ASEANを味方につけて日本を護れ

 
今日はこの話題を極簡単に…

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4月28日、ASEANは、前日の27日に閉幕した首脳会議での議長声明を発表しました。

声明では、南シナ海での中国の埋め立てに触れ、「信頼を傷つけ、平和や安定を損ねかねない」と明確な形での批判をしています。(59. We share the serious concerns expressed by some Leaders on the land reclamation being undertaken in the South China Sea, which has eroded trust and confidence and may undermine peace, security and stability in the South China Sea.)

そして、海だけでなく、南シナ海上空についても、安全確保の重要性を再認識したと牽制しています。(61. We reaffirmed the importance of maintaining peace, stability, security and freedom of navigation in and over-flight over the South China Sea. )

なんでも、初期段階の声明案では、埋め立て問題への言及はなかったのですけれども、強硬姿勢を続ける中国に対し、フィリピンのアキノ大統領が首脳会議で「国際海洋法などへの抵触は明らかだ」などと発言し、ベトナムのズン首相も同調。更には議長国マレーシアも「工事の中止が望ましい」と懸念を表明したこともあり、より強い表現となったようです。要するに、それほど、中国の海洋進出(侵略)に危機感を感じているということですね。

これについて、フィリピン政府関係者は、「軍用機と大型船舶が利用できる軍事拠点とし、防空識別圏を設置して空と海の両面で実効支配を強める狙いだ」と述べていますけれども、南シナ海の海と空を抑えられてしまったら、日本もただではすみません。なぜなら、これまで何度も述べているように、南シナ海は、日本のシーレーンでもあるからです。

これについては、以前「海賊対策とシーレーン」などでも述べていますけれども、中国がシーレーンと東南アジアを支配下においてしまえば、日本を石油の面で締め上げることが可能になります。いくら国防力を充実させたところで、燃料がないと飛行機一つ飛ばせなくなってしまいます。要するに、日本の国防戦力を使わせることすらさせずに、日本を屈服させることが可能になります。

現在、日本の中東からの石油の依存度は80%を超え、年間消費量は208,918,000t(2013年)に及びます。これは1日辺りにすると、約57万tになり、25万t級大型タンカー2隻超に相当します。これが毎日日本に入ってこなければなりません。

ペルシャ湾から日本周辺までは約12,000kmで、石油タンカーの航海日数は、往復で約50日とされていますから、片道25日としても、毎日2隻だと、50隻以上の石油タンカーがシーレーンを通っている計算になります。ペルシャ湾から日本まで、50人が毎日バケツリレー、或はベルトコンベアーで、石油を運んでいるといえばイメージしやすいかもしれません。

よく兵法で、一列に伸びた敵軍に対して、その真ん中辺りを横から攻撃して前後を分断して、それぞれを各個撃破するという戦法を時代劇か何かで見ることもあるかと思いますけれども、シーレーンを通過して日本へ向かうタンカー群を"補給部隊"と見做すと、インド洋を過ぎてから南シナ海辺りまでは、丁度この"中軍"の位置にあたります。

しかもこの辺りはマラッカ海峡やバシー海峡など、まぁ、"伏兵"を置くにはもってこいの場所がありますね。ですから、この辺りを軍事的に抑えるということは、それはそのまま日本の息の根を止めることができるということを意味します。

そして、現在、この海域をASEANと中国で争っている。ですから、南シナ海の自由な航行と安全の確保は日本にとっても死活問題であるのですね。

逆に、中国からみれば、この海域を抑えることが非常に重要ということになるのですけれども、それは今やっているように、島を埋め立ててから基地を作るというように軍事占領するという方法の他に、海域を争っている国を取り込んで、半ば属国化し、いうことを聞かせるという方法もあります。例えば、経済的な見返りを与えるなどもそうですね。

実際、中国はAIIBを通して、ASEAN諸国のインフラ開発をすることで経済的便宜を図ろうとしています。つまり、埋め立てと、インフラ整備という「鞭とアメ」の両方を使って、ASEANの抗議の声を抑えつつ、南シナ海を抑えようとしている風に見えなくもないですね。

先日、自衛隊が米軍と協力して南シナ海の哨戒活動を行うことについて防衛省が検討を始めたと報道されていますけれども、日本やアメリカもASEANに積極的にコミットして、ASEAN諸国を中国に取られないように動き始めています。

つまり、ASEAN諸国を、日米と中国が互いに自分の陣営に取り込もうと争っているようにも見えるのですね。日本の安全保障を考えても、アメリカと協調してASEANを取り込むのは正解だと思われます。そのためには、軍事面だけでなく、経済面での便宜を図る必要があるでしょうね。

まぁ、既にTPPという枠組みがありますから、これを使うことが一つと、あとはAIIBに対抗する形での融資も考える必要があると思いますね。

5月2日、ADBの年次総会がアゼルASEバイジャンの首都バクーで行われ、ADBの中尾総裁が、ADBの融資能力を、現在の年間およそ130億ドルから、2017年に、最大で1.5倍の、およそ200億ドルに拡大することを発表していますけれども、ASEANを日米側に取り込む意味でも、正しい手を打っていると思います。

ともかくも、ASEANを味方にして、自陣営に取り込めるかどうか。これが近々の安全保障上の一つの課題になると思います。

この記事へのコメント

  • seravi

    パナマ運河の拡張工事が終了すれば、石油やシェールガスはパナマ運河経由で日本に来るので、アメリカ第七艦隊が日本のシーレーンを守ってくれます。
    2015年05月05日 07:15
  • 白なまず

    米国のシェールガスの会社は経営が行き詰っていますよね。原油価格が高くなれば復活すると思いますが、それでもシェールガス開発による環境破壊が問題になり足かせに、、、過去の支那支配を見ると北からの勢力が良いのではないかと思います。つまりモンゴルや旧ソビエト連邦の国々です。もちろんロシアも入るでしょうが、支那にロシア製の燃料を渡さない様にして、支那の脅威を感じている北の国々を日米が支援して、同時にモンゴルの油田を日本へ運び、無理ならモンゴルに支那を抑える拠点になる基地や工業地帯を作り、米軍、自衛隊を派遣してモンゴル軍を強化して、ウイグルを奪還させ、支那の西域を抑え、支那の東域(満州)と北朝鮮を占領して日本海へのルートを作り、日本海を日本が抑えて南シナ海へ出張る支那を牽制し、南シナ海は米軍、インド、豪州、台湾、ASEANと協力して支那へ対処するのが良いと思います。大東亜戦争では日本が欧米を相手に戦争して兵站が確保できず餓死しましたが、今回は昔の敵は今の友ですから、支那さえ抑えれば良いのだから、南北2方面での作戦でも可能だと思います。何でも全て日本がやるのではなくて、協力国を作り育てて守らせる。これで強固な同盟関係を築き同時にエネルギー安全保障も確保する、、、なんて都合よすぎますかね?
    2015年05月05日 09:37
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    何だか TPP が規定事実であるかのようだが,
    TPP について問題とされたことは基本的に
    そのままではないかと思う.

    燃料確保のためにTPPと言うのは腑に落ちない.
    何故なら, 燃料に関してはロシア或はメタンハイドレート,
    エネルギー源については原発と貯水式ダムの組合せもあるからだし,
    インドネシアやマレーシアにおける安全航行のために
    日本は長い年月をかけてレーダシステム等のインフラ整備に
    力を注いできているからだ.
    南支那海で騒動があって困るのは長期的には米国であり,
    長期的には日本とロシアにとって良いかも知れない.
    民生技術で遅れたロシアは(米国と違い)燃料を理由として
    日本の足元を見る立場にない.

    TPP については当初から安全保障のためのTPPという
    方向性が外務省関係から出ていた. この方向性は一旦は
    引き込められたかに見えたが, 中華人民共和国政府の
    強行姿勢に応じて再び当然のごとく持ち上がってきた.
    逆に言えば, TPP推進派はじっと機が塾すのを待っていたとも言える.

    ところで, ASEANを味方につけると言うことだが,
    ASEANはできた時から日本の味方であると思う.
    疑うのは日本が支那を見たり米国を見たりとふらふらしているからだろう.
    ASEANが今あるのは日本が国運をかけて戦い(そして敗け)た事実との
    引換である事は誰が見ても事実であるからだ.
    2015年05月05日 13:05

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