今日も極簡単に…

2月12日、安倍総理は衆院本会議で施政方針演説を行った。今回の演説で安倍総理は、経済再生、女性活躍、外交・安全保障などの分野で「戦後以来の大改革」を進めるとその決意を表明した。
その全文はこちらで公開されているけれど、見出しを列挙すると次のとおり。
一 戦後以来の大改革改革と名のついた見出しだけで3つもある。それも二の次、三の次なんてものではなくて、1番、2番、3番と頭に全部持って来た。
二 改革断行
三 経済再生と社会保障改革
四 誰にでもチャンスに満ち溢れた日本
五 地方創生
六 外交・安全保障の立て直し
七 二〇二〇年の日本
これが如何に特徴的なのかを比較するために、前回の通常国会での所信表明演説の見出しを見ると次のとおり。
一 災害に強い国づくりこれをみても明らかなとおり、今回の施政方針演説は明らかに"改革"に重点を置いていることが分かる。まぁ、それでも、細かくみれば、「地方創生」のように前回に続いて、今回も出ている見出しなどは、前回国会で十分に出来なかったものだと見ることができるし、逆に前回にあって、今回にない項目などは、ある程度目鼻がついたと見做していると捉えることもできる。
二 復興の加速化
三 地方創生
四 地球儀を俯瞰する外交
五 成長戦略の実行
六 おわりに
その意味では、前回、見出しに名を連ねていた、災害対策・震災復興が今回は出ていないから、一切何もしないかというと、そうとも言い切れない。
今回の冒頭「一 戦後以来の大改革」の中で、安倍総理は「経済再生、復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、そして外交・安全保障の立て直し」と述べているから、復興は改革の範疇の中でやるということなのだろう。
さて、その改革はというと、「二 改革断行」の中の小見出しを見ていくと、そのトップに来ているのが"農家の視点に立った農政改革"。安倍総理は演説の中で、「六十年ぶりの農協改革を断行します。農協法に基づく現行の中央会制度を廃止し、全国中央会は一般社団法人に移行します」とハッキリ宣言した。
2月6日、西川公也農相は閣議後の記者会見で「JA全中は強制権限を持たない新たな法人形態に移行する必要がある」と述べ、JA全中を3年で"解体"する方針を宣言した。
既に、通常国会に農業協同組合法改正案を提出し、農協法に定める全中の権限をすべてなくす方向で動き出している。
何故、JA全中を解体する方針を政府が定めたのかというと、その理由はいろいろ言われているけれど、大きなものとしては、JAという存在自体が時代にそぐわなくなってきたことと、TPP締結の障害になっているからだなどとされている。
JA(農業協同組合)は、通称"農協"として、庶民に馴染みのある存在だけれど、原則各地にある個別の農協組織を、その役割ごとに取りまとめるJAの全国組織がいくつかある。その全国組織の一つがJA全中。
例えば、農産物の集荷や販売を一手に担う全国農業協同組合連合会(JA全農)や、生命保険や損害保険のサービスを提供する全国共済農業協同組合連合会(JA共済)などがある。
そしてかの、JA全中は、JAグループ全体の方針決定や地域農協の指導を行うための組織で、いわば、JAの司令塔に当たる組織。ただ、司令塔といっても、実際は、各地域の利害を調整するのが主な役割で、農家に対しては、流通を握るJA全農や保険を扱うJA共済のほうが力を持っているらしい。
ただ、JA全中は、農業関連の政治交渉を一手に引き受けている組織であり、TPP反対を主導しているのもこのJA全中。
だから、JA全中がこのような"政治的立ち位置"を持っているがゆえに、安倍政権の農政改革の本丸として位置づけられたのではないかとも囁かれている。
JA全中は、全国約700の地域農協などから監査料などとして年に約80億円の「上納金(賦課金)」を集め、自身の運営資金としている。これは農協法17条「組合は、定款の定めるところにより、組合員に経費を賦課することができる」および17条2項「組合員は、前項の経費の支払について、相殺を以て組合に対抗することができない」とあるのをその根拠としているのだけれど、上納金がJA全中の運営資金である以上、政府との交渉の為の資金としても使われているわけで、もしも上納金制度を無くすことができれば、その分、JA全中の政治的力を弱めることができる。
政府はそこに目をつけた。JA全中から、"錦の御旗"である農協法を引き摺り下ろすことができれば、上納金という金蔓を断つことができる。
だから、政府は、「JA全中を農協法に根拠を持たない一般社団法人とする」、「地域農協に対する指導・監査権をなくす」という2点を掲げ、JA全中の解体に舵を切ろうとしている。
関係閣僚は「賦課金が減れば農家の所得も増える」と述べていて、更には、JA全中の組織改革であれば地域農協は反対しない、という読みもしているという。
安倍総理が所信表明の改革断行の中で、わざわざ"農家の視点に立った"農政改革と枕詞を入れたのは、JA全中への上納金を無くし、その分を農家に回すという意味が込められているのだろうと思われる。
まぁ、上納金を無くすことが、具体的に農家の収入にどう還元されるのかは分からないけれど、JA全中の解体が実現し、それが農家の利益となるのなら、これは農政における象徴的な改革事例と目されるようになるだろう。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
個人的には, これで安倍首相の改革主義が
つまずいてくれると有り難い.
どだい, これほどの改革を一人の首相の下で
行なうのは常軌を逸している.
全てが正しいなどと言うことはあり得ないのであり,
当たり前の観点から見ればかなりが間違いである.
更に問題なのは安倍晋三には国民の幸福が見えていないことだ.
はっきり言って, 安倍晋三が言う瑞穂の国の資本主義とは
全くの!
嘘っぱちである.
まずはデフレ脱却が先なのではないか.