談話と声明とポジショントーク

 
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2月9日、自民党の萩生田総裁特別補佐は、夏に発表されると見られている安倍総理の戦後70年談話について、公明党との与党協議は「なじまない」とし「与党内に事前検閲のような機運が高まっているが、裁量権は首相に預けるべきだ」と述べた。

これに対し、自民党の谷垣幹事長は「検閲と言うと、検閲みたいなものはしてはいかんと自動的に反応が出て来る。…表現の問題だろうが、用語法としては適切だったかどうかは議論がある」と釘を刺した。

無論、この羽生田特別補佐の発言は、公明党が、"安倍談話"の内容について、政府与党で認識を共有した上で作成するよう求めていることを受けてのもの。

2月4日、自民・公明両党の幹事長と国対委員長が会談した際、公明党の井上幹事長が「歴代内閣の談話を踏襲して作成するというのが安倍総理大臣の基本姿勢だと認識している。…談話の中身について今から言及するつもりはないが、談話の作成にあたっては一定の与党のコンセンサスが必要だ」と述べたのに対し、自民党の谷垣幹事長が「共通の認識を持つために与党としてどうするかは今後、相談していきたい」と応えている。

元々、談話というものは、時の内閣や個々の国務大臣の見解を表明しただけのものに過ぎず、談話そのものに何の法的根拠も拘束力も存在しない。もしも拘束力が発生するとするならば、それは、村山談話のように閣議決定を経て出される場合。

閣議決定は公式な内閣の見解の表明であり、その決定はその後の内閣にも及ぶというのが原則とされる。その意味では、閣議決定をして発表された村山談話は、歴代内閣がその責を負い、閣議決定も何もしていない河野談話については河野洋平氏個人がその責を負うという違いがある。

ただ、その閣議決定を経て発表される談話とて、内閣の外にまで拘束力が及ぶわけじゃない。

だから、この問題は、まず「安倍談話」なるものが、どのレベルでの談話になるのかがはっきりしないと、始まらない。安倍総理個人としての談話なのか、それとも閣議決定を行った上での談話なのか。

だけど、仮に公明が要求しているように、談話の内容に、与党、即ち自公のコンセンサスが必要だとするならば、それは"与党声明"というべきであって、談話のレベルではなくなるといっていいだろう。何やら民主党の岡田代表は安倍談話について「内閣が勝手に出して済む話ではない。野党も含め、いろんな意見を聞いて、日本全体として受け入れられるものを出していかないといけない」なんて発言したようだけれど、野党の意見を聞くのであれば、最早、国会審議と変わらない。

これは筆者の唯の憶測に過ぎないけれど、談話には与党のコンセンサスが必要だという公明の発言は、自民のブレーキ役を自認する彼らが、自身の存在を有権者にアピールする為に、発言しているように見える。

また、それに対して、与党協議は「なじまない」とした羽生田総裁特別補佐は、談話は国務大臣または、内閣までのものという原則を踏まえた発言ではあるけれど、これも、おそらくは自身の"総裁補佐"という、総理側の立場からの発言だと思う。

まぁ、その意味では、谷垣幹事長も似たようなもので、公明に対しては「今後、相談したい」と受け、羽生田氏に対しては、表現が適切かどうかは議論の余地があると批判している。まぁ、自民党幹事長は、連立相手である公明との関係を維持しながら、党内を纏めるという役目があるから。それ故に、公明の顔を立てつつ、羽生田氏に過激な言い方はするなと宥めたと見る。要するに谷垣氏は、自民党幹事長という立場での発言したということ。

だから、公明にしても、羽生田氏にしても、そして谷垣氏にしても、自身の立場に沿った発言をしているように思える。要するに、ポジショントーク。

ただ、谷垣氏は、与党協議について「現段階で言えるのは、有識者会議の議論をよく見ていこうというくらいだ」とさらりと述べているから、本心としては、与党協議など不要だと思っているかもしれない。

だけど、過去の何チャラ談話が、如何に日本の外交を縛ってきたかを考えると、いくら、法的拘束力が限定されているとはいえ、使い方によっては、善にも悪にもなる"諸刃の剣"の性質があることは否めない。

安倍総理が今回の談話をどういうものにするのかは分からないけれど、後世に禍根の残す談話にはしないよう切に願う。

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    歴史問題等には国際的に認められかつ日本の主張を
    入れたものになると信頼できるが, 談話は何も
    歴史解釈だけを触れるものではあるまい. 問題は
    最近の安倍内閣の自由主義経済へののめり込みから,
    TPPに絡めて金融や国内労働市場の全面解放を唱ったものに
    なるのではないかという点だ. 多分, 外国人永住権
    についてもかなり踏み込んだ内容になるのではなかろうか.
    兎に角, 「岩盤規制を撤廃する」という穏やかならざる
    ことを海外では平気でいう御人だ.

    こと保守主義という点については安倍晋三は信用ならない.
    2015年02月11日 12:44

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