昨日の続きをごく簡単に…

イスラム国による邦人殺害予告動画公開を受け、警察庁は「国際テロリズム緊急展開班(TRT-2)」を派遣することを決めた。
この国際テロリズム緊急展開班は、1998年に結成された「国際テロ緊急展開チーム」を前身とする。邦人や日本の権益に関するテロが国外で発生したときに、現地に派遣され、情報収集や現地当局に対する捜査支援を行うのだけれど、より広範囲の支援活動を行う能力を持つものとして、2004年に結成された。
元より、現地での情報収集や捜査支援などの任務が主で、武力行使がメインというわけじゃない。だから、彼らが人質を奪還するなんてミッションは持っていないだろうと思われる。
今回イスラム国が公開した動画の冒頭には、安倍総理がエジプトのカイロで「テロや大量破壊兵器を当地で広がるに任せたら、国際社会に与える損失は計り知れません」と述べる様子を流し、身代金として、安倍総理が表明したイスラム国対策規模と同額の2億ドルを要求したことから、イスラム国は日本の援助を「敵対行為」と見做したのだろう。
だけど、日本の援助は、避難民向けの食料や医療など人道援助が中心で、非軍事活動への支援。だから、イスラム国の主張は筋違いだなどと大手紙は報じている。
ただ、そうは言っても経済は相互に繋がっているもの。日本がイスラム国以外の中東各国に資金援助をすれば、受け取った国々は、その浮いたお金をイスラム国対策に回せる。だから、イスラム国からみれば、「日本のお蔭で、我々への締め付けが厳しくなった」と叫ぶのも分からなくはない。まぁ、「人道支援」を建前にした「イスラム国へ圧力」が実態というところだろう。
だから、イスラム国は殺害予告動画を流して日本を脅しに掛かった。つまり、彼らは、日本の中東各国への援助を嫌がっているということの裏返しだと思う。
安倍総理は、シリアやイラクなどの周辺国に2億ドルの提供を表明したけれど、2013年のシリアの軍事予算は56億2700万ドル、イラクは179億8100万ドル。それに比べれば、2億ドルなんて僅かなもの。
だから、それでも、イスラム国が嫌がっているとするのなら、あるいは、今のイスラム国の内情は、あまりうまくいってないことだって考えられる。
イラク北部の住民の証言などによると、最近、イスラム国内部で内紛や脱走者が相次いでいたらしい。
イラク北部のモスルでは昨年12月、任命されたばかりのイスラム国の「知事」が内通の疑いをかけられて処刑。シリア東部デリゾール県でも「知事」の人事を巡って抗争が起き、更には、本拠地があるシリア北部ラッカでも、逃亡を図った外国人戦闘員約100人が処刑されたと伝えられている。
これまでイスラム国は、自身の戦闘員について、複数のメンバーの推薦がなければ新規に追加することはなかったらしいのだけれど、最近は、その戦闘員を徴集する動きがあるという。
例えば、イラク北西部のタルアファル近郊の村では、徴兵を拒まれたため、村を攻撃し、3人を殺害、約250人を捕虜にしたらしい。これが本当であれば、イスラム国は自身が劣勢にあると受け止めているということになる。何より、自分の戦闘員が逃亡を図るなんて事態は、過激派組織にとっては自身の存在基盤を揺るがしかねない問題。
あれだけ世界に喧嘩を売りまくって、敵を作っているのだから、肝心の戦闘員がいなくなれば、それで終わりになる。
まぁ、「覇道」といってしまえばそれまでだけれど、力で支配する組織は、勝ち続けることでしかその求心力を維持できない。一旦負け始めると途端に崩れてしまうことが多い。力に頼って出来た組織なのだから、肝心要の力を失ったらどうしようもない。
だから、イスラム国から脱走兵が続出したり、内紛が起こっているのなら、それだけ弱っているということ。ならば、このまま空爆を継続して、イスラム国への補給路を断って、じわじわと日干しにしていくのが意外と効果があるのかもしれない。果たして黒田官兵衛ならどう相対するのだろうか。
この記事へのコメント
sdi
「難民対策への財政援助は、難民を発生させている側への敵対行為だ」というのがISISの主張だということなら、それは彼らの自業自得でしょう。彼らのそんな主張を受け入れたら、日本のみならず第三国は紛争や内戦によって生じた難民に対する援助は一切できなくなります。我々がそんな彼らの主張に理解をしめしたり同意するそぶりを見せるだけでそれはISISが付けこむ隙になりませんかね?
今回の件で日本ができることがあるとしたら、おそらくフランスがやっている(であろう)表向きは「テロに屈しない」「テロリストと交渉しない」の建前を堅持しつつバックチャンネルで交渉して金と引き換えに人質の身柄を確保するしかないでしょう。(「身代金」として支払うのではなく、交渉の仲介人への「報酬」として払うなど)
日比野
>我々がそんな彼らの主張に理解をしめしたり同意するそぶりを見せるだけでそれはISISが付けこむ隙になりませんかね?
もちろんそうですよ。彼らの言い分は理解できても、それを飲むことなんてできません。認めるわけではなく、彼らのロジックは分かった、というだけです。そのつもりで書いたのですけれども、誤解を呼んだのであれば訂正いたします。
あと、水面下での交渉ですけれども、イスラム国側は「金が欲しい わけではない」と言い出しているようですね。喉から手が出るほど金が欲しいと、もう見え見えですよね。そうであれば、意外と交渉のチャンスがあるかも、とほんの少し希望が見えなくもないのですけれども、果たして、どこまで彼らとのパイプがあるのか…。時間もありませんし、厳しいことには変わりないかと。