リッパード大使を襲った犯人に殺意はあったか

 
昨日の続きを極々簡単に…

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3月5日、アメリカのケリー国務長官が、訪問先のサウジアラビアで記者会見し、リッパート駐韓米国大使がソウル市内で襲撃された事件について厳しく批判しました。

ケリー国務長官は、「今回のサウジの訪問とは別の問題だが、強調したいことがある」と自分から切り出し、外交官の安全確保はオバマ政権の最優先事項だ。リッパート氏への卑劣な攻撃を深く懸念している。…米国はこうした攻撃にひるむことなく、普遍的な権利や価値に基づいて国益と信じるものを追い求める決意だ。…われわれの外交官を脅したり、危害を加えたりした者に問われる罪の最高刑での処罰を求める。」とコメントしています。

韓国から遠く離れたサウジアラビアでこの件を自ら取り上げ、そして、最高刑の処罰を求めると、内政干渉に近いところまで踏み込みました。まぁ、大使が襲われるという、アメリカの主権侵害に当たる行為を受けた訳ですから、それを踏まえた上での発言なのかもしれませんけれども、韓国は厳しく釘を刺された格好です。

これに対し、韓国警察当局は、リッパード大使を襲ったキム・ギジョン容疑者を殺人未遂や外国使節に対する暴行の疑いで逮捕状を請求しました。警察は、犯行時の状況から「未必の故意」を認定できるとしているようです。

「未必の故意」とは、犯罪を犯す積りはなくとも、結果的に犯罪になってもかまわないと思って、犯行に及ぶ容疑者の心理状態のことを指す法律用語で、殺人事件の場合は、たとえ明確な殺意がなくとも、襲った相手が死ぬ危険性を認識していれば、故意として殺人罪が成立します。

キム容疑者は調べに対し「殺すつもりはなかった」と殺意を否定し、脅すためにナイフを持って行ったと供述していますけれども、大使を何度も切り付け、顔面に深さ3センチもの怪我を負わせるほど刺しておきながら、殺す積りはなかったで通じるのかどうか。

リッパード大使は、顔面以外にも、左手親指の神経が損傷し、腱も断裂。更に腕にも貫通傷がありますけれども、これは大使が自分の喉を庇ったときに受けた傷だと言われています。

大使が襲われた詳しい状況は分からないのですけれども、もしもキム容疑者が大使の喉笛を掻っ切ろうとしていたとするならば、これはもう明確な殺意があった、と判断されてもおかしくありません。

今回の事件後、朴槿恵大統領はリッパード大使と通話を交わし「中東歴訪中に事件のニュースに接し驚きを禁じ得なかったし、胸が非常に痛い。…数年前に似たような経験をした立場からリッパート大使がどれくらい大変か分かる。…そのような状況では話すのが難しいことをよく知っている。話すことができるかどうか分かってから連絡した」と述べたと伝えられていますけれども、朴大統領は2006年5月の遊説中、男に襲われ、カッターナイフで顔を切られています。

当時、検察は、容疑者を殺人未遂罪で起訴したのですけれども、裁判所は「命を脅かしかねない首ではなく顔を狙ったもので、殺そうとしたというよりは長年の受刑生活に対する不満から犯行に及んだ」とし、殺人未遂を退け、暴力行為などの処罰に関する法律違反のみを認めています。

今回の事件では、大使は喉を庇ったと伝えられていますから、キム容疑者が大使の喉を狙った可能性も十分考えられます。

ですから、今回の事件で、キム容疑者に殺意があったかどうか、または未必の故意があったかどうかが一つの焦点になるかと思われます。殺人未遂罪は懲役5~9年が一般的とのことですけれども、ケリー国務長官の最高刑でという要求通りであれば、懲役9年辺りということですね。

尤も、先の朴大統領をカッターで襲った犯人は、殺人未遂罪が認められなかったにもかかわらず懲役8年の判決を受けていますから、今回の事件の事の重大性を合わせて考えるならば、もっと重い刑が科されるかもしれません。

…ちょっと力尽きました。今日はここまでとさせてくださいませ。

この記事へのコメント

  • sdi

    傷に関する診断を見ると、殺す気満々で斬りかかったとしか思えないんですけどね。
    2015年03月08日 01:46
  • 日比野

    sdiさん。どうもです。

    容疑者は、正確に喉を狙ってきたなんて目撃談もあるようですね。
    2015年03月08日 06:46

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