日韓関係に頭を抱えるアメリカ

 
今日はこの話題を簡単に…

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2月16日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙が「日韓の反目を危惧する米国―慰安婦問題が安保協力の障害(Enmity Between South Korea, Japan Worries U.S.)」という記事を掲載し、日韓関係の悪化にアメリカが頭を悩ませていると指摘した。

WSJは、韓国政府が慰安婦問題について改めて、謝罪を要求しているのに対し、日本では、ここ最近、十分に謝罪してきたとの見方が勢いを増し、歴史問題に固執する韓国の姿勢が「韓国疲れ」と呼ばれる状況をもたらしていると指摘した上で、元慰安婦からの賠償請求にも1965年の日韓基本条約が適用されると安倍政権が主張してきたと伝えている。

WSJは、この悪化した日韓関係を日韓関係を改善させるためにアメリカが出来ることは、対話を促すくらいしかないとするアメリカ政府関係者の話を紹介した上で、最近、アメリカ政府が日本と韓国に機密情報を共有する覚書に調印するよう後押し、更に日本と情報を直接共有することに反対する韓国内の勢力をかわすため、米国は仲介役を買って出ることにも同意したと伝えている。

昨年12月29日に、「防衛秘密情報共有のための覚書」が日米韓の3ヶ国で締結しているのだけれど、これは、北の核とミサイル計画に関するものに限定したデータを、文書、写真、デジタルデータといった形で共有するというもの。

ただし、共有とはいっても、日韓の間で直接情報のやり取りをするという訳ではなくて、日本の情報はアメリカを介して韓国へ、逆に韓国の情報もアメリカを介して日本へという具合にアメリカを仲立ちとする形で行われる。

こうなったのは専ら、韓国世論が日本との情報共有に対する反発があったためとされているのだけれど、これについて、中央日報は「日本の右傾化を考慮し、日本との軍事協力は時期尚早だとして反対する意見も依然として少なくない」とし、韓国国防部の当局者の「批判的な見方があるため、韓日間の直接的な交流はしない」というコメントを紹介している。

WSJは、その一方で、専門家の一部は、米国がショック療法に踏み切って初めて日韓のいがみ合いが終結すると指摘し、釜山大学の政治学教授、ロバート・ケリー氏の「米国が日本と韓国を協力に向かわせる唯一かつ本当に効果的な方法は、本気で見捨てるぞと脅すことだ」というコメントで締めくくっている。

だけど、アメリカが本気で見捨てるということが、どこまで日韓両国への脅しになるのか。

先に述べた「防衛秘密情報共有」が何故締結されたのかというと、日韓双方にそれなりのメリットがあったからだ、と考えるのが普通。ではそのメリットとは何か。

アメリカのミサイル防衛の専門家、リキ・エリソン氏は、韓国は、日本国内にある米軍の最新型ミサイル早期警戒システム「Xバンドレーダー」の情報を欲しがっているのではないかと述べている。

エリソン氏によると、韓国はこれまで、日本は韓国が必要とするような有用な北朝鮮の軍事情報を持っていないと見ていたため、日本との情報共有を渋っていたのだけれど、昨年末、京都府内で日本国内2ヵ所目となる「Xバンドレーダー」が稼働を開始したことから、その情報をもらった方が良いと考えたと指摘している。

Xバンドレーダーについては、過去に「軍事挑発を再開させた中国」や「『2+2』と2016年」のエントリーで述べたことがあるから、詳しくは述べないけれど、Xバンドレーダーは、射撃管制レーダーと同様に、使用する周波数が高く(7~12.5GHz)、波長が短いので、小さな形状のものも識別できるレーダー。

本当は韓国とて、自身の国内にXバンドレーダーを配備すればいいだけの話なのだけれど、それについては韓国国内で賛否両論があることもあって、まだ配備できていないのだそうだ。その意味では、半ば"窮余の策"的、日本のXバンドレーダーの情報を貰おううと判断したのかもしれない。

次に、日本にとってのメリットなのだけれど、FT紙は、日本が韓国から欲しい情報は韓国軍のイージス艦が集める北朝鮮のミサイル発射情報だとし、「アメリカと日本は長年、自衛隊が韓国艦のデータにリアルタイムでアクセスすることが、ミサイル防衛上必要不可欠だと考えてきた」と伝えている。

何でも、専門家によると、韓国のイージス艦の情報を得ることで、日本は北朝鮮のミサイル発射に対処できる時間が「2分間増える」のだそうだ。

まぁ、アメリカが日韓両国を見捨てると脅すことが、どのレベルで"見捨てる"ことを指しているのか分からないけれど、仮に、防衛秘密情報共有の仲介を止める、という意味なのであれば、そのことで日本は、北朝鮮のミサイル発射に対応できる"2分"を失うデメリットがあると言える。

こと国防に当たっては、一秒の時間は砂金なんかより遥かに貴重なもの。だから、"2分"を惜しんで、国を危険な目に遭わせるのは本末転倒。"2分"を失っても国防に何ら影響がないのなら別に構わないけれど、そうでないのなら、それなりの対応は必要になる。

ただ、そもそも論からいえば、アメリカが見捨てるということが「脅し」になってしまうこと自体、外交を含めた国防体制に不備があることを意味してる。軍事機密は公開できないことはあるにせよ、政府は、国防の為に、何が必要かを国民に広報していく必要があるだろうと思う。

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    全ては米国の日本牽制政策の結果.
    本当に反省すべきは米国である.
    慰安婦問題でも南京問題でも
    米国がサポートした結果に過ぎない.

    また, 日本が何時までも被害者面して
    米国頼みしているのもアジアを不安定にしている
    原因の一つだ.

    日本政府がやることをやっていれば
    沖縄問題も起きる筈もない.
    2015年02月18日 12:34
  • opera

    最近のFT紙は、中韓の政治・軍事に関して、NYT紙以上に変な記事を書くことが多いような気がします。一種のポジショントークなのかもしれませんが。
     普通に考えて、韓国に提供された軍事情報が中国に駄々漏れになることを知っている日米が、どのような意味で韓国との情報共有を望んでいるのか、疑問です。
     しかも、米国は韓国に対して、2010年以降軍事GPSの使用停止や(イージスシステムを含む)各システムの更新停止、敵味方識別信号や各システムの暗号化情報の提供を取り止め、新規兵器の売却は議会承認が必要になっています。
     これは、約7年間韓国で重要軍事機密や政治情報が暗号化されずにやり取りされていたこと、韓国軍が軍事GPSを使わず商業GPSを使っていることが韓国国会でも問題となり報道もされていますから、ほぼ事実でしょう。
     となると、日米と韓国の高度な軍事情報の共有を望んでいるのが本当は誰なのかが、何となく見えてきますねw
    2015年02月18日 18:00
  • ポール

    ロバート・ケリー氏「米国が日本と韓国を協力に向かわせる唯一かつ本当に効果的な方法は、本気で見捨てるぞと脅すことだ」

    これぞアメリカ!日本は粛々と防衛体制を整える必要があります。
    本気で見捨てる?米軍基地を撤退するとでも?
    じゃあその後どうやって中東を含む世界ににらみを利かせるつもりか?
    2015年02月18日 18:07
  • kei

    「従軍慰安婦問題」
    マイケル・ヨン氏 IWG報告会 講演会が、
    2015年2月24日 18:30に
    東京都 千代田区 日比谷図書文化館で
    開かれます。

    ブログにアクセスして下さい。
    http://michaelyonjp.blogspot.jp/

    拡散をお願いします。
    2015年02月18日 23:34
  • sdi

    アメリカが日韓問題で「頭を抱える」のは、「韓国と日本が同じ陣営に居る」と考えているからでしょう。
    日本がアメリカに対してすべきなのは「韓国はもはや日米同盟と同じ陣営にいない。中国側に旗幟を変えてしまっている。韓国に対する対応を変えるときだ」と忠告することでしょう。
    ただ、日本国内でも「韓国と日本は同じ陣営にいる」と考えている(もしくは未練がある)人が多いことが問題ですね。
    2015年02月19日 01:36

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