南シナ海を中国に獲られたらどんな危機が訪れるか

 
今日は雑談エントリーです。

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先日、「ASEANを味方につけて日本を護れ」のエントリーで、今、日米と中国との間で、ASEANの取り合いをしているように見えるとし、シーレーン防衛の大事さについて述べたのですけれども、のコメント欄でseravi様から「パナマ運河の拡張工事が終了すれば、石油やシェールガスはパナマ運河経由で日本に来るので、アメリカ第七艦隊が日本のシーレーンを守ってくれます」との指摘をいただきました。

そこで、今日は、もし、南シナ海を中国に抑えられてしまったら、どうなるかについて、エネルギーの面から考えてみたいと思います。

まず、輸送コストについてです。

現在、ペルシャ湾からホルムズ海峡を出た中東の石油は、インド洋を通り、マラッカ海峡、バシー海峡を通過して日本に運ばれてきます。その距離12000km。

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けれども、これがパナマ運河経由だと、南アフリカの喜望峰、大西洋、パナマ運河、太平洋を通って日本となりますから、輸送コストはとんでもなく跳ね上がります。これは、日本での原油価格を直撃することになりますから、選択肢とするのは難しい。まぁ、何も喜望峰を回らなくても、スエズ運河経由で地中海を抜けて、大西洋または北極航路という手も考えられますけれども、大西洋を通過する限り、やっぱり距離は長くなります。また。北極航路も通過できるのは夏の間くらいですから、これも一年を通して安定した航路にはなり難い。要するに、現在のシーレーンを使わない航路だと、輸送コストが今よりもうんと高くなるということですね。

更に言えば、seravi様の指摘するように、運河を通過できるタンカーのサイズの制約があります。

現在、スエズ運河を通過できるタンカーの最大サイズ(スエズマックス)は約16万トンで、幅50m。パナマ運河の最大サイズ(パナマックス)は、約8万トンで幅32m。拡張工事完成後でも幅49mですから、スエズ運河レベルではないかと思われます。

いずれにせよ、現在の航路よりは輸送費が嵩むことには変わりありません。

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現在、原油タンカーは、16~32万トン級のVLCC(Very Large Crude Carrier)と、32万トン以上のULCC(Ultra Large Crude Carrier)が主に利用されています。

先程、スエズマックスや、パナマックスといった、運河を通過できるタンカーの制約があると述べましたけれども、実は同じことが、海峡の通過にも言えるのですね。

マラッカ海峡は、水深が非常に浅い箇所がいくつかあって、例えば、シンガポールのセントーサ島から8km南方のBatuBerhantiというところは水深22.5mしかありません。

ところが、32万トン級のULCCタンカーの喫水は満載で22.3mあり、事実上通過できないのですね。したがって、ULCCタンカーはマラッカ海峡は通過できず、南に迂回して、スンダ海峡やロンボク海峡を通っています。尤もVLCCクラスでも満載時の喫水は21mありますから、マラッカ海峡を通過できるとはいえ、危険が伴います。

こうした航路上の制約や原油の積出港と受入港の施設の問題もあって、現在はVLCCが主流となっています。

因みにマラッカ海峡経由とロンボク海峡経由それぞれの航路差は約1700kmあり、船足15ノット換算で日数にして3日、運搬費では1000万円以上の差になります。以前、筆者が地政学者の奥山真司さんの講演に参加したとき、たまたま隣に座った方が石油貿易会社の方で、「迂回航路は使ったりするのですか」と質問したところ、「そんなコストがかかる航路を選ぶなんてとんでもない、1円でも安く運ぶのが常識だ」と仰っていました。それを考えると、危険とコストを天秤にかけた上で、ギリギリの輸送をしている、というのが実情なのかもしれません。

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さて、これらを前置きにした上で、南シナ海が中国の手に落ち、"北京の海"となったらどうなるか。

一番簡単なのは、マラッカ海峡を封鎖することでしょうね。それだけで、石油の輸送コストが上がり、日本での石油価格が上昇しますから、日本経済にダメージを与えることができますね。

まぁ、これ見よがしに中国海軍が出張って、海峡封鎖なんかしたら、世界中から非難を浴びるでしょうから、本当にやるとすれば、もっとセコイ方法になると思います。例えば、夜陰に紛れて、マラッカ海峡の水深の浅いところに、大き目のテトラポッドを何十個か沈めてやるか、そこらから岩を集めて大量に流し込んで、水深20mを切るくらいまで浅くしてやればいい。それだけで、今海峡を通過しているVLCCも通れなくなりますね。

或は、便衣兵ならぬ"便衣海賊"を仕立てて、タンカーを襲撃させて、何隻か沈没させる。そうすれば、もう「この海峡は危険だ」となって通れなくなってしまいますね。

まぁ、中国は、サンゴ礁を勝手に埋め立てて、滑走路を作るような国ですから、これくらいは、平然とやってきてもおかしくありません。

そうなると、日本の石油会社は、マラッカ海峡通過を諦めて、スンダ海峡やロンボク海峡経由で石油を運んでくるしかありません。運搬コストは当然上がりますけれども、おそらく、このタイミングで、中国は工作を仕掛けてくる筈です。

それは何かというと、やはり日本の石油会社を取り込んで親中にしてしまうということです。例えば、「中国に便宜をはかるならば、マラッカ海峡を安全に通過させてやろう」ということで、共産党の幹部を送り込んでくる。その会社の船がマラッカ海峡を通過するときだけは、なぜか海賊に襲われない。或は、海賊が現れたとしても、すぐさま中国海軍の軍艦が現れて追っ払ってくれる、という具合にデモンストレーションをやって「中国が護ってくれる」というポーズを見せつけてくると思います。

まぁ、海賊が解放軍が変装した"便衣海賊"で、工作先の石油会社に共産党幹部が入り込んでいれば、マラッカ海峡を通過するどのタンカーが工作先の船かなんて丸わかりですから、もういくらでも"調整"できますよね。そうした「自作自演」をやることで工作先の会社に浸透して抱き込んでいく。

一方、中国の工作を受けて、マラッカ海峡を通過できる会社も、運搬コストが安く上がるわけですから、その分利益も出しやすくなる。これを何年か続けてやれば、工作した会社と工作してない会社とで相当な利益の差になって出てくる筈ですし、あわよくば、工作を受け付けなかった会社をそれで潰してしまえるかもしれない。そういうことで親中企業を日本に浸透させてくると思いますね。

今はすっかり左前となってしまった中国のレアアースですけれども、一時期の中国がなぜ97%という圧倒的世界シェアを持っていたかというと、ダンピングに次ぐダンピングで、ライバル企業を次々と潰していったからですね。つまり、中国はマラッカ海峡を封鎖することで、同じ様な事を日本の石油会社に対して仕掛けられるわけです。

そして、日本の石油会社が悉く親中企業となって、"半傀儡企業"となってしまえば、更に日本国内に工作することが可能になります。例えば、左巻きの反原発な方々に叫んで貰うだけでなく、石油会社として反原発なコメントをさせるとか、何となれば、工作先の企業がバックアップして、中国共産党の息が掛かった人物を国政選挙に立候補させたって良いわけです。

こうしてみると「蟻の一穴」ではないですけれども、南シナ海を中国に獲られるということは、中国の日本工作(侵略)が進むということであり、属国化への道にも繋がってしまうと思うのですね。

ですから、やはり、日本は今のシーレーンを護るべく、「法の支配」を全面に出して中国を牽制する。アメリカと協力してASEAN諸国をこちらの陣営に引き込む努力をする。そうしたことをやるべきだと思いますね。

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    支那が妨害したらどうなるか.

    野蛮人は何が野蛮なことかが分からないから野蛮人.
    支那人は野蛮人だと言うことになる.

    当然, 支那は国際社会から完全に締め出される.
    例えば, そんな野蛮な国の船舶の保険は引き受け
    られないだろうから自国船を用いた通商はできなくなる.
    米国の大統領が自国を含む共通の利害を損なったと
    宣言すれば支那の持つドルは零になり, 従って, 元も紙屑になる.

    分かっている支那人は沢山いるのだろうが,
    各々がバラバラに動いているから中華人民分裂症.
    2015年05月08日 12:39
  • seravi

    石油輸送のコストが上がれば、アメリカからシェールガスを買えばいいんです。
    2015年05月09日 15:44
  • エネルギー需要に占める原油の地位は急速に没落していますよ
    2017年01月10日 06:51

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