ヨルダンのスーパー国王

 
今日も極々簡単に…

 ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします。

1月5日、ヨルダン軍はISISのの拠点に対する空爆を再開した。

これは、先日ヨルダン軍パイロットのムアズ・カサースベ氏がISISの手によって焼き殺されたことを受けてのもの。

前日の4日、ヨルダンのアブドラ国王は、軍と治安当局幹部との協議で、「我々の信仰、価値観、原則を守るため、拠点に容赦ない攻撃を実施するだろう」と、空爆の方針を示した。

軍事ジャーナリストの世良光弘氏によると「イスラムでは土葬が一般的で遺体を火にかける行為はタブー視されている。最大の冒涜ともいえる火あぶりによる処刑で、アラブ社会全体を敵に回した格好だ」と述べているし、タレントのフィフィ氏も「ヨルダンのパイロットが焼殺された件。イスラムにとって、死とは一時的なもので、肉体を持って復活するという考え。 よって土葬というより風葬。土の上に置き、土に還す。火葬は『復活の阻止』を意味する。ISILはムスリムへの嫌がらせとしてあえて焼殺を選んだのか、何れにせよ彼らに信仰心は無い」とツイートしている

今回のパイロット焼殺で、ヨルダン国内でイスラム国への強硬論が高まっているそうだのだけれど、確かにタブーを犯せば反発される。

ISISに対する「大規模な報復」を表明したアブドラ国王は、指示するだけじゃなくて、自ら空爆に参加するという。

アブドラ国王は現在、ヨルダン陸軍の最高司令官なのだけれど、その経歴をみるとそれがお飾りではないことが分かる。

アブドラ国王は、ムハンマドの血を引くハシム家に生まれ、4歳でイギリスに留学。サンドハースト英陸軍士官学校を卒業し、オックスフォード大学で国際政治学を、アメリカのジョージタウン大学大学院で国際関係論を修めた人物。更には、ヨルダン軍の特殊部隊のコマンダーの経験もあり、戦車の操縦もできれば、攻撃ヘリのパイロットでもあるというから驚き。王室政府公用機であるA310を自ら操縦して外交先に出向くこともしばしばだという。

かとおもえば、一般人に変装して、知らぬ顔をして街中を視察する。ある時は、黒い長衣に赤と白のアラブの伝統的なヘッドスカーフをかぶって杖を突き、付け髭までして首都アンマンの保健省の関連部局を訪れ職員の対応をみたり、ヨルダンが大雪に見舞われて交通がマヒし、立ち往生した車を見かけると、周りの人に混じって、押してあげたり。

また、ある時には、タクシーの運転手に化け、警護もつけずに自分でタクシーを運転して高級住宅街から貧民街まで乗客を乗せて2時間以上走り廻る。

"国王タクシー"に乗った乗客はそれとは知らず、政治に対する不満や世間話を国王に聞かせたそうだ。だけど、その"超高貴な運ちゃん"はうっかりシートベルトをし忘れたために、交通警官に車を止められて正体がバレてしまうというオマケ付。

そして、またある時には、ビデオカメラを手に白髭と伝統的なアラブの衣装でテレビ記者に変装して経済特区を訪れ、内外の投資家に直接、インタビューしたこともある。この時は、インタビューの特別許可を持っていなかったために特区管理者に正体を暴かれてしまうのだけれど、居合せた人々が拍手喝采して近寄ってきたという。

いったい、どこの「遠山の金さん」なのかと思うけれど、そんな"スーパー王様"が実在するのだから世の中面白い。そしてこれはまた、ヨルダンという国が、国王のお忍び視察を許す程、治安が安定していることの証明でもある。実際、ヨルダンは中東諸国の中でもテロの危険性がもっとも少ない国で、外国報道関係者は必ずヨルダンから中継するという。

先にも紹介したとおり、ヨルダン国王が生まれたハシム家はムハンマドを始祖に持つ、中東世界でも本家本元の家柄。それゆえヨルダン国王はイスラム世界の正統な王であるとされる。

ヨルダン国旗にある、黒・白・緑の3本の水平の帯はそれぞれ、アッバース朝、ウマイヤ朝、ファーティマ朝を表し、赤の三角形は、ハシム家と、かつてオスマン帝国に対抗したアラブのレジスタンスを表すというから、それなりの自負があるのだろう。

そんなヨルダン国王が、ISISに対し報復を宣言し、自ら空爆に参加する。これはヨルダンのみならず、中東諸国にとっての象徴的な出来事になるのではないかと思う。

所構わず、喧嘩を売りまくっているISIS。破滅するまでこのまま走り続けるのか。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック