韓国の慰安婦集団訴訟をアメリカ連邦裁判所は受け付けるか

 
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戦時中、日本に強制徴用されたとして、韓国人の元徴用工と遺族の計約1000人が、日本企業約30社を相手取り、未払い賃金など1人当たり約1億ウォン(約1070万円)の支払いを求める訴えを3月中旬にもソウル中央地裁に起こすと報道されています。

この種の提訴は一昨年辺りから続々と起こされていて、今回で実に9件目。これらは2012年5月に韓国最高裁が、個人の請求権は消滅していないと判断を下して以降、相次いで起こされるようになりました。

そしてそれら訴訟の判決も原告の主張を認めるものばかりで、2013年11月には韓国の光州地裁が三菱重工に対し、慰謝料として女性1人あたり1.5億ウォン、遺族には8000万ウォンを支払うよう命じ、2014年10月には、韓国のソウル中央地裁が富山市の工作機械メーカー「不二越」に対し、元挺身隊の韓国人女性らへの賠償金支払いを命じる判決を言い渡しています。

ですから、今回の訴訟についても同様に、賠償命令を出す可能性は非常に高いと思われます。

まぁ、個人の請求権は消滅していないとした韓国最高裁判断の無茶苦茶さについては、「政府の立場に反する韓国司法」と「ちゃぶ台返しする韓国大法院」のエントリーで述べていますので、繰り返しませんけれども、要するに「遡及法」でもって断罪している点に問題があります。

過去の賠償問題に「遡及法」を適用すれば、あとからあとから、いくらでも難癖をつけては賠償命令を下すことができますからキリがなくなることは明らかです。産経の加藤氏拘束問題といい、韓国司法の異常さが浮彫りとなる事例ですね。

けれども、韓国は飽き足らず、3月にはアメリカのサンフランシスコ連邦裁判所で慰安婦問題に対する日本政府と日本企業の法的責任を問う集団訴訟を行うと報じられています。

原告団の弁護士であるキム・ヒョンジュン氏によると「今回の訴訟の根拠がアメリカの外国人不法行為法(ATA)および国際法上の人道に反する罪などであり、被告の中には日本政府はもちろん三井、三菱のような日本の様々な大企業が含まれる。…これだけでなく性的奴隷問題に関し日王をはじめとする日本王室の人物らと政府の人々を被告に追加し、彼らの個人的責任を問う可否を現在検討中」と述べているようですけれども、これも下手をすれば「遡及法」と絡んでくる可能性があります。

アメリカの外国人不法行為法とは1789年に制定された「連邦地方裁判所は、国際法または米国が締約国である条約に違反して行われた不法行為に限り、外国人によって提起される民事訴訟の第一審管轄権を有する」と定めた法律で、アメリカ国外の行為でも、アメリカ国内で物やサービスを提供する会社であれば連邦裁判所で不法行為責任を追及することができるとするものです。しかも訴訟を起こせるのは外国人のみという一風変わった法律です。

近年は、多国籍企業における不当労働行為に関して、この法律を用いて米国の裁判所で救済を求める動きがあるようです。おそらく、韓国の集団訴訟もこれに目をつけたものと思われます。

アメリカの連邦最高裁がこの法律について初めて判断したのは、2004年にメキシコ人をアメリカで刑事裁判にかけるため、メキシコからの連れ去りに関わったメキシコ人に対して起こされた民事訴訟である、いわゆる「ソーサ事件」でした。

この時、連邦最高裁は、「外国人不法行為法に従って裁判できるかどうかは、1789年当時において国際法違反とされていた海賊等と同じ程度に明確な内容をもち、諸国が受け入れている国際法の違反かどうかが基準である」として、短時間の恣意的な抑留はその基準を充たさないとして原告の訴えを退けています。

そもそも、外国人不法行為法が出来たのが1789年ですから、200年以上も前の法律です。これが今でも残っていることの是非はさておき、このような古い法律でもって、現在の問題にそのまま適用するのは、今の価値観で過去を裁く「遡及法」の疑いがあります。おそらく連邦裁判所は、それゆえに、ソーサ事件において"1789年当時において国際法違反とされていた海賊等と同じ程度に明確な内容"がなければ、外国人不法行為法は適用できないと判断しているのではないかと思われます。

では、翻って、慰安婦問題に外国人不法行為法が適用できるのかといえば、まず、慰安婦が1789年当時でも、国際法違反であるといえるだけも明確な根拠が必要になります。

そして更に、今回の訴訟における慰安婦問題は、アメリカ国内での問題ではないにも関わらずこの法律を適用できるのか、いわゆる「領域外適用」の可否という問題もあります。

2013年4月、アメリカ連邦最高裁は、ナイジェリアでの石油開発事業による環境破壊に対して抗議デモをしたナイジェリア市民らを、ナイジェリアの軍隊や警察が残虐に扱うのをロイヤル・ダッチ石油等が手助けしたという主張に基づく訴訟(キオベル事件)での口頭審理で、「他国の領域での国際法違反に基づく訴訟が外国人不法行為法の下で認められるかどうか」が争点となりました。

連邦最高裁の判決は、9人の裁判官全員一致で訴えを退けているのですけれども、他国の領域で外国人不法行為法が適用できるかについては、「仮に他国が同じような法律を作ってそれをアメリカの領域での行為にも適用すれば、アメリカ国民がその国での裁判に巻き込まれることになる」と指摘した上で、「アメリカ国外で起こっていることが、アメリカの領域に関わる面があったとしても、企業が所在するということだけでは、領域外適用する理由にはならない」とする意見と、「被告がアメリカ国民である場合や、被告の行為がアメリカの重大な国益を害する場合には、アメリカの領域外の行為であっても外国人不法行為法に基づく訴訟が認められる」ものの、「キオベル事件の被告は外国の企業で、拷問等に直接関わったわけではなく手助けしただけで、アメリカに事務所があるというだけでは、アメリカの国益の侵害にはならない」という意見とで分かれました。

ただ、いずれにせよ、キオベル事件の原告の訴えは退けられた訳で、外国人不法行為法の「領域外適用」については、アメリカの国益の侵害になるかどうかがの判断のポイントの一つになっているといえるでしょう。

要するに、日韓の慰安婦問題が外国人不法行為法で裁けるかどうかは、今の価値観で過去を裁くという「遡及法」の観点と、アメリカの国内法を他国に適用する「領域外適用」の2つの観点から判断されるべきだということです。

まぁ、韓国原告団のキム・ヒョンジュン弁護士がどんなテクニックを駆使してくるのかは分かりませんけれども、実際は相当難しいのではないかと思いますね。

この記事へのコメント

  • 金 国鎮

    太平洋戦争にアメリカは深くかかわった。
    戦後の対日占領の時期にはアメリカが日本のすべての実権を握っていたことが重要。
    これをアメリカの裁判所が背負うかどうかがさらに重要。

    多くの日本人・朝鮮人に必要な必要な過去の情報は今も明らかにはされていない。
    それを以て韓国人元徴用工がアメリカで訴訟に踏み切るという話だ。
    韓国人はアメリカとアメリカ人の現実を日本と日本人より理解しているようだ。
    というのは戦後の日本ではこのような政治姿勢を取る日本人は出てこなかった。

    アメリカで生まれてアメリカの土になった日系アメリカ人は今これを見て何と思うだろうか。
    又、今アメリカに生まれ育った日系アメリカ人・朝鮮系アメリカ人そして更に中国系アメリカ人に
    彼らが何を感じるのか聞いてみたいものだ・
    2015年03月01日 12:54

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