G20財務相・中央銀行総裁会議とAIIB
今日はこの話題を極々簡単に…
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4月17日、G20財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の成長につながる投資戦略を各国が9月までに策定することを盛り込んだ共同声明を採択して閉幕しました。
一部では、裏の主役になるのでは、と噂されていたAIIBについては、共同声明で言及されることはありませんでした。まぁ、運用や融資基準など、不明確だらけの現状で公式に触れられるわけがないといえば、その通りですけれども、中国は中国でAIIBをG20の場でアピールしたようです。
中国はAIIBについて自身の取り組みについて発言したほか、複数の国が、G20が目指している投資促進のための資金の出し手としてAIIBの意義について触れたようです。
これは、裏を返せば、今の世界銀行やADBが投資促進のための資金を出していないということになるのですけれども、いくつかの国はそういう不満を持っているということですね。だから、彼等にとっては、簡単に融資してくれるだろうと目されるAIIBが設立されることを期待しているわけです。
まぁ、期待するのは勝手ですけれども、借りた金は返さなくてはならないのが道理です。
経営コンサルタントの大前研一氏によると、海外インフラプロジェクトのほぼ100%が赤字なのだそうです。
道路や鉄道といったインフラは、通行料でも取らない限り、それだけで収益を上げることはありません。では、なぜインフラが大切なのかというと、人々がそのインフラを使うことで、物流が高まったり、効率が良くなったりして、結果的に経済効果があるからです。
ですから、インフラを作るだけでは駄目で、その後どうするかのビジョンがないといけない。それが長期プロジェクトになればあるほど、黒字化まで時間を要することになります。となると、そのインフラは当たり前ですけれども、少なくともプロジェクトが完了するまで、壊れないものでなくてはなりません。一度作って、次を作ろうとしたら、さっきのが崩れたなんてことがあれば、いつまで経っても完成させることはできません。
特に国家規模のインフラとなると、10年、20年とかかるのがザラですから、それに耐えられるものを造れないと、期待している経済効果は薄いものとなってしまいます。つまり、金だけ出せばいいというものではないということですね。
そうした観点からみると、中国が主導するAIIBはどうなのか。
もう皆さんご存知のとおり、AIIBは中国は過半近い資金を出すことで、絶大な発言力を持ち、融資案件の多くを中国企業に請け負わせると見られています。まぁ、50%だか70%だか、どれくらい取るのか知りませんけれども、度々オカラ工事が問題となる中国が、他国のインフラだけビシッと作れるのかどうか。
最低限でもそれを可能とする技術を持った企業群が必要になる筈ですね。そういう懸念もある。
どうも、主要マスコミが流すAIIBの論調は、「アジアのインフラ需要は強い」だとか、「アジアの成長に乗り遅れるな」といった、融資の話ばっかりで、回収の話が少ないように感じますね。投資にはリスクが付き物ですし、どんなものでもノーリスクは有り得ない。AIIBを推すのは結構ですけれども、その辺りの話もしないと片手落ちですね。
そんなAIIBを尻目にADBは改革案を打ち出しました。
政府筋が明らかにしたところによると、現地事務所への権限移譲と上限額の拡大(1000万ドル→4000万ドル)に、調達手続きの迅速化、および融資の準備作業を案件の承認前実施とその事前評価等の手続き迅速化を行い、従来21ヶ月程度掛かっていた融資手続きを2016年には15ヶ月と半年短縮するもののようです。
ADBはこれが実現すると年間融資量は約4割増加するとしています。
これはもう、明らかにAIIBを意識した改革ですね。以前「いつまでも発車しないAIIBバス」のエントリーで、宅配便とゆうパックの例を出して、日本はAIIBをダシにしてADBを改革してしまえばいい、と述べましたけれども、競争に乗り出した。まぁ、もっとはっきりいえば、AIIBを潰しにきたということです。
AIIBからの融資に期待していた中進国が、このADBの改革でどれだけぐらっとくるかは分かりませんけれども、それでADBに流れるようであれば、AIIBも大したことはない。元々その程度のものだったということですね。
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