米中冷戦への序曲
今日はこの話題です。
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米中対立が激化してきましたね。
5月20日、アメリカ海軍の哨戒機P8Aが南シナ海のスプラトリー諸島で、中国が埋め立てを続ける岩礁周辺を飛行し、中国海軍から「中国の軍事警戒ゾーンに近づいている。今すぐ立ち去るように」という警告を8度に渡ってうける事件が起こりました。
P8A側は、その度に国際空域を飛行中であると応じ、最も低いところで1万5千フィート(約4572メートル)の高度を飛行したようです。
この米哨戒機の飛行について、中国外務省の洪磊報道官は、規則に従って中国軍がP8A哨戒機を追い払ったとし、「事故を起こしかねず、非常に無責任で危険な行為。地域の平和と安定を損ねる。…われわれは強い不満を表明する。国際法を順守し、挑発的な行動を控えるよう米国に求める」と反発していますけれども、勝手に埋め立てて、近づく者を武力で追い払うならそれはただの山賊か海賊の類と変わりありません。
今回のP8A哨戒機の飛行は、中国が埋め立てと大規模な建設活動を進めている3つの人工島の監視が目的で、アメリカ国防省によると、中国の領有権主張を米国が認めていないことをはっきりさせるために偵察飛行を実施したとしています。
アメリカのラッセル国務次官補は哨戒機の飛行は「全く適切」であり、アメリカ海軍と軍用機は国際水域と空域で活動する権利を今後も「完全に行使し続ける」と述べていますから、今のところ退く積りはないようです。
今回、アメリカはP8A哨戒機の飛行に際し、CNNの同行取材を許可し、CNNワシントン駐在の安全保障担当記者Jim Sciutto氏を同乗させていました。中国海軍の警告の場面も現場から中継され、Jim Sciutto記者は「中国が沿岸からはるか離れたところに軍事拠点をつくり、この海域での米国の優位性に挑もうとしている」と中継し、埋め立てた岩礁を「中国の不沈空母」と呼ぶ者もいる、と伝えたようです。
何でも、国防省が哨戒機から撮影した中国の建設作業現場の映像や、米軍機に対する警告音声を一般公開しましたけれども、これも初めてのことだそうです。つまり、中国の拡張主義(帝国主義)的行動を現在進行で行っていることをアメリカ国民に広報し始めたということですね。
そして、その狙いは何かというと、やはり、アメリカの対中冷戦の準備ではないかと思うんですね。
事実、ここの所、急にアメリカ政府高官の対中牽制が目立つようになってきています。
5月22日、CIAのマイケル・モレル前副長官はCNNの取材に対し「中国の南シナ海での埋め立て行為が、米国の盟友に緊張を与えている。このようなにらみ合いは、中国と米国の未来に『絶対的』な開戦リスクをもたらす。…中国の勢いが続けば、中国と米国は開戦に至るだろう。アメリカが譲るのか?彼らが進撃してくるのか?次期大統領が直面することになる重要な問題だ」と述べていますし、同じく22日、バイデン副大統領もメリーランド州アナポリスの海軍士官学校で行われた卒業式の演説で、中国が南シナ海で人工島を建設していることなどを挙げ、「公平で平和的な紛争の解決と航行の自由のために、米国はたじろぐことなく立ち上がる。…こうした原則が、南シナ海における中国の活動によって試されている。…米国が領有権の主張に特権を与えることはない」と警告を発しています。
このように、中国に対する警戒感と断固として対応すべし、という世論を作り始めにきたと見ます。
そして、更に、5月21日、上院の共和党マケイン軍事委員長や同じく軍事委員である民主党のリード議員ら超党派が、中国の南シナ海などでの挑発的行動が目に余るとして、2016年の環太平洋合同演習(リムパック)への招待を撤回するよう求める書簡をカーター国防長官に送ったことも注目に値するでしょうね。なぜなら、これはこれまでのアメリカの対中戦略の変化を示唆するものかもしれないからです。
書簡では、中国が「さまざまな手法の威圧」により東シナ海、南シナ海での管轄権を確立しようとしていると指摘した上で中国に「褒美を与えるのではなく、代償を払わせる選択肢」を検討するよう政府に求める内容なのですけれども、前回2014年のリムパックに中国海軍を招待したことを考えあわせると真逆の対応ですね。
2013年3月のエントリー「TPPとオフショアコントロール」で、筆者はアメリカの対中軍事戦略として、オフショアコントロールを取ろうとしているのではないかと述べたことがあります。
オフショア・コントロールは、対中国を意識した戦略で、アメリカの同盟国を守りつつ、中国のエネルギー・貿易ルートを締め付けることで、経済消耗戦に持ち込み、互いに行き詰まりの状態に持っていき、その結果、軍事衝突を回避するというものです。言葉を変えれば、「中国に"華を持たせて"やることで、戦争にまでエスカレーションさせない」という戦略です。
その具体的行動は、アメリカの軍事的優位を中国に見せつけつつ、中国を刺激しないというのが基本になるのですけれども、件のエントリーで筆者は、2014年のリムパックに中国海軍を招待したのは、この「アメリカの軍事的優位を中国に見せつける」一環であると述べました。
けれども、今回、マケイン軍事委員長がリムパックに呼ぶなとの書簡を政府に宛てたということは、もしかしたら、オフショアコントロールでは効果が得られないと見切った可能性も考えられますね。
まぁ、実際の中国の動きをみても、自制するどころか、ますます横暴になってきていますから、そう考えてもおかしくありません。
オフショアコントロールでは、"中国を刺激しない"という原則があり、中国の領海領空へは近づかないというのが基本になりますけれども、今回の場合は、領有権を争う島を勝手に埋め立てて、領海領空を持っているかのように振舞っていますね。
5月21日、国防総省のウォレン報道部長は、次の段階では中国の人工島の12海里以内に米軍機を進入させ、一帯は国際空域だと行動で示すことになると表明していますけれども、国際法では、海岸線から12海里以内は領海・領空と定められていますから、ここに侵入するということは、中国が勝手に設定した"領海・領空"は一切認めない、と意思表示をすることになります。
とても中国に"華を持たせる"どころではないですね。つまりはそういうことなのだと思います。
何やら米中冷戦の匂いが漂ってきたように感じますね。
この記事へのコメント
巳蛙
日中国交正常化後十年を経て猶内戦中だった鮒越国を平定懐柔し政権トップに就いた習近平体制は、
漢代以来の難民在外華僑の活躍地域領土化と権益確保に動いてる?