世界観を失ったアメリカ

 
今日は、昨日のエントリーの続きを極々簡単に…

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5月17日、北京を訪れているアメリカのケリー国務長官は、中国の習近平国家主席と会談しました。

ケリー国務長官は、南シナ海の埋め立て問題を問い質そうとしたようなのだけれど、習近平主席は、「中国とアメリカの関係は全体として安定を保っている。…今年9月の私のアメリカ訪問で、オバマ大統領と共に両国関係をさらに発展させ、新しい形の大国同士の関係構築を進めることを楽しみにしている。…広大な太平洋には中国とアメリカという2つの大国を受け入れる十分な空間がある」と答えました。

ケリー長官が、"力による現状変更"に対する懸念を伝えたのに対して、習主席は"太平洋を中国とアメリカで二分する新しい大国関係を築こうじゃないか"と答えたわけで、まぁ、要するに、アメリカに"中国の力による現状変更"を受け入れろ、と鼻であしらったということですね。

南シナ海の軍事拡張といい、AIIBといい、アメリカの世界覇権に対して、中国は明確に挑戦をしているのですけれども、それに対して、オバマ政権が断固とした対応が取れるのかというと、これまでのオバマ大統領の対応を見る限り、やはり怪しいですね。

そもそも、オバマ大統領はブッシュ前大統領が始めたアフガンとイラクでの「2つの戦争」を終わらせるという公約を掲げて大統領に当選しました。戦争を終わらせると宣言したのに、別の戦争をおっぱじめるのは、公約との整合性を疑われますよね。まぁ、もちろん、それを上回る大義名分があれば、公約と反対のことをやっても許容されることはあります。例えば、世界の秩序を守るため、とか自由と平和を守るためだ、といった名分ですね。

けれども、其の手の"大義名分"はブッシュ前大統領が使っていたものです。確かイラク戦争の作戦名は「イラクの自由作戦」だったかと思いますけれども、イラクに民主主義と経済自由主義を根付かせるという大義名分を掲げていました。

ですから、オバマ大統領がこの大義名分を掲げることは、終わらせる筈のブッシュ前大統領の戦争を自ら行うことになりますから難しいと思われます。それに加え、2013年9月には「アメリカは世界の警察官ではない」と発言してしまってます。この言葉をそのまま受け取ると「アメリカは、今の世界秩序を守る義務を持たない」ということになります。

つまり、オバマ政権は、世界秩序を自身の"武力"で維持するために使っていた"大義名分"を否定、または放棄している訳です。これはある意味、戦略の階層の最上位である"世界観"を失った姿でもあると思うのですね。

そこへ、中国が世界覇権の少なくとも半分を取りに鎌首をもたげてきた。それが今の世界情勢だと思うのです。

中国は明らかに"今の世界秩序"を壊そうとしています。

アメリカがそれを許容して、モンロー主義宜しく北米大陸に引き籠ってしまうのか。それとも、方針を大転換して、世界の警察官として振舞うのか。

レームダックが指摘されて久しいオバマ政権ですけれども、実は、アメリカそのものが自身の"世界観"を完全に無くしてしまったのかどうかを問われている局面でもあるのだと思いますね。

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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    米国はオバマ大統領がいる限りは頼れないのは
    東南アジアの共通認識となろう.
    となれば, TPPには一体何の意味があるのか?
    と思う国が続出するだろう. 特にオーストラリアあたり.
    これほど語る価値のない大統領も珍しい.

    それはさて置き, 橋下大阪都構想はひとまず潰れた.
    慶賀のいたりである.

    なぜ喜ばしいかと言えば, 危機的な程の全体主義が
    ひとまず押し返されたと言う点に尽きる.
    自民党内の目の醒めた議員団の動きによるものだと思うが,
    全体主義に何の疑問も抱かなかった維新の党の議員たちとは
    良い対称を為している. 維新の党の議員たちははっきり言って
    (藤井氏の言う)凡庸なものたちであることが明らかになった.
    入り込んだ民主党の残党と共に消え去るのみ.
    慶賀のいたりである.

    維新が潰れれば, 次は改憲の熱狂さも醒め
    理性的な議論にならざるを得ないだろう.
    まずは, 明治憲法下で違憲な現憲法を当用憲法とし,
    当用憲法は国を守る行為を縛るものではないと宣言すれば良い.

    後は, 天皇の国の臣民として目覚めた人たちが
    じっくりと考えていけば良かろう.
    2015年05月18日 13:03

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