中華灯台と集団的国家安全保障

 
今日は極極々簡単に…

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5月26日、中国の交通運輸省が南シナ海スプラトリー諸島のクアテロン礁で灯台の起工式を行ったと発表しました。

建設する灯台は高さ50メートルで照明の光は40キロ沖まで届くようにするようで、中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「中国による灯台の建設は国際的な責任と義務を果たす重要な措置で、この海域を通る船舶の誘導に高い効果があり、南シナ海の航行の安全性が大いに向上する」と述べています。

まぁ、口ではいくらでも取り繕うことができると思っているかもしれませんけれども、やっていることを天下の往来での出来事に置き換えてみれば、一目瞭然ですね。

要するに、中国がやっていることは、公道の真ん中にテントか何かを張って、「ここは俺の別荘だ」と立ち入り禁止の看板を立てて、近づく者を追っ払っているようなものですね。そして、提灯をぶら下げたかと思えば「どうだ、お前たち、これで夜道も安心だろう」と嘯いている。やっていることをみれば何の事はない、ただの強盗ですね。

その強盗が、着々と既成事実を積み重ねようとしている。まぁそういうです。普通であればこんなことは許される筈もありません。

もう10年以上前になってしまいましたけれども、1999年春のNATO軍によるユーゴ空爆の際、「誤爆」によってベオグラードにある中国大使館が爆破される時間がありました。

当時アメリカは誤爆の原因を地図が古かったためだと、なんとも"怪しい"説明をしていましたけれども、アメリカが本気なのであれば、或は、この"中華灯台"も火を灯した途端、「攻撃されたと誤認した」とかナントカ"怪しい"説明をして誤爆したりするかもしれません。

まぁ、今のアメリカに当時程の威信と力があるかどうか少し怪しい気もしないでもありませんけれども、本質的にそういうところを持っている国だと思うんですね。

それでも、ここ最近のアメリカの動きをみると、大枠では中国の動きを許さない方向に進めているように見えます。

去年、アメリカは、これまで禁止してきた殺傷能力のある武器のベトナムへの禁輸措置を一部解除し、海上監視や原子力協定を含む米越の協力関係強化に合意するなど、関係改善・強化に努めていますし、キューバとも国交正常化交渉を始めるなど急速に関係改善をしています。

特にキューバについては、2012年に中国からの艦艇の派遣やカリブ海での合同演習、海難救助訓練など行うことで合意し、去年の夏、習近平主席がキューバを訪問。最新鋭ミサイル駆逐艦を常駐させる方向で準備を進めていたことなどから、危機感を覚えたアメリカがキューバとの関係改善に乗り出したという見方もあります。

自分の喉元に仮想敵国の軍艦が常駐するということは、「いつでも攻撃するぞ」と脅されてしまう立場になる、ということです。国家安全保障という観点からは、許容できるような話ではありません。

実際、昨年後半にキューバは、一旦、合意した中国海軍艦艇のキューバ常駐を撤回したようですから、アメリカは巻き返したということですね。

そして、返す刀で、今度は中国の喉元にあたるベトナムとの関係修復に乗り出す。先月にはフィリピンとの新たな軍事協定を22年振りに締結しています。また、日本の集団的自衛権行使容認を歓迎し、韓国にはTHAAD配備するよう強烈に圧力を掛けている。着々と布石を打っていますね。

更にいうならば、インドとの連携できればよいですし、ロシアも巻き込めるならばもっといいですね。まぁ、今の情勢では、ロシアは難しいでしょうけれども、そこは、インド、ロシアと関係が良好が日本がフォローできれば良いと思いますね。

おそらく安倍総理のその辺りも計算しているものと思われます。

ですから集団的自衛権ではないですけれども、周辺国との関係を強化することで、安全保障を図っていくという考えは常道であり、世界のスーパーパワーが無くなっていく流れの中では益々重要になってくると思いますね。

この記事へのコメント

  • ス内パー

    アメリカの大枠は評価しますがオフショアコントロール論を捨てないところは不味いなぁと危惧しています。
    あれ、本質的にはフィリピンや日本に戦争を丸投げしてアメリカは一人たりとも前線に出さないことが最終目的とオバマが認識してる節があります。
    中国及び東南アジア諸国、日本の共通認識としてアメリカが空爆に揚陸部隊に実際前線に立つならアメリカの一方的勝利、前に出ないなら中国の圧勝というパワーバランス(実際には中国を過大評価しすぎとは想いますが)と考えられてるのでこのままだと中国は矛を収めないのですよね。
    某“反日狂人”ウィルソン大統領&ハルノートのように戦争したくて仕方がないのなら話はかわるのでしょうが……
    2015年05月28日 06:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    話からすれば, この灯台はベトナムが壊す事に
    なるのではなかろうか.

    米国が直接に手を出せば国内に反政府運動を引き起こす.
    オバマ大統領としてはこれは何としても避けたい.

    これからのフィリピンやベトナムへの援助内容に注目.
    2015年05月28日 12:10
  • opera

    軍事の専門家に聞いてみたいのですが、中国が南シナ海スプラトリー諸島で建設中のいくつかの人工島は、軍事的にどの程度意味があるのでしょうか(想像では、爆弾一発で使いものにならなくなる気がするのですが)。これに比べて、国際的に被る悪評の影響は甚大で、中国がどう繕おうが、明らかな「侵略」の証拠にしかなりません。
     どう考えても、損得勘定が成り立たないのですが、中国の意図を考えると、一つは海を支配することの意味を理解していないこと(海の支配≒公海の自由の保障)の他に、10年程前に読んだラルフ・タウンゼント著 暗黒大陸 中国の真実を思い出します。
     この本で、中国人は自分の土地と他人の土地の区別が無く、他人の土地上の自分の物を置いて、少しずつ不動産侵奪を繰り返していくという習性が指摘されていますが、抗議した程度では状況は改善せず、結局は強制的に撤去するしかなくなると語られています(領事だったタウンゼントの仕事の一つ)。
     80年前のアメリカの一外交官の見聞が、現代の国際情勢の分析にそのまま当て嵌まるのは少々奇妙な気がしますが、中国の本質の理解には役立ちます。
    2015年05月28日 16:42

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