今日はこの話題です…

自民党の二階俊博総務会長が、先日の韓国訪問での言動について批判に晒されている。
何でも、2月13日に行われた、朴槿恵大統領との会談で、慰安婦問題について朴大統領から「残された関係者が生きている間に解決したい。問題解決に最善を尽くすことが関係改善の第一歩だ。元慰安婦の名誉回復を図る納得できる措置が早期に取られなければならない」と言われたことを受け、「全くその通りだ。日本にも言い分はあるが、理屈を並べるだけで解決しないのはおかしい。真摯に向き合わないといけない」と答えたのだけれど、これが朴大統領の主張を丸飲みして腰砕け。何の成果も出せなかった、と報道された。
そうしたことも影響してか、二階氏は国内からバッシングを浴びている。
その二階氏は、2月16日の会見で「慰安婦の問題は、政府の見解と違うじゃないかと。違うわけがない。…私の考えとは違う考えを報道しているところもあるが、私は当然のことを申し上げたまでだ」と反論。更に、20日の会見では「(会談の内容を)気に入らん新聞が何かいらんことを書いているようだけど、おかしいですよね? われわれは一生懸命、解決の糸口をつかもうと努力しているわけだから。マスコミの皆さんも日本のマスコミらしく、協力をある程度してもらわなきゃいけない」と逆切れ気味にメディアの報道に不満をぶちまけた。
また、二階氏は記者会見の場で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の出国禁止状態が続いている問題について問われると、「産経側も努力していただかなきゃならないが、自民党としても今後引き続きしっかりやっていきたい」と述べた。
昨年10月9日、二階氏は、ソウル中央地検が産経の加藤氏を在宅起訴したことについて「いきなりこれが日韓問題に波及するというのは飛躍だ。…法的に考えることが大事だ。大人の対応ができるように、関係者でご努力いただきたい。われわれから新聞社の判断や韓国の司法がどうだとか、言うべきことではない」と官邸で記者団の質問に答えていたのだけれど、あれから4ヶ月経った今、はっきり日韓問題の一つとなっている。
確かに、在宅起訴直後の段階では、日韓問題に波及するのは飛躍だとの見方は普通だったかもしれないけれど、結果をみる限り二階氏の見立ては間違っていたことになる。
まぁ、二階氏本人の本音がどこにあるかは分からないけれど、筆者が見る限り、二階氏の発言には、一種の"癖"のようなものがあり、そこから類推すると、やはり彼は、ハト派らしく"調整型"の政治家ではないかと思われる。
筆者が気になった二階氏の発言の"癖"とは、自分の主張を述べる場合でも、相手の側からみた"枕詞"をつけて、一方的な言い方せず、双方それぞれに言い分、または責任がある形にすること。
例えば、産経加藤氏の件について質問されたときも、自民党としてしっかりやっていくとの発言の前に「産経側も努力していただかなきゃならないが」と枕詞をつけているし、朴大統領との会談で慰安婦問題に言及されたとき、全くその通りだ、との発言の直後に「日本にも言い分はあるが」と付け加えている。
これは、本音はともかくとしてお互いの立場に"配慮"する発言をすることで、誰が相手であっても敵対関係にならないようにする、という"政治家的テクニック"なのかもしれないけれど、いささか古いというか、今の時代にはそぐわなくなっている感がある。
二階氏の朴大統領との会談について、評論家の屋山太郎氏は「朝日新聞が誤報を認めた以上、朴氏の言い分は国際社会ではまったく通用しない。…その朴氏に迎合する二階氏は、自身の言動が、日本に着せられたぬれぎぬを世界に流布していることに気づかないのか。安倍晋三首相が韓国や中国に対し毅然とした姿勢を示していることで、向こうの出方も確実に変わりつつある。二階氏は、日本の外交が大きな転換点を迎えていることに気づいていない」と批判しているけれど、安倍外交が対韓・対中で成果を出しているだけに、二階氏の"敵を作らない"的な外交は、批判の矢面に立たされる公算が高い。
今回、二階氏は韓国に観光業界関係者ら約1400人を引き連れて訪問したのだけれど、彼は、日本全国旅行業協会の会長を務めている。
ここの所の日韓関係の悪化で、韓国への日本人旅行者がめっきり減っているけれど、昨年6月、ソウルのホテルで行われた日韓旅行業界関係者の会議に出席した二階氏は、「現状の日本と韓国の関係は異常だ。全て原因は日本にあると、怒られっぱなしでは観光する気にならない。日本から観光客が減っているのは、分かりきっている。これをどう打開するかを日本も考えるが、韓国側にも考えてもらわなくては」と発言している。
これは、前日にソウル市内で開かれたNHK交響楽団のコンサート会場の周辺で、韓国の市民団体が二階氏を名指しして歴史問題に関する日本への要求をアピールしようとしたことが原因の一つだとも言われているのだけれど、その真偽はともかく、ここでも二階氏は、打開策を韓国側に考えてもらうよう要求する発言の前に「どう打開するかを日本も考えるが」と枕言葉を付けている。
だから、こういう"相対する枕詞"を付ける言い方は、二階氏の"癖"といっていいのかもしれないけれど、こと相手が韓国の場合に、この枕詞は墓穴を掘る可能性がないとはいえない。
もう既に知られたことだけれど、かの国は、日本に対しては何かあるたびに、日本が悪いと日本のせいにして、自分が悪いとは決していわない。そして、一歩でも引いて見せると、5歩も10歩も踏み込んでくる。
そんな国を相手に、「日本も何々しないといけないが」なんて言おうものなら、ほらみたことか、と付けこんでくるに決まってる。
その意味では、このような人物を韓国への使者に立てた時点で、こうなることはある程度予想できた筈で、官邸もそれを承知で送り込んだのではないかと思う。
だとすると、二階氏を使者にした最大の理由は、会談できる可能性があるからという一点ではないかと思われる。
昨年10月と11月に日韓議員連盟と日韓協力委員会がそれぞれ訪韓しているのだけれど、韓国に"配慮"した日韓議員連盟は朴大統領と面会し、言うべきことをいった日韓協力委員会は、朴大統領との面会をキャンセルされる結果となったと産経が報じている。
今回の会談で、二階氏は安倍総理の親書を朴大統領に手渡しているけれど、これは朴大統領と面会して初めて出来ることであり、日韓協力委員会のようにドタキャンされてしまったらそれで終わり。
外交的にいえば、相手国に親書を手渡せないということは、そこまで関係が悪化していると、内外に知らしめることであり、安倍総理の"対話のドアはオープンだ"という姿勢そのものにも疑念を抱かせることにも成りかねない。
まぁ、親書を郵送で送り返すという前代未聞の非礼をするような韓国を相手に、そこまでして面会し、親書を手渡す必要があるのか、という意見もあるかもしれないけれど、日本は誠実にやることをやっている、というアピールは別に悪いことではないし、後々に効いてくる。
今回の二階氏の訪韓について、何の成果もなかったと産経あたりが叩いているけれど、安倍総理や官邸は、始めからそれを織り込み済みであり、官邸側からみれば、親書を手渡すことができればOKで、後は、二階氏が国益にマイナスとなるような変な約束だけをしなければいいくらいにしか捉えていないのではないかと思う。
二階氏は今回の朴大統領との会談で、慰安婦問題について早急に解決の必要があると発言しているけれど、2月18日、安倍総理は参院本会議で「この問題を政治問題・外交問題化させるべきではないと考える」と述べ、遠回しに二階氏の発言は日本政府としての政治課題ではないと仄めかしている。
実際、二階氏は2月16日の記者会見で「慰安婦の問題は、政府の見解と違うじゃないかと。違うわけがない。」とさらりと発言している。この発言を単独でみると、日本政府が慰安婦問題について謝罪か賠償をする気があるとする見方もできるかもしれないけれど、先の安倍総理の発言と合わせると、慰安婦問題は既に解決済みであり、政治問題・外交問題化させるべきではない、という具合に政府見解どおりの意味になる。
その意味では、官邸は、中韓首脳が会ってくれそうな人物は、"パイプ役"として使おうと割り切っている気がしないでもない。
勿論、これは政権基盤がしっかりしていて、それなりの求心力があってのことなのだけれど、タカ派と目される安倍総理が、ハト派を自在に使いこなせているとするならば、それは、一種の政権の"厚み"であり、安定感にも繋がっていくように思う。
二階氏の訪韓云々での批判はあるけれど、大事なことは、韓国に対して、政治が具体的にどういうアクションを成すかであり、現時点では、先の日韓スワップ終了にみられるように、徐々に韓国から手を引いていく流れになっているように思われる。
二階氏の訪韓は一体何だったのかは、もう暫くすれば、分かるようになるのではないかと思う。
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sdi
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