米中対立と日露接近

 
今日はこの話題を極簡単に…
 
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5月16日、中国を訪問したアメリカのケリー国務長官は、北京で王毅外相と会談しました。会談後の共同記者会見で、ケリー長官は南シナ海スプラトリー諸島での中国による埋め立て拡大について、「南シナ海の埋め立ての速度と範囲に懸念を表明した」と述べ、緊張緩和に向けた行動を取るよう中国に促したのですけれども、中国の王外相は「中国の主権、領土保全の維持に向けた決意は揺るぎない。…直接の当事国との協議を通じた解決を目指している」と、これを拒絶しました。

中国の「当事国との協議を通じた解決」などど、アメリカの介入を拒否するあたり、とうとう外交面でもA2AD(接近阻止・領域拒否)を表に出してきたということですね。

今回の米中外相会談では、アメリカはそれなりの構えというか、圧力をチラつかせた上で望んでいるんですね。

5月10日、アメリカは、空母「カール・ビンソン」を南シナ海に派遣して、マレーシア軍と合同訓練を行っていますし、更に、会談前の一週間は、沿岸海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)「フォートワース」を南シナ海のスプラトリー諸島周辺を偵察させ、その後補給のためにフィリピンに入港させています。

偵察という言葉だけだと、余りインパクトはないように聞こえますけれども、WSJによると、アメリカのカーター国防長官は、中国が埋め立てしている人工島から12海里(約22キロ)以内での艦船の航行や哨戒機の飛行を検討するように指示したとされています。

12海里いえば、国際法上、領海・領空ということになりますから、本当にこれをやったのなら、アメリカはスプラトリー諸島を中国領土とは認めないというメッセージを発したことになりますね。

以前「我レ、中国防空識別圏ヲ認メズ」で、取り上げたことがありますけれども、中国が東シナ海に勝手に防空識別圏を設定したとき、アメリカ国防総省は、すぐさまB52戦略爆撃機をその防空識別圏内で飛行させたことがありました。それと同じですね。

B52が防空識別圏を飛んだ当時は、中国空軍からの邪魔などは特になかったのですけれども、今回は、中国のミサイルフリゲート艦「塩城」が追尾しています。その意味では、前回よりも強気に出ているといえるかもしれません。

こうした背景があった上での今回の米中外相会談で、平行線を辿ったということは、米中対立・冷戦への道筋がちらりと見えてきたということです。

今後、アメリカがどういう動きに出てくるかというのは勿論ですけれども、中国に備えるという意味では、増々日本の存在意義というか価値が高まることは間違いないでしょうね。

先日の安倍総理の訪米は大成功に終わりましたけれども、安倍総理は日米首脳会談で、ロシアのプーチン大統領の年内訪日を進めると伝えたと報じられています。

会談の中で安倍総理は、「日本には近隣である中国、ロシアとの関係も重要だ。…中露両国が協力し、日米などと対立する姿勢が不必要に強くなれば、東アジアは不安定化することになる。…プーチンとの対話は継続する。…プーチン大統領の年内来日を実現したい」と述べたそうです。

これに対して、オバマ大統領は「慎重な対応をしてほしい」と答えたようですけれども、アメリカにとっての日本の重要性が高まっている今を狙ってすかさず、プーチン大統領の訪日をねじ込んでくるあたり、ちゃんと外交しているな、と思いますね。

実際、ここのところロシアはSu-35や天然ガスの中国への供給契約締結。更には、中国の対潜戦能力向上のため技術供与など、中国に接近する姿勢を見せています。

ソチでの日露首脳会談とプーチン大統領の思惑」や「プーチン大統領のゼロマイナスとゼロプラス」でも述べましたけれども、筆者は、プーチン大統領は非常にしたたかで駆け引き上手な政治家だと思います。その意味では、今の中露接近とて、プーチン大統領の日本に対する「なんとかしてくれよ」という助けを求めるメッセージなのではないかとも思ってしまうのですけれども、安倍総理はプーチン大統領との関係を継続することで、その可能性を残そうとしているようにも見えますね。

まぁ、分断して各個撃破するのは兵法の常道ですから、中露を接近させ過ぎないようにするというのは理に適っています。アメリカとの関係をキープしつつ、中露に楔をいれて、ロシアを日本に引き込んでいく。

ロシアは、今年の安倍総理の地球儀外交のひとつの鍵になるような気がしますね。

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    本日は都構想に対する住民投票が主要な興味だと思う.

    戦う心構えがあるなら, 米中対決は実は何ほどのこともない.
    ロシアもインドも支那が嫌いなのであるから,
    米中対決は米露印日と中(南朝鮮)の対決になる.
    北朝鮮は米露印日に付くだろうと言う見方もある.
    問題は, 国益よりリベラリズム, 実態より理念のバマ大統領である.
    実態を深く研究することもなく, 自分の予断と理念だけで動けば,
    容易に工作に乗せられることになる. ブッシュ前大統領には
    その傾向があったと聞くが, 他方で現実的歴史認識を持っていたのに対し,
    オバマ大統領は予断と理念で動き, 歴史認識も怪しい.
    オバマケアや, リビアの米国大使館事件, アラブの春の顛末が物語る.

    レーガン大統領であれば, 12海里以内に直ちに艦船を派遣しただろうし,
    攻撃のようなものが加えられれば直ちに支那が持つ米国債の
    無効化プロセスに進むだろう.
    支那はヤクザであるから, 大国の傑然たる行動には逆らわない.

    日本が大東亜戦争に引き込まれた理由は
    日本が傑然たる行動に出なかったことであることは
    共通の認識になっていると思う.

    しかし, 習政権が続くなら, いずれにせよ戦争は避けられまい.
    第一回東京オリンピックに合わせて核実験を行なった国である,
    第二回東京オリンピックで騒動を起こす可能性は高い.
    自衛隊増強は是非とも必要である.

    さて, 都構想住民投票.
    三橋氏はナチス党になぞらえたが, 正にその通りだ.
    もっとも, 経済を良くした点ではヒトラーの方が橋下氏より
    ましだとは思うしが, 日本を敗戦に追い込む点では変わらない.
    つまり, 都構想が可決されるなら, 日本は暫く半身付随になり,
    支那への対策が遅れ, そして多くの日本人の安全が失われる
    ことになる.
    2015年05月17日 13:04

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