今日も極々簡単に…

中国で宗教弾圧が加速している。
取り分け、目を付けられているのがキリスト教で、昨年辺りからキリスト教の教会が「違法建築物」として、次々と取り壊しされているという。2014年には、200を超える教会が「違法建築物」として取り壊しの対象にされたと報じられている。
中国が「公式に」認めている宗教は、仏教、道教、イスラム教、プロテスタント、カトリックの5つ。中国では、宗教活動は政府が認可した宗教機関や施設でなければ許されておらず、国の認可を受けていない施設で祈りを捧げている信者は定期的な取り締まりの対象となる。
昨年4月、中国浙江省温州市の三江教会堂が強制撤去されるという事件があった。
温州は古い商都であり、貿易港でもあったのだけれど、1867年にイギリス人宣教師・ジョージ・ストット(中国名:曹雅直)が、プロテスタント宣教団であるOMFインターナショナルから派遣されると、それ以来、布教活動の拠点となった。
ストットは、青年期の事故で片足を失っていたため、当初OMF内部でも中国へ派遣することについて反対意見も結構あったのだけれど、ストットは「両足揃った人間が中国に行かないから私が行くのだ」と強く主張し、中国への宣教を実現させたと言われている。ストットは、この地で23年もの間、宣教に努め、温州でのキリスト教会の礎を築いた
こうした歴史的な背景から温州は中国でも、特にキリスト教徒が多い地域の一つであり、中国のプロテスタントの間では、古くから「東洋のエルサレム」という愛称が定着していた。
この地では、プロテスタントは、自立、自伝、自養の"三自"を旨とする「愛国教会」と、中国の国家規制に抵抗して地下活動を展開する「家の教会」との二派に分かれているのだけれど、二派といっても互いに交流をしており、必ずしも敵対関係という訳ではないらしい。
中国政府は、教会堂以外での布教などの活動を一切認めていないのだけれど、教会内であれば、人を集めてもOKらしい。また布教そのものも表立ってやらなければよいだけで、教会内に誘って布教することは出来るのだそうだ。
現在、中国国内でキリスト教の信者は爆発的に増えていて、2012年末当時で全国1億人以上という推計もあるほど。これは、数でいえば共産党員8500万人を上回る。建前では、宗教を信仰している人は、中国共産党に入党することが禁じられているそうなのだけれど、実際は、共産党員の中にも信徒が拡大しているとされている。
三江教会堂は「愛国教会」が12年の歳月を掛けて建てた教会なのだけれど、彼等の、自分達の力と資金で活動する、"自養"の旗印通り、信徒の献金によって建設された。その額は5億円とも言われ、少ない貯えを捧げた高齢者達も少なくなかったようだ。
三江教会堂は、2000人を収容できる中国でも指折りの大きな教会となる筈のものだったのだけれど、完成間近になって、地元当局が突然、建築認可を超えた建物であるという理由で取り壊しを通知した。
当然信徒の一部が教会の前に集まって抵抗したのだけれど、当局は多くの警察官を動員して取り締まりに乗り出し、教会の代表者を逮捕。周辺道路を封鎖した上で、たった1日かそこらで建物の殆どを解体した。
「愛国教会」は中国当局公認の団体であり、無論、三江教会堂も建築許可などを正式に受けていた「公認教会」だった。また教会堂の建設についても、2013年9月の段階では、温州政府自らが公式サイトで「模範的プロジェクト」として称えていた。
それが突然の取り壊し。どうみても、共産党中央政府からの指示があったとみるのが妥当だろう。
実際、2015年1月、中国の浙江省の共産党指導部が「宗教信仰者は共産党への入党を禁ずる」とした禁止事項を今後は厳格に適用すると公表している。また、2014年には、温州市が市内の学校でクリスマスを祝うことを禁じる命令を出したのだけれど、時を同じくして、御丁寧にも複数の大学のキャンパスで、クリスマスのお祝いを中止するよう求める学生のデモが散発的に起こった。
だけど、温州におけるキリスト教の歴史および生活への密着を考えるとこの種のデモが自発的に起こるとは考えにくく、デモは当局に支持されたものだったとされている。
昨年9月から11月にかけて、習近平主席の演説や談話などを収めた「十八大以来重要文献選編(上)」、「習近平談治国理政」、「習近平内部講話」なる本が出版されたそうなのだけれど、それによると、習近平主席は2012年末に広東省を視察した際、「ソ連はなぜ解体したのか、ソ連共産党はなぜ崩壊したのか」と問、「重要な原因の一つは理想や信念が揺らいだからだ」と述べ、別の演説では「ゴルバチョフがまず党のイデオロギーと理論を改めたため、収拾がつかなくなった」と指摘。
そして、2013年8月に行われた全国宣伝思想工作会議での演説では、「政権の崩壊は往々にして思想の分野から始まる。政治の動揺や政権の交代は一夜にして起こるかもしれないが、思想の変化は長期の過程である。思想の防衛線が破られると、他の防衛線を守ることは非常に難しくなる。我々はイデオロギー工作の指導権、管理権、発言権をしっかりと掌握しなければならない。いかなるときでも手放してはならない。さもなければ、取り返しのつかない歴史的な誤りを犯すことになる」と強調したという。
習近平主席が毛沢東ばりの"文化大革命"を再びやろうとしているのかどうかは分からない。だけど、彼が中国人民の宗教のみならず、思想弾圧をしようとしているのは疑いない。"取り返しのつかない歴史的な誤り"を犯すのは果たしてどちらなのか。それは歴史が証明するだろう。
この記事へのコメント
できもせぬことを唱える耶蘇教
日本のクリスチャンを見ていても、自分が間違いをおかしたら、「人は罪びとだから」、と勝手に自分を許すくせに、人が何かすると「人は罪びとなのよ」と言って相手を責めたてる、というわけのわからない人をよく見ます。
できもせぬことを唱える耶蘇教、と言う言葉があったそうですが、まさにそのとおり、一種の原理主義であって、自己批判のできないキリスト教がはびこることは亡国の道、と思ってもいいんじゃないでしょうか。
ダブルスタンダードのこういう考え方をひろめることこそが、その国の弱体化につながるのは間違いありません。
習近平は、非常な倹約家で性格もいいそうですが、日本では、毛沢東の再来、といったイメージですよね。
習近平総書記、内部会議で意外発言
http://www.epochtimes.jp/jp/2014/11/html/d60740.html
「歴史上、中華民族が確固たる地位と影響力を有したのは、戦争や対外拡張ではなく、中華文化の強い感化力のおかげだ」