本のビジョンは出てこない 10月4日、民主党最大の支持団体である連合の定期大会が4日、東京国際フォーラムで行なわれた。 古賀伸明連合会長は、その挨拶で、「鳩山、菅両政権は首相の指導力が課題とされ、思慮を欠いた発言…

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電子書籍とカバーと裏日記

  今日は、いつもと趣向を変えて、ぱらぱらと日々の雑感をだらだらと…。 1.電子書籍 電子書籍も大分普及してきましたね。アメリカのアマゾンドットコムでは、去年あたりから、ハードカバーよりも『Kindle』向け電子書籍の販売数の方が上回っているそうです。 そこで、ふと見つけた記事がこれです。 「電子書籍が紙に負ける5つのポイント」 この記事では、電子書籍…

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野田政権を密室に逃げ込ませるな

   「財務省の政務三役はみんな官僚の書いた作文を読む。シナリオがあって最初から最後まで全部読む」 片山前総務相 於:10/2 フジテレビ「新報道2001」 10月3日、野田首相は、埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎「朝霞住宅」の建設現場を約15分間視察した後、同住宅の建設を凍結する考えを表明した。 これは、先日の予算委員会などで、「復興予算や復興住宅にお金が要るときに、宿舎建設を…

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復興財源と緊急アンケート

  東日本大震災の復興に向けた2011年度第3次補正予算案と財源を賄う臨時増税案を決定した。 元々、政府税制調査会は歳出削減と税外収入で5兆円程度、所得税・住民税の増税などで11兆2千億円、合計で16兆円超を提案していたのだけれど、決定されたのは、税外収入を更に2兆円積み増して7兆円とし、その分所得税・住民税の増税を2兆円減らして9兆2千億円に圧縮した案。 税外収入が2兆円…

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スタンダード・ブルー

  今日は、アメリカの国防戦略と日本の対応についてです。 1.NSS2010とQDR2010 さる2010年5月27日、オバマ政権は、外交・安全保障政策の基本方針を示した「安全保障戦略(NSS)」を公表した。  通常、アメリカの安全保障戦略は、このホワイトハウスから出される「国家安全保障戦略(NSS)」に基づいて、国防総省から「4年ごとの国防戦略の見直し(QDR)…

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模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)

  もう1年も前の話になるのだけれど、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の第11回関係国会合が2010年、9月23日~10月2日に東京で開催され、参加国・地域での大筋合意に至ったとの報道があった。 これは、最先端の模倣品・海賊版対策に関する新しい条約のこと。 これまでは、1995年に発行された、WTOにおけるTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agr…

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ユーラシアにあるアメリカの同盟国たち(「幻想の平和」纏めメモ 第3回)

  今日は、「幻想の平和」纏めメモシリーズの第3回です。前回の「マグネット理論は本当に妥当か」の続きになります。 今節からレインは、東アジアに対するアメリカの戦略について解説してゆきます。 3.ユーラシアにあるアメリカの同盟国たち アメリカは大戦略面で選択肢を持っているとレインは続ける。それは、ユーラシアの大国間戦争を阻止するために、ユーラシアに軍を駐留させる方法と、…

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