ここの所、色々と事件が重なって、全然エントリーが追いつかないですけれども、今日はこの話題です…
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1.綻び始めたAIIB
6月29日、AIIBの設立協定の署名式が北京で行われました。中国の楼継偉財政相は「AIIB構想はアジアの経済成長の促進、世界経済の回復という客観的なニーズに適している。…中国がアジアと世界の経済発展に国際的な責任を引き受ける重要な取り組みだ」と鼻息も荒かったのですけれども、当初57ヶ国だった創設メンバー国のうち、フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7ヶ国が土壇場になって署名を見送るという波乱の幕開けとなりました。
これらの国々の署名見送りについて、AIIB設立準備事務局は「年末の運営開始まで7ヶ国国の署名を待つ」とだけ述べ、その理由の説明はありませんでした。
まぁ、署名を目前にAIIBの組織体制が明らかになるにつれ、中国の独裁色が強いことに嫌気が刺したのかもしれませんけれども、7ヶ国のうち3ヶ国が東南アジア諸国であることを考えると、或は、中国の覇権主義への警戒感を覚えたのかもしれません。
報道では、フィリピンの署名見送りは南シナ海のスプラトリー諸島の岩礁を中国は埋め立てていることから慎重姿勢に転じたと報じられていますけれども、一部にはこれら7ヶ国の署名見送りは日米両国の働きかけによるものだとの噂もあるようです。
まぁ、フィリピンに関しては、先日、日本の海自とフィリピン海軍と合同軍事演習を行っていますし、アメリカ海軍とフィリピン海軍とでも行っています。このようにフィリピンは日米両国との関係を強化しているのですけれども、或は、その一環として、日本からフィリピンへの投資拡大といった話が水面下で進んでいてもおかしくありません。
ですから、日本の働きかけによってフィリピンが署名を見送ったという噂も有り得ない話ではないと思いますね。その意味では、今後これらの国々への日米からの投資或は融資が増えていくといった経済協力的な動きが活性化するのかどうかも注目したいところですね。
こうしてみると、まぁAIIBの進展具合にも拠りますけれども、南シナ海およびその周辺国に対する、"紐づけ"というか、日米と中国の主導権争いが益々活発化してくるように思います。
となると、やはりアジアにおける日本の重要性が増してくることになります。というのも、現在、G7の中でアジアから参加している国は日本だけだからです。
近年、世界はISISの台頭といった中東問題だけでなく、覇権主義を強める中国や、ギリシャ危機など、問題が山積しています。しかも、良かったのか悪かったのか、グローバル化がより進んでしまった結果、一国の問題が地域のみならず世界全体にまで波及するようになっているのですね。
それだけに、先進国同士で連携してこれら問題に対処することが大事なのですけれども、そうなると先進国の首脳が一堂に会するサミットがより大きな意味を持ってくることになります。
まぁ、近頃はG8或はG7はかつての力を失い、世界の舵取りをできなくなってきているという声もあるようですけれども、その"力を失った"先進国首脳が握っている手綱を離してしまったら、世界はもっと大混乱に陥ることは間違いないですね。世界に対する影響力では、以前としてG7、G8を超える存在はありませんからね。
2.サミットで存在感を増した安倍総理
先日、産経新聞が「エルマウサミットの舞台裏(上)」、「エルマウサミットの舞台裏(下)」という記事を2日に渡って掲載しているのですけれども、それによると、エルマウサミットで、安倍総理は中国問題で議論をリードしたそうです。
AIIBについても「AIIBは腐敗防止のガバナンスが不十分だと思っているから、日本は入らなかった」と説明した後、事務方の準備していた書類にはない話を始めたそうなんですね。次に引用します。
「中国はフィリピンが『いらない』と言うのに金を貸し付け、南シナ海でトラブルが起きると『すぐに全額返せ』と言ってきた」これを見る限り、ヨーロッパは中国のことを余りよく分かってないという印象を受けました。まぁ、日本人も、アフリカやウクライナの話をされても、あまりピンと来ないのと同じように、遠く離れた地球の裏側のことは良く分からないのが普通といえば普通なのかもしれませんね。
「ミャンマーで『難工事になるから無理だ』というのに、無理やりお金を貸し付けて山奥にダムを造らせて、結局途中で工事は中断してしまった」
その上でAIIBに関し「一件一件きちんと審査しないし、環境や人権に配慮しないのではないか」と問題提起した。
AIIBにすでに参加表明した一部首脳は「わが国は日和見だった」と釈明。議長国ドイツのメルケル首相は「G7でAIIBに入っていないのは日本と米国とカナダ。自分たちは入ってしまった」とこぼした。
ただ、安倍首相はここで矛を収め、「AIIBに入った国も事情があったと思う。中と外という立場はあるが、お互いAIIBのガバナンスをきちんとさせよう」と提案する。これで欧州の首脳らも面目を保ち、「なるほど」と同意した。
そして、この記事でもう一つ注目したいのは、G7での安倍総理の信頼度の高さです。安倍総理は、議長国ドイツのメルケル首相から「サミット冒頭に基調発言をしてほしい」と頼まれています。冒頭の基調発言は、その後の議論の基本方針となるものですから、信頼されていないととても出来るものではありませんよね。
そして、安倍総理への信頼はそれだけではありません。ワーキングディナー終盤では、メルケル首相がこう言って、安倍総理の発言を促しました。
「昼のセッションで『夜にシンゾーから中国と南シナ海の問題を聞こう』となっていた。シンゾーの言うことにみんな反対はないのだから、シンゾーの発言で締めくくろう」議長のここまで言わせるとは大したものですね。つまり、安倍総理はそれだけ他のG7首脳からの信頼を得ているということです。
先にも述べたように、ヨーロッパの首脳は中国の事は良く分かっていなかったことがAIIBで明らかになりました。となると、必然的にG7では「東アジアのことは、日本に聞けばいい」となるだろうと思いますね。既に、メルケル首相から「シンゾーから中国と南シナ海の問題を聞こう。…シンゾーの言うことにみんな反対はない」とまで言われているのです。これは、外交的にも相当大きなアドバンテージであることは間違いないですね。
中国は何かにつけて、「日本は70年前にうんたらかんたら…」と批判しますけれども、自分のやっている行為がそれで誤魔化せると思っていたとしたら、やはりそれは甘いと思いますね。
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