境界の彼方 未来篇
今日はこの話題を簡単に…。
ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします。
4月29日、安倍総理はアメリカ連邦議会の上下両院合同会議で演説しました。連邦議会で日本の総理が演説するのは1954年吉田茂総理、1957年の岸信介総理、1961年の池田勇人総理に次いで4人目。更に、上下両院合同会議では今回の安倍総理が初めてとなりました。
演説の内容については、もう既に色んなところで講評されていますので、改めて言うこともないのですけれども、演説中に、安倍総理が、第二次大戦で硫黄島の戦いに参加したアメリカ海兵隊のスノーデン中将と、日本軍の硫黄島守備隊司令官で硫黄島で戦死した栗林大将の孫である新藤前総務大臣が傍聴席にいることを紹介し、二人が握手を交わすシーンを演出するなど、日米両国の「和解」と、同盟の更なる強化を謳ったものでした。
ロイターが「安倍氏の演説は、第2次大戦時の旧敵国で現在は最も緊密な同盟国である日米の和解を象徴しており、拍手とスタンディングオベーションで何度も中断された」と評しているように、安倍総理の演説について、「Aプラスの演説だった」とか「傑出した演説。第2次大戦がもたらした死と悲しみを認めたこと、女性に言及したことは適切だった」とか賛辞が相次ぎました。
中国寄りと言われているバイデン副大統領でさえ「最も気に入ったのは、首相がアジアの近隣諸国に共感を伝えたことだ。…中韓両国との関係で微妙なテーマだが、首相は日本の側に責任があることを明確にしたと思う」と評価しています。
まぁ、一部には"ナントカホンダ氏"のように、批判した議員もいたようですけれども、概ね好評だったとみていいものと思われます。
安倍総理はこの演説で、「戦後の日本は先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの思いは歴代首相とまったく変わらない」と、先の大戦に対する"痛烈な反省"を述べていますけれども、アメリカも先の首脳会談での成果文書の一つである「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」で、「広島及び長崎の被爆70年において,我々は,核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こす。広島と長崎は永遠に世界の記憶に刻み込まれるであろう。」と宣言しているんですね。アメリカもアメリカで、原爆投下について"反省の弁"を述べている。
筆者は、これら文書および安倍総理の演説を聞いて、日米両国が先の大戦を精算しようとしていると感じました。それはつまり、戦後レジームが漸く終わりを迎えるということですね。
戦後レジームが終わるということは、新しい別のレジーム、即ち、ニュー・ワールドオーダーを作っていくことを示唆することにもなるのですけれども、安倍総理は、今回の演説の中で、さり気なく、その仕込みというか、種をいくつか散りばめているように見えます。
例えば、アメリカの「リバランス」を支持し、日米同盟を基軸として、オーストラリア、インドと関係を深め、更にASEANの国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていく、即ち「セキュリティ・ダイヤモンド」構想を入れ、法の支配を原則として、日本も積極的にその役割を担うと宣言したことなどです。
アメリカ一強による"パックス・アメリカーナ"から、「セキュリティ・ダイヤモンド」型の多国間集団安全保障体制への転換を示しました。要するに、次のワールドオーダーはこれだ、と言っているのですね。
その意味では、今回の安倍総理の演説は、オールド・ワールドオーダーとニュー・ワールドオーダーの境界で行われたものであるともいえ、歴史的演説になる可能性があると思います。
更に付け加えるならば、日本が民主主義と出あったのは150年以上前、即ちペリー来航からであるとして、よく言われるところの「終戦によってアメリカから民主主義がもたらされた」という見解に釘を刺してみたり、戦後日本が韓国、台湾、ASEAN諸国、中国の成長を支えたとして、台湾を中国とは別の存在、よりはっきり言えば"国"として扱っていることなど、従来のワールドオーダーとは違う見解を表明しています。
特に、台湾については、中国がAIIB問題で日本に強く出れない状況にあることを見切った上での発言のようにも見えます。仮にそうだとしたら、安倍総理はここでも、もう一歩中国を押し込んだといえます。要するに、安倍総理は、中国が批判しにくい今の状況を最大限に生かして、国益のために、既成事実を積み上げているという訳です。
もしかしたら、安倍総理は70年談話でも、更に中国を押し込むことを考えているかもしれませんね。
先程、今回の安倍総理の演説はワールドオーダーの境界で行われたものと述べましたけれども、先の日米首脳会談後に出された共同ビジョン声明と考えあわせると、日米両国は共にニューワールドオーダー、"境界の彼方"に向かう意思を世界に示したとみていいように思われます。
これに対して、その"境界の彼方"を拒絶する国がいます。いわずとしれた中韓です。
今回の安倍総理演説に対して、中国外務省の洪磊副報道局長は「村山談話を含め、侵略の歴史を正視し反省する態度の表明を日本政府の指導者に対し一貫して促している」と批判し、韓国政府も「安倍首相は演説で『歴史をまっすぐに見つめ、反省することで国際社会と信頼関係を築ける』と明らかにしたが、行動は反対の方向に進んでおり、矛盾している。…正しい歴史認識を通じ、周辺国と和解できる機会であったにもかかわらず、そういう認識も、真の謝罪もなかったことは誠に遺憾だ」との報道官声明を発表しています。
このように、彼等は、相変わらず日本を許さない姿勢でいるのですけれども、これは、戦後、敗戦国となった日本を今もなおそのまま留め置きたいということですね。今のワールド・オーダーは、第2次大戦の戦勝国によって作られたものですから。要するに、彼等は今のワールド・オーダー、すなわち"オールド・ワールドオーダー"に生きていると言えます。
けれども、過去にしがみつく限り、彼等は、境界を越えてニューワールドオーダーにはいけません。なぜなら、第2次大戦を精算することが"境界の彼方"にいける条件だからです。
今年、中国は抗日戦勝70周年式典を行いますけれども、これなども、自身が"オールド・ワールドオーダー"の中にいるのだ、という宣言だとも言えます。中国は、世界各国にこの式典への参加を促していすけれども、要するに、中国は世界を"オールド・ワールドオーダー"に引き留めようと画策しているということですね。
その意味では、この中国の抗日戦勝70周年式典に、アメリカが参加するのかしないのか。それがアメリカが本当に日本とニューワールドオーダーに向かう気があるのかを図る試金石になると思いますね。
アメリカは今回の安倍総理の訪米を機に、"日本の謝罪を受け入れた"という形をとることで、先の大戦を精算し、"境界の彼方"へ向かうことにしたように見えます。つまり過去は過去であるけれども、それらを"許す"ことで精算する、ということですね。
果たして、中韓は、この"許す"ことによる精算が出来るのか。
特に、韓国は、大統領自ら「1000年恨む」と述べている程ですから、彼等が日本を"許す"ことは正直難しいのではないかと思われます。
であるならば、あとは、無理を重々承知の上で敢えていうのなら、"過去の記憶を無くしてしまう"ことくらいしかないでしょうね。過去がなければ、現在と未来しかありませんから。未来志向を取るより他ありません。
要するに、韓国は、過去に拘ってばかりいるよりは、いっその事、今から建国し直した方がいいのではないかということです。過去は変えられないですけれども、未来は変えられる。ならば、未来に向けて何かをした方が余程生産的ですよね。
けれども、彼等は、その変えられない筈の過去の歴史を自分に都合よく"コリエイト"しては自己満足に浸っている。そのように見えます。
まぁ、自国の中だけで"コリエイト"するなら、まだいいかもしれませんけれども、それを他国に押し付けてしまうから問題になり、反発されるのですね。或は、韓国起源説もそうかもしれませんけれども、他人様に認めて貰わなければ納得できないというのは本物ではありません。やはり劣等感の裏返しではないかと思いますね。
過去を掘り返しても劣等感を掻き立てるだけなのであれば、忘れてしまって、未来にむけて今何をするのかを考えたほうがいい。
過去なんて関係ない。今ここにいる。彼らが、境界の彼方、ニューワールドオーダーに行こうと望むなら、まず日本に「不愉快です」というのを止める。そこから始めたほうがいいのかもしれませんね。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
最近の日本を取り巻く国際情勢やメディアの問題を
議論している(らしい:未読なので)この本の Amazon における
状況が現在も続く日本の原論弾圧の状況を明らかにしている.
Amazon で発注しようとすると新書の発注ボタンが出なくて古書ばかり.
古書で選べると「新書同様」だそうだ. つまり, 出版・流通に
おいて力のある組織が新書を古書ルートにほおり込んでいる訳だ.
同様の現象は中川八洋の近衛文麿や山本五十六の悪行を
暴いた本についても見られた.
日米開戦に至る道筋の中で近衛文麿が決定的に重要な役割
を果たしていることは現在ではかなり明らかになっているし,
山本五十六の不作為責任についても最近はかなり認められているが,
それ等を一般書で告発した中川氏の功績は大きい.
しかし, 何回思い返しても近衛文麿の大罪は決定的である.
蒋介石が決定的に日本に離反し始め,
F.D.R(ルーズベルト)に対日開戦を決心させた
要の時期:1940-41年に対米開戦回避のための軍部の交渉を全て
潰したのが近衛文麿である.
この要の時期には陸軍も, 日英米の政府首脳も戦争拡大を
押しとどめるために様々な試みをしていた.
バチカンも日米諒解案作成にむけて大きな貢献をしていた.
話は飛んだが, 安倍外交によってこれほど左様に戦後の敗戦利得者の動揺が
大きくなっていると言うことなのだろう.
(安倍経済は全く評価できないが.)
ちび・むぎ・みみ・はな
Amazonで「二十一世紀の『脱亜論』」が面白いことになっている.