今日もイスラム国邦人人質事件について簡単に…。

拘束された2人の消息についてですけれども、やはり情報が錯綜しています。共同通信によるシリア反体制派関係者への取材によると、24日夜時点で殺害予告の日本人は2人生存している、とのことですけれども、別の報道では、イスラム国が、湯川さんを殺害したという画像付きで、後藤さんのメッセージとする音声を公開したと伝えています。
なんでもその画像では、写真ボードを持った後藤さんの左手人差し指と中指の爪が剥がされているという指摘もあり、本当であれば、何らかの拷問を受けた可能性があります。
政府がヨルダンのアンマンに設けた現地対策本部では、本部長の中山外務副大臣が、現地の政府関係者らを通じた情報収集に全力を挙げ、官邸でも各国政府などを通じて得られた情報を分析し、解放に向けた取り組みを続けています。
24日、安倍総理は、ヨルダンのアブドラ国王と電話で会談し、2人の早期解放に向け、対応を協議したとみられています。
また、フリーランスのフォトジャーナリストやビデオジャーナリスト達で、2002年に設立された任意団体「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」は、2人の解放に向け、声明を発表。「私たちは、IS(イスラム国)の皆さんに呼びかけます。日本人の後藤さんと湯川さんの2人を殺さないように呼びかけます。人の命は他の何ものにも代え難いものです。イスラムの教えは、何よりも平和を尊ぶことだと理解しています。私たちは、同時に日本政府にも呼びかけます。あらゆる中東地域への軍事的な介入に日本政府が加担することなく、反対し、外交的手段によって解決する道を選ぶようにと。」と呼びかけています。
今回の邦人拘束について一部から、現地の「人質ビジネス」にやられたのではないかという指摘がなされています。
ヨルダンの有力紙「ドストール」のハムダン・アルハジ副編集長は、彼等は、通訳などを装った人物が行動を共にしている途中で、過激派側に売り渡す手口を使っていると述べています。
ハムダン氏は「犯行グループにとって、誘拐する対象の国籍は関係なく、今後も日本人が標的にされる可能性はある」と警告していますけれども、後藤さん以外にも、日本人ジャーナリストが拘束されかかった事例があるそうです。
2013年9月、報道カメラマンの横田徹氏が、シリア北部にあるイスラム国の拠点の一つで、案内役の地元有力者と組織の司令官を取材したですけれども、取材終了後、その有力者とアラビア語でやり取りた司令官は突然、横田氏に「今日中にシリアを立ち去らないと殺す」と迫り慌ててその場を離れたそうです。
その後、実は、司令官と有力者との間で「この外国人を2000ドルで売れ」というやり取りが交わされていたと知り、横田氏は「有力者は金に困っていなかったので、たまたま自分は助かっただけかもしれない。…外国人は手っ取り早くカネになる一番の『商品』。内戦が長期化しているシリアは状況が混沌こんとんとしており、誰がどこでイスラム国とつながっているかわからない」と述べています。
拘束された後藤さんは、昨年10月24日にトルコ経由でシリアに入国し、アラディンという最初のガイドとシリア北部の街マレアに入りました。そして、後藤さんはアラディン氏の静止を振り切り、イスラム国とパイプを持つという別のガイドとラッカに向かいました。
ところが、後藤さんは帰国予定日の29日になっても戻らず、11月上旬になって「シリアに同行したガイドに裏切られ、武装グループに拘束された」などとトルコ在住の知人に電話で連絡していたことが明らかになっています。
これが本当であれば、後藤さんも「人質ビジネス」で売られた可能性が非常に高いと思われます。
シリア北部の武装組織「北部革命戦士団」のメンバーでイスラム国支配地域に隣接する町の検問所に詰めていた人物によると、当時、イスラム国側に入ろうとする後藤さんらの通過を危険性が高いとして拒否したのだそうです。けれども、後藤さんは、北部を拠点とする別の反体制派組織「イスラム戦線」の幹部に電話で連絡を取って口添えを依頼し、その幹部が「イスラム国側にツテがあるため、戻れる保証がある」と伝えたことから、後藤さんらの検問所通過が認められたのだそうです。
この話を聞く限り、後藤さんは、やはり危険だと承知の上で、人脈を駆使しながらイスラム国に入っています。彼の中東やアフリカ地域を中心に戦争や難民問題などを取材した経歴を考えても、それなりの知識と経験を持っているものと推測されるのですけれど、それでも、裏切られ拘束されたのですから、それなりのプロジャーナリストでも通用しない程、現地は危険だということです。
それにしても、危険があると分かっていてなお、後藤さんはイスラム国に足を踏み入れたのか。
後藤さんは、去年8月、知人の湯川さんがシリアで拘束されたと報道された際、NHKのインタビューに対し、湯川さんから民間軍事会社のビジネスをどう進めればいいかという相談を受けたことを明かし、湯川さんからシリアへの渡航の予定を告げられたと答えています。更に、去年10月8日には、民放の情報番組に出演し、湯川さん人質事件を振り返っています。
後藤さんは、その後、シリアからイスラム国に向かうことになるのですけれども、その背景に、テレビ局からの取材依頼があった、という話が流れているようです。
ある政府関係者によると、御用メディアとして知られるテレビ局が10月下旬ごろ、シリア入りする前の後藤氏と接触し、取材依頼をしたらしいのですけれども、連絡が途絶えてイスラム国に拘束された疑いが出て、慌てたテレビ局が政権中枢に相談した、ということのようです。
まぁ、その真偽は筆者には分かりませんけれども、本当であれば、個人的興味プラス仕事でもシリアに行ったということになるのですけれども、その取材依頼の内容の中に"イスラム国と湯川さんの状況を探る"というのが含まれていたとしたら、依頼したテレビ局を含め、後々問題になるかもしれません。
過去にイラクで一時、武装勢力に拘束された経験があり、後藤さんと交流を続けてきたフリージャーナリストの安田純平氏は、ネットで公開されたとされる画像について、「はっきりとしたことは分からないが、画像はイスラム国が本気だという意思表示にとれる。身代金ではなく、仲間の釈放という新しい要求を表だってしてきたということは日本政府とイスラム国がきちんとコンタクトが取れていない可能性もある。…画像にイスラム国のロゴが入っていないことや背景が白いところ、そして動画ではないところなどこれまでのスタイルと異なっているところがある。2人が同じ場所にいれば動画で伝えることもできたはずで、2人が別の場所にいた可能性もある」と述べています。
今のところ画像の真偽は不明とされていますけれども、菅官房長官の会見を見る限り、政府はそれなりに情報を掴んでいるように見えますし、水面下で事態が動き始めているようにも感じられます。
※菅官房長官の「残る1名の…」という言い回しが…
ここ数日が正念場になるのかもしれません。
この記事へのコメント
俊太郎
怒りの矛先はテロリストに向けられるべきなのに政権に向ける人達が一定の層に一定数いますね。
これを意地悪く考えて「盤石を誇っていた安倍政権がこの件で揺らいだり倒れたりしたら喜ぶのは一体誰か」を考察した時
北朝鮮や中共がISISを唆した或いは入れ知恵をして邦人を拉致させたと考えるのは荒唐無稽でしょうか?
北朝鮮は元々そういう方面につながりがあるでしょうし中共は新疆ウィグル方面から陸路で彼等と接触することが可能です。
裏ビジネスとして武器弾薬を流したり或いはウィグル族孤立化のためわざとイスラム系過激派を抱き込むようなことをしているかもしれません。