何やら同じネタのローテーションになってしまいそうですけれども、今日はこの話題です…。

このほど、海上保安庁は中国漁船による珊瑚の密漁を取り締まっている映像を公開した。映像では、密漁船に対して、海保の巡視船が汽笛を鳴らすなどして領海の外へ退去するよう警告しているのだけれど、そんなので、解決するのなら、こんな問題になってない。
また、密漁船を捕まえるにしても、1隻2隻ならともかく100隻、200隻が相手となると事実上不可能。
海上保安庁は13日、小笠原諸島周辺で117隻の漁船を確認したと発表した。海保によると、12日に確認した117隻のうち、領海内に4隻、排他的経済水域内に113隻がいたという。10日の時点では76隻が海域を離れる動きを見せていたのだけれど、ここに来てまた舞い戻ってきたようだ。
まるで海保を嘲笑うかのような密漁船に対し、海保は限られた要員の中、大型巡視船を巡回させ漁船を領海内に入れさせない「戦術」を取っている。実際、多くの密漁船はレーダーを装備していて、巡視船が近づくとそれを探知して逃げてしまうそうだ。
そうした海保の頑張りもあってか、今のところ、珊瑚を積んだ漁船は見つかっていないという。海保のある幹部は「珊瑚は碌に採れていないはずで、じきに漁船は燃料や食料が尽きて帰るしかない。ねばり強く対応するだけだ」といっているようだけれど、そんな単純な話で済むのかどうか。
東海大海洋学部の山田吉彦教授によると、中国の漁船団は基本的に中国海警局の管理下にあり自由に動き回ることはなく、中国当局の関与が疑われるとし、今回の密漁船団の中には、襤褸襤褸の外見の割にアンテナ設備だけやけに立派は船が数隻混じっていることから、これが司令船ではないかと指摘している。
であるならば、この「偽装密漁船団」はかなり組織的な運動をすることが考えられるのだけれど、裏を返せば、彼らの動きそのものが、中国政府のメッセージであるともいえる。
実際、密漁船団は、APECで日中首脳会談が行われた10日に引き上げ始めている。中国政府のメッセージの可能性は否定できない。では、12日になって再び漁船団が舞い戻ったのも中国政府のメッセージなのかというと、やはりそうだと思う。
それはおそらく、岸田外相の発言が原因だとみる。岸田外相は11日、日中合意文書について「尖閣に領土問題は存在しない」とする日本政府の立場に変わりないという認識を示した。
これに対して、在日中国大使館は12日、「厳重な関心と不満を表す」と反発する報道官の談話を発表したのだけれど、それで慌てて、密漁漁船団をまた小笠原海域に送り返したのではないか。
まぁ、分かり易いといえば分かり易いけれど、そうであるならば、それなりの準備をして送り込んでいると見るべきだろう。海保の幹部がいうように「じきに漁船は燃料や食料が尽きて帰るしかない」などど甘くみてはいけないと思う。
なんとなれば、途中の海域に燃料補給用の船を浮かべておいてそこで給油してまた舞い戻ってくるとか、代わりの船に乗り換えてまたやってくるとか、いくらでも手はある。ひっきりなしに小笠原海域に漁船を送り込んでくることは十分警戒すべき。
そうしたことを考えると、日本政府は中国密漁船団をただ追い返すだけではなくて、漁船を拿捕できずとも、船長以下乗組員をしっかりと捕まえることも考えないといけないし、できることなら「司令船」とおぼしき怪しい船をターゲットにしたいところ。
彼ら密漁船は、巡視船が近づくと直ぐ逃げてしまって捕まえられないというのであれば、別に海じゃなくて、空から近づいて、臨検・逮捕したっていい。
実際、海保は10月の段階でそれを行っていたようだ。
「週刊文春」によると、海保は10月5日、密漁船に対してSSTを投入。SST隊員は、密漁漁船の真上からロープを伝って降下すると、軽機関拳銃を構えて船内に突入、包丁やモリなどで激しく抵抗する中国漁民を制圧し、横須賀へ連行したそうだ。
SSTとは特殊警備隊(Special Security Team:SST)の略称で、海保が持つ特殊部隊。関西空港海上警備隊と、1992年にフランスからプルトニウムを輸送した「あかつき丸」に警備のために乗船していた部隊が元となって設立された。
彼らの主任務は、シージャックやプルトニウムなどの重要な護衛任務、不審船事案対応等々、船舶内で発生した暴動の鎮圧、海賊対応、海外での邦人保護、覚醒剤密輸の取締りや密航の摘発などで、実戦経験は、日本の特殊部隊の中で最多を誇り、日本最強の特殊部隊と目されている。
SSTは、アメリカ海軍の特殊部隊SEALsから射撃から狙撃、接近格闘術、リペリング降下など特殊部隊の技術指導を受けており、今や世界有数の特殊部隊の能力を有するまでになっているという。現在は、教官としてフィリピンやインドネシアなど東南アジア諸国の海上治安機関に教育を行っているとも言われている。
これからは、このようなSSTなどの部隊も駆使しながら、相手の急所となる司令塔をまず押さえることが大切になる。当然、政府とてそれくらい分かっているだろう。海保を増強するといっても、そう簡単にいくものじゃない。巡視船は1年2年で作れても、乗組員はそうはいかない。限られた戦力を有効に使って、効力のある抑止に知恵を絞らなければ、国土は守れない。
SSTの実像を伝えるのに良いエピソードがある。
ある日、上層部から、SST基地に、命令が下る。
「SST、行けるか?」
SSTは即座に答える。
「行けます!」
そして、ひと呼吸おいて、SSTが上に尋ねる。
「それで、事案は何でありますか?」
そこではじめて、どんな事件と場所に出動するのか、聞くのだ。
「行けません」とは絶対に言わない。
まず、「行く」と答えるのだ。
そこに、日本人の生命と財産の危険があるならば、必ず出動して、その危険を取り除く。
もちろん危険が及ばないと確認されるまでは帰らない。
そして、出動した全員で帰ってくる。
『勇気ある撤退――出動したら、必ず全員で帰って来よう』
それがSSTの合言葉なのだ。
そして、それこそが、SSTが最強の海の特殊部隊である証しなのである。「海上保安庁特殊部隊SST」 小峯隆生=著より
この記事へのコメント
opera
当然ながら、具体的な情報は出てこないと思いますが。
billy kid
だって何のメリットがある?
この件は中国側すらも認める違法行為なんだから
ただただ中国の面子に傷がつくだけである
そこまで阿呆ではない
漁船が中国海警局の管理下にあるのは事実だが
中国海警局が習近平の管理下にあるとは限らない。
これは中国を眺める時に基本となる部分であり
「一つの中国」というのは日本側から見た幻想でしかない。
泣き虫ウンモ
集団性の質の問題なのかなぁ。
りりぱっと
しかしその集団は複数存在するのであるw
それだけ広い国ともいえる
まぁ結局、政府側は日本と関係改善をしたいが
それを邪魔したい勢力がいる、と考えれば綺麗に説明がついてしまうのも事実。
日本を含め他国はこれを「統制の取れた駆け引き」と勘違いしがちで
結果「外交上手な中国」という過大なイメージを持ちがちです。