今日はこの話題を極々簡単に…

1月20日、AP通信は「イスラム国」が日本人2人を人質に取ったと、インターネット上のビデオで主張していると報じた。
人質になったとみられるのは、昨年8月にイスラム国に拘束されたとの噂が流れた湯川遥菜氏と、映像通信会社「インデペンデント・プレス」のジャーナリスト後藤健二氏。
イスラム国は、動画で、身代金2億ドルを支払わなければ、殺害すると予告している。彼らのビデオ声明の全文は次のとおり。
(字幕で)日本の政府と国民へのメッセージ。このように、イスラム国は2人の殺害を予告している。
(映像で)日本の首相へ。おまえは8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した。
日本はわれわれの女性や子どもを殺害するのに、そしてイスラム教徒の家を破壊するのに、得意気に1億ドルを提供した。
従って、この日本人の命には1億ドル掛かる。そしてまた、イスラム国の拡大を止めるために、イスラム戦士と戦う背教者を養成するのに1億ドルを提供した。それで、こっちの日本人の命には別にもう1億ドル掛かる。
日本国民に告ぐ。おまえたちの政府はイスラム国と戦うのに2億ドル支払うという最も卑劣な決定をした。
おまえたちには、この日本人らの命を救うのに2億ドル支払うという賢明な判断をするよう政府に迫る時間が72時間ある。さもなければ、このナイフがおまえたちの悪夢となるだろう。
ただ、後藤氏については、昨年11月初旬から、「イスラム国」の関係者を名乗る人物から、後藤氏の家族宛に、「後藤さんを誘拐しているので、日本円で、およそ10億円の身代金を払え」とのメールが送りつけられていたそうで、日本政府が、海外の捜査機関に問い合わせたところ、このメールの発信元は、アメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏の首を切って殺害した、イギリス人なまりの英語を話す「イスラム国」メンバーと一致することまで確認していたようだ。
日本政府はこのイスラム国の表明を受けて、対策室を設置。安倍総理は外遊先から事実関係の確認に全力を挙げるとともに、関係国と協力し、人命第一に対応するよう指示し、訪問先のエルサレムでの記者会見で「人命を盾に脅迫することは許し難いテロ行為で、強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と述べた上で、17日にカイロでの演説で、イスラム国対策としてイラクなどに2億ドル程度の支援を行うとした件について「避難民が必要としている人道支援だ」として予定通り実施すると明言している。
イスラム国の公開した動画については、ネットでは、湯川氏と後藤氏の影の角度がそれぞれ違うことから、コラージュではないかという指摘もあるのだけれど、それぞれ別の場所で監禁しているのを別撮りして、一つの動画に合成した可能性は無論あり得る。
もしそうだとすれば、彼らは、別撮りできる機材と合成できる設備、そして、個々の動画をやり取りできるネットワークを持っていることになる。仮に動画のやり取りがネットを介してやっているのであれば、通信記録か何かをハックすることで場所を特定することができるかもしれない。だけど、彼らがそんなポカをするとも思えないし、メモリカードを直接持ち運びして手渡ししている可能性のほうが高いと思う。
実際、イスラム国や反体制派が支配しているシリア北部は、シリア政府も統治を失っていて、地上部隊による救出作戦などは困難であるという。そして、動画の"コラ"が本当であれば、2人はそれぞれ別の場所に監禁されている可能性が高く、救出は更に困難になるものと思われる。
万が一、身代金を払うことになったとしても、そもそも、彼らに接触するチャンスがあるかどうかさえ分からないし、一旦、身代金を払ってしまったら、味をしめた彼らが、更に身代金目的の誘拐をすることだって十分考えられる。
1月20日、アメリカのアーネスト大統領報道官は、CNNテレビに出演し、今回の事件について「ひどい戦術がまた繰り返された」とした上で、身代金を支払えば、こうした行為が繰り返されるだけだと、支払うべきでないとの考えを示している。
一方、欧州諸国では政府が身代金を支払った過去がある。例えば、フランスは2013年に自国民4人を解放するために、西アフリカ・ニジェールのイスラム武装勢力に2000万~2500万ユーロを支払ったとされる。
果たして日本政府がどういう判断をするのか分からない。なんとか2人の無事を祈りたいけれど、正直言って、状況は本当に厳しい。
この記事へのコメント
俊太郎
人間に自分の命と引き換えてでも曲げてはならない道があるのと同様、国家にも絶対に譲ってはならない一線というものがあると思います。
とかく情緒に流れて、誘拐された2人を気の毒に思うあまり本筋を曲げるようなことだけはしてほしくないと思います。
ほんとうに難しいのはテロリストとの交渉や対決ではなく国内世論、特に情緒と結びついた一見人道主義的、人名第一主義的な語句で飾られたつまらない妥協案をどう抑えこむかでしょう。