AIIBはどこの細道に通じるか
今日はこの話題を極簡単に…
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昨日のエントリーでは、中国がASEAN諸国を抱き込むための手立ての一つとしてAIIBを使う可能性があると述べましたけれども、その肝心のAIIBが出だしから難航しています。
5月5日に閉幕したADBの年次総会では、加盟国・地域の代表から、AIIBに関する発言が相次いだそうです。
例えば、ルクセンブルク代表は、「AIIBの誕生で国際援助体制は複雑になる。ADBとの役割分担と
緊密な協調が必要だ」と述べていますし、ポルトガル代表はAIIBを「ADBのライバルではなく、補完する潜在的パートナー」と強調しています。またフランス代表「長年の経験で有効性が証明された基準の引き下げにつながるような誘惑に一致して抵抗してこそ、新機関は素晴らしいものになる」と指摘しています。
このように欧州各国はADBはAIIBと役割分担して補完関係にしてくれと言っているのですね。それでいて、融資基準の引き下げをしないでくれ、といっています。
これは要するに、「ADBはAIIBに引きずられることなく、AIIBと無関係の組織でいて欲しい」ということです。
まぁ、ADBがAIIBに対抗して融資基準を下げると、その分、リスクの高い融資案件にも手をだすことになりますから、当然ながら不良債権化する可能性も高くなります。そのリスクは負いたくない。
また、一つの案件にADBとAIIBがそれぞれ融資するようなケースがあると、その案件が焦げ付いてしまったら、結果的にADBとAIIBは共倒れになってしまうことになります。
それを避けるためには、ADBの融資案件とAIIBのそれを全く競合しないように"役割分担"するか、融資基準を"実績のあるADBの基準"に合わせるしかありません。
ですから、"役割分担"だとか"緊密な協調"だとか、言葉は綺麗に聞こえるかもしれませんけれども、本音は、単に「AIIBに提供した資金を損失しないようリスクヘッジしたい」。まぁ、そんなところだと思いますね。
確かに、AIIBの発表を受けて、ADBも融資枠を1.5倍に拡大したり、審査機関を短縮するなどの改革案を打ち出していますから、彼等も融資基準の引き下げ合戦にならないかと不安を感じた可能性があります。
けれども、これは裏を返せば、AIIBの融資基準がADBよりも緩くなる前提があるということですね。
先月、北京で、AIIBの創設メンバー国による、初めての首席交渉官会合が行われ、資本金の国別の出資比率や融資基準などについて議論されましたけれども、出資比率について合意できなかったようです。
また、中国は、創設メンバー国に本部が置かれる予定の北京に理事を常駐させない意向を表明したそうですけれども、本来、業務を監督する役目の理事を常駐させないという時点で、相当怪しいですね。これはもう、好き勝手にやらせてもらうと言っているようなものです。
これでは、欧州各国が不安を覚えるのも無理はありませんね。
既に、AIIBは、日米が参加しない意向を示したことで、その格付けはADBより劣り、資金調達金利が割高になるだろうと言われています。つまり、融資するにしても、ADBより高い金利設定をしないと儲けが出ないわけで、資金の回収はより難しくなります。こんな"行きは良い良い、帰りは怖い"融資をしなければならない時点で、AIIBはADBと比較して、不利な立場に置かれていると言えます。
ですから、中国としては、なんとしてもAIIBをADBと同等の格付けにしようと画策してくる筈ですね。
先のADBの年次総会で、中国の楼継偉財政相はADBが融資枠を今の1.5倍に拡大することについて、「やはり保守的すぎる。できるだけ多くの資金を提供し地域の経済の成長を支えるべきだ」と批判し、AIIBについて「地域のインフラ需要が膨大な中で、今の国際的な開発金融機関と補完しあう存在であり、競合するものではない」と述べていますけれども、これなんかも、ADBの融資枠をうんと拡大させることで、結果的に融資基準を下げさせようと狙った発言ではないかと思います。
もしも、ADBの融資基準が、AIIB並みまでに下げさせることができれば、AIIBはADBと同じ基準で融資するのだから、格付けも同じであるべきだ、と主張できますからね。
今のところ、ADBの中尾総裁は、協調融資を行う場合はADBの厳しい融資基準で対応するとし、また、ADBの融資基準は堅持し、環境に配慮しない支援などは避ける考えを表明していますけれども、中国側の揺さぶりや牽制に臆することなく、この姿勢を堅持してほしいと思います。
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