今日は遅ればせながら、この話題を極々簡単に…
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6月30日、新横浜-小田原間を走行中の東海道新幹線「のぞみ225号」の先頭車両で、男が焼身自殺を図り、男を含め2人死亡、26人が重軽傷を負う「列車火災事故」が起きました。亡くなられた方の御冥福をお祈りいたします。
この事件については、もう既に、色んな所で検証が行われていますので、今更改めて述べることはそれほどないのですけれども、筆者が感じたのは、林崎春生容疑者の動機やその背景を除けば、やはり新幹線の安全性の高さですね。
火災は先頭の1号車で発生したのですけれども、運転士が油まみれで火が付いた林崎容疑者を発見、消火活動を行い、1~3号車の乗客を4号車より後ろの車両に避難誘導したあと、車輛間に設置されている金属製の扉のうち3号車と4号車の間の扉を閉めるなど、マニュアル通りの処置を行い、深刻なパニックを起こすことなく、被害を最小限に留めています。
そして更に、凄いのは、可燃性の油を撒かれ火を点けられたにも関わらず新幹線の車両に燃え広がることなく、消火後、自走して車庫に戻っているのですね。つまり、新幹線は、とんでもなく高い難燃性(不燃性)と機密性を持った車両だったということです。
現在の日本の鉄道車両の火災対策は、昭和44年5月15日通達の鉄運第81号「電車の火災事故対策について」の中で規定された、電車の不燃化の基準が元になっています。この時、不燃化基準は、「A-A基準」、「A基準」、「B基準」の3区分とされたのですけれども、その後、昭和62年の国鉄民営化時に関係法律が変更され、最も厳しい「A-A基準」が「普通鉄道構造規則」、「特殊 鉄道構造規則」、「新幹線鉄道構造規則」などに取り込まれました。
そして、これらは平成13年12月に国交省令第151号「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」にて一本化され、車両の火災対策の規定されました。
その規定は、第8章第5節の第83条にあり、次のようになっています。
第五節 車両の火災対策等ただ、第83条では、車体について「予想される火災の発生及び延焼を防ぐことができる構造及び材質でなければならない」とだけ記載されているだけで、具体的にどのレベルまで不燃化対策しないといけないか書いてないのですけれども、その元になっている「A-A基準」をみると、車体構造については次のようになっています。
(車両の火災対策)
第八十三条 車両の電線は、混触、機器の発熱等による火災発生を防ぐことができるものでなければならない。
2 アーク又は熱を発生するおそれのある機器は、適切な保護措置が取られたものでなければならない。
3 旅客車の車体は、予想される火災の発生及び延焼を防ぐことができる構造及び材質でなければならない。
4 機関車(蒸気機関車を除く。)、旅客車及び乗務員が執務する車室を有する貨物車には、火災が発生した場合に初期消火ができる設備を設けなければならない。
全般このように、車両の天井、内張りじゃ不燃性、床は金属(不燃性)で、上の敷物は難燃性となっています。
1 構造、機能上やむをえないものを除き、不燃性の材料を使用すること。
2 不燃性以外の材料は、できるだけその使用量を少なくするとともに、つとめて難燃性(不燃性、極難燃性を含む。以下同じ。)のものとすること。
車体構造
・屋根
1 金属とし、袈空線式のものは、その上を難燃性の電気絶縁材料で覆うこと。
2 袈空線式のものの露出金具は、車体と電気的に絶縁するか又は難燃性の電気絶縁材料で覆うこと。
・外板、天井及び内張り
金属等不燃性のものとし、これに表面塗装をした場合も不燃性のものとすること。
・床
1 金属とし、上敷物は難燃性のもの、その下に詰物を用いる場合は、これを極難燃性(不燃性を含む。以下同じ。)のものとし、これら各部材料の厚さ、電線管及び空気菅の立上り部、雨水排出口等については、室内に火気が侵入しないよう留意すること。
2 床下面に表面塗装をしたものは、不燃性のものとすること。
・断熱材及び防音材
ガラス繊維、石綿等不燃性のものとすること。
・座席
表地、詰物包及び詰物は、難燃性のものとすること。
・日除け及び幌
難燃性のものとすること。
一般的に燃焼性は「可燃性(燃焼する)」、「難燃性(燃焼し難い)」、「不燃性(燃焼しない) 」の3種に分類されるのですけれども、可燃はまだイメージが湧くにしても、難燃と不燃の違いは何処にあるのか。
実は、これらは"燃焼する条件"によって、分けられています。
可燃性とは、物体が"継続的に燃焼する"性質のことを指しているのですけれども、それに対する"難燃"と"不燃"とは、要するに、そのままでは"継続的に燃焼しない"ことを意味します。
通常、モノが燃えるためには、酸素が必要になりますけれども、任意の物質に対して、どれだけの酸素濃度があれば、継続して燃えるのかを示すことで、対象物の燃えやすさを測る方法があります。この指数を「酸素指数」といいます。
酸素指数は、燃焼時間が180秒以上続くか、燃え移った炎の長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素濃度[O2/(O2+N2)×100]で表わされるのですけれども、この酸素指数が26以下を可燃性、26~95までを難燃性、95以上を不燃性と区分しています。
一般に空気中の酸素濃度はおおよそ21%とされていますから、要するに、難燃物や不燃物とは「普通の空気中で3分以上は燃えないもの」だということですね。
次の図は鉄道車両材料の燃焼性規格なのですけれども、その試験方法は、対象材料の傍にちょっと(0.5cc)のエチルアルコールに火をつけて放置し、燃え尽きるまでの間に、火がつくのか、煙はどうか、というのを見るだけで、大きなものが激しく燃えた場合というのは想定されていないのですね。つまり、元々のA-A基準では今回の焼身自殺のようなケースは想定外だということです。
2003年2月18日、韓国大邱地下鉄で、自殺志願者の男が車内で飲料用ペットボトルの中のガソリンを振り撒いて放火し、192人が死亡、148人が負傷する大惨事となる事件がありました。
放火された車両の内装は、ポリエステル製の座席カバー、ポリウレタンフォーム製のクッション、塩化ビニル製の床材や、FRP製の壁・天井材といった、いわゆる、難燃材を用いていたのですけれども、高熱で融解する性質があり、特に窓ガラスの支持等に使用されていたゴム材が溶けて部品が脱落、火炎が車両の編成全体に行き渡る結果となりました。
この事件を受けて、国土交通省においては、平成13年(2001年)に定めた「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」を変更し、大火源火災に対応させる為、鉄道車両の耐火性として「客室天井材の耐燃焼性及び耐溶融滴下性を確保するため、コーン型ヒータによる燃焼試験及び耐溶融滴下性の判定」を追加しています。
これらにより、事件以降に製造された車両には設計変更がなされ、より耐火性の強いものになっているのですけれども、もしも、韓国大邱地下鉄放火事件が起こらず、また、日本がそれに学ぶことがなかったとしたら、今回の新幹線での焼身自殺で、炎が延焼して大参事になっていたかもしれません。
その意味では、常に、安全を求め普段の努力を重ね続ける姿勢があったからこそ、今回の事件の被害を最小限で抑えることができたのだ、と言えるかもしれません。
今回の事件について、マスコミはやれ「新幹線の安全神話が崩壊した」とか批判しているようですけれども、安全は、今に生きる人達の努力によって支えられているのですね。ですから、新幹線の安全神話とは、どこか遠い昔に誰かが語られた物語などではなく、今この瞬間も紡ぎ出し続けている「現在進行形の神話」、「生ける伝説」とすべきだと思いますね。
ですから、新幹線を支える人々と良識ある乗客がいる限り、安全神話は健在であり続けると思いますね。
この記事へのコメント
禰蘊祚菟
安全神話も“捏造中”…中国新幹線、死亡事故「いまだなし」と報じるメディアの屁理屈
関連は?偶然?
白なまず
死んで終わりにしようと自殺しても、終わりでなければ永遠に課題をクリアするまでの無限地獄です。もし、終わりがあるのであれば、生にはどのような意味があるのか。地球の何らかを働きの一部として存在する人間に心が必要なのか?単なる機能ならば機械のような物でも良いはず。しかし、人間には心があり、これを病んでしまうと一生面倒くさい事を繰り返す。そしてその心を自分一人で新たにするのが命題であり、輪廻転生をも含めると自ら気が付き乗り越える命題で、その先に何かが有るようにも思える。
(トマスの福音書)イエスは言った「これらの言葉の解釈を発見した者は死を経験しないだろう」「神の国はあなたの中にある。外にも。自分自身を知れば分かるようになる。 自分が生ける父(=神)の子であることを理解するだろう。 しかし、もし己を知るつもりがないのなら、貧しい状態になる」
サミュエルジョンソン「満足の泉はその人の心に湧き出るものでなければならない。自分自身の人格以外のものを変えることで幸福を求める愚かな人は実を結ばない労力に人生を浪費し、避けようとしている悲しみを倍増させるに違いない」
ちび・むぎ・みみ・はな
わめき立てるが, 本当にテロをやろうとするものがいれば
完全に防ぐことは難しい. 重要なことは居合わせたもの達が
沈着に行動することで被害の拡大を防ぐことだろう.
従って, 本当に必要なことは何があっても信頼し合い協力し合える
心の強い国民を育てることだろう.
もっとも, 9.11の様に, 被害者の沈着な行動も被害拡大を防ぐ
大きな力にならないこともある. このためには, 日本の皇室が
中心となって世界の民族との文化的交流を進めて行くのが良い.
欧米のグローバリズムには夢々組するべからず. 貧困国からの
きついしっぺ返しをもらうことになろう.
しかし, にも関わらずに日本をテロ対象とする三つの国がある.
彼らに敗けないためには, 我々は日本の近代史をもっと良く
学ぶべきだろう. 例えば, 米国の最上級の知識人である
Hoover元大統領の著書"Freedom Betrayed"を読めば如何に
日本がはめられ続けてきたかが良く分かる. 現代日本の
本当の敵が分かれば徒にテロに恐怖を感ずることもない.
目の前の安全性をワメキ立てるメディアは邪魔でしかない.