中国の挑発行動は安倍政権の支持率を削るか

 
一昨日、昨日のエントリーで色々コメントいただいたので、今日は、そのお返事も兼ねたエントリーとさせていただきます。
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戴いたコメントでは、「なぜ中国が日本を挑発することが安倍政権の支持率を下げることになるのか分からない」ということなのですけれども、これは、日本人の視点ではなくて、中国側からの視点で考えないと分かりにくいと思うんですね。

つまり、必ずしも日本人と同じ感覚で考えているとは限らない、ということです。

では、中国は一体、どういう理屈で考えているのか。

そのために、まず人民日報が安保法制についてどういう主張をしているか、少し見てみたいと思います。該当する記事で主だったものの題名とポイントとなる部分を、筆者なりに拾ってみると次の通りです。
日本の安保法案、危険な本質を日増しに露呈(6/2)
日本の少なからぬメディアや学者は、安保法案が可決されて自衛隊の活動範囲が際限なく拡大することを懸念している。

日本の安保政策は本当に平和のためなのか? (6/3)
日本が歴史修正主義を公然と推し進め、中韓など戦争被害国との摩擦をつくることは、なおさらに平和と安定にマイナスだ。もし日本が本当に平和を目標としているのなら、歴史を反省することと比べて、いわゆる「あらゆる事態に対応」することが決して根本的な平和実現の道ではないことを知っているはずだ。

安保法案審議、想定される3つのシナリオ (7/2)
a.与党による一方的な法案成立:安倍首相が夢見る集団的自衛権行使が可能となり、日本は軍拡と戦争準備の道を歩めるようになる
b.与野党が譲歩しての法案成立:誰にとっても理想的とは言えないこのシナリオだが、安全保障面での安倍首相の暴走に必要とあればブレーキがかけられるというメリットがある。
c.タイムオーバーで廃案:安保法案の衆議院での再議決ができなければ安保法案は廃案となり、安倍首相の安保をめぐる暴走は失敗する。「強行採決」でも安保法案を通すことはできるが、一旦「強行」とみなされれば、日本の世論や国民、国際世論に対して「安倍首相は独裁的で横暴だ」というマイナスのイメージを与えることとなる。そうなれば安保法案を成立させることはできても様々なきしみが生まれ、各種の圧力を受けて安倍首相が退陣に追い込まれる可能性さえある。

人々が期待しているのは第3のシナリオだろう。第2のシナリオは注意深く見守る必要がある。第1のシナリオの現実化は何としても避けなければならない
 
日本の新安保法は歴史の恥になる (7/16)
反対の声の高まりを安倍首相は真摯に受け止めず、反対に目的達成を強行している。…衆議院での連立与党の優勢を利用して法案を可決するのは両刃の剣だ。目的を達成すると同時に、強行的方法によって政権の支持率と信望は大きな打撃を受ける。…新安保法は世界のためではなく、米国のためだ。

安倍内閣が安保法案を強行採決、降りかかる無限の災い (7/17)
安保法案が成立した後、日本がかつて持っていた「暴虐」な一面が再び蘇ることになる。…集団的自衛権を行使し、気の向くままに軍事力を誇示できるようになった日本が、「国際社会の平和」に貢献するために集団的自衛権を行使するなどとは、信じがたい。

外交部、日本の新安保法案衆院通過について (7/17)
華報道官は「歴史的理由から、軍事・安全保障面の日本の動向をアジア近隣諸国と国際社会は強く注視し続けている。日本の衆議院が新安保法案を可決したのは、戦後かつてない行動であり、日本の軍事・安全保障政策に重大な変化を生じさせる恐れがある。…日本は専守防衛政策を放棄するのか?戦後長年堅持してきた平和発展路線を変えるのか?こうした疑問を呈する理由が人々にはある。…われわれは日本側に対して、歴史の教訓をしっかりと汲み取り、平和発展路線を堅持し、アジア近隣諸国の安全保障上の重大な懸念を尊重して、中国の主権と安全保障上の利益を損ない、地域の平和と安定を脅かすことをしないよう日本側に厳粛に促す」と指摘した

安倍氏が放言「釣魚島情勢は厳しい」 専門家「日本が一方的に厳しくした」 (7/24)
中国が釣魚島で常態化パトロールを行うのは、領土主権を守る正当な行動だ。中日間にはこの面で係争があり、中国側は早くから和平交渉による係争解決を呼びかけてきたが、日本は一貫して交渉に応じようとしない。従って、問題の一番の原因は日本側にある。第1に、自らもめ事を引き起こし、中国を挑発したこと。第2に、釣魚島紛争をめぐる交渉に応じないことだ。

戦後日本の転換点は? 多くの日本国民、国家の平和的発展に期待 (8/3)
安保法案の強行採決には、多くの日本国民から疑問・反対の声が寄せられている。…ますます多くの人々が集団的自衛権の行使容認や、現在参議院で議論されている安保法案に注目するようになり、「いま」こそが戦後社会の転換点とみる人が増えている点だ。こうした人たちは「戦後70年間、日本は戦争を再び発動することなく、戦争から遠ざかっていた。しかし、今の日本政府のやり方は、我々の社会と戦争を再び密接にするものだ」などの見方を示している。
このように毎週のように安保法制について取り上げています。相当気にしていることは間違いないですね。

中でも、一番中国の主張が分かり易く掛かれているのは、7月30日の次の記事だと思います。
「中国脅威論」は成り立たない (7/30)
安倍政権は最近新安保法の強行推進によって支持率が急落していることから、東中国海での中国によるガス田開発活動について騒ぎ立てて、人々に疑念を抱かせようとしている。安倍政権は「中国カード」を切って、新安保法案強行推進の道を開こうとしているのだ

中国は揺るぎなく平和的発展路線を歩み、防御的国防政策を遂行しており、アジア太平洋さらには世界の平和・安定維持の揺るぎないパワーだ。中国の国防建設は完全に国家の独立、主権、領土の一体性を守るためであり、主権国家としての正当な権利だ。

近年の中日間の歴史問題による摩擦は、1度として中国が引き起こしたものはない。まさに日本政府の不法な釣魚島「購入」によって中日間の争いは激化したのだ。

安倍政権が「中国の脅威」を騒ぎ立てるのにははかりがたい陰険な本心があり、日本が戦後体制を突破し、軍事的台頭を図ることこそが地域の平和にとって真の脅威であることがわかる。
何ともはや、あれほど、周辺国を圧迫しておきながら、「中国は脅威ではない。悪いのは日本だ」と、いけしゃあしゃあと言ってるんですね。まぁ、そういう国だということです。

これら一連の人民日報の安保法制に対する記事を、物凄くひらたくいうと、「安保法案は平和を乱すものだ。中国は脅威ではない。中国から問題を起こしたことはひとつもない。安倍は強行採決を繰り返し法案を成立させようとしている。安倍という独裁者は戦争をやりたがっているのだ。真の脅威は日本(安倍)である」とまぁ、こういう事だと思うんですね。つまり、「安倍総理は独裁者なのだ」というキャンペーンを打ちまくって、イメージダウンを狙う、というわけです。

実際、安保法案では、衆院で強行採決なんて何一つ行わなかったのに、野党やマスコミが「強行だ」、「違憲だ」と騒ぎ立てました。

これが「必然か、偶然か」とは敢えて言いませんけれども、中国と同じ批判をしている時点で、結果としてみれば野党は「中国の工作員と同じ働きをしている」ということですね。つまり、そういう批判を繰り返すことで、安倍総理が"独裁者"だという印象を植え付けようとしているわけです。マスコミも与党がどれだけ審議に時間を割いたかなど少しも報じませんでした。

これが実際どの程度の効果を及ぼしたかを正確に測ることは難しいですけれども、各種世論調査で安保法制について「審議が十分でない」という回答がそこそこあったところをみると、少なからず効果はあったのではないかと思われます。

そんな状況下で、もし、尖閣とか東シナ海での中国の挑発に乗って、調査船なり漁船を臨検あるいは拿捕なんかしたらどうなるか。

それこそ中国は、待ってましたとばかりに、「安倍は戦争をしたくて堪らないのだ。安保法制をいう皮を被った"戦争法案"を成立させてしまったら、安倍の好き放題になって、誰も止めることができなくなる。政府の暴走は食い止めなければならない」と臨検や拿捕を「政府の暴走」として反対の大キャンペーンを張るでしょうね。

特に「政府の暴走を食い止めよ」なんてのは、如何にも日本の共産党あたりが好んで使いそうな言い回しですけれども、当然、国内の親中マスコミもそれに乗ってくると思われます。

つまり、中国は日本に挑発に乗って来てほしい訳です。そして挑発にのってきたら、それを利用して「安倍=独裁者」というイメージキャンペーンをして支持率を削りに掛かる。

中国は、自分で仕掛けた癖に、乗ってきたら日本を悪者にして全てを押し付けて口撃する可能性は極めて高い。その時、中国は、ほぼ間違いなく「全ての責任は日本政府にある」というでしょうね。

では、逆に、日本政府が「全ての責任は中国にある」というかというと、外交的配慮から、多分言わないと思うんですね。増してや国内の親中マスコミは絶対言わないでしょう。

とまぁ、ここまでが、中国側の理屈です。

そして次に、ここから、日本側の理屈になるのですけれども、では、この"中国の理屈"に、今の日本の世論が乗せられてしまうのかどうなのか。ここが一番肝心なところですね。

これについては、昨日のエントリーのコメント欄で、opera様が「中国が挑発(自衛?)行為を繰り返すのは、安倍政権が中国を必要以上に敵視する強硬な態度を取っているからであって、日本側が何もしなければ、中国側も敢えて問題となる行動はしないはずだという、伝統的な平和ボケに基づく事勿れ主義を、未だ多くの国民が抱いている場合であることです」と述べていますけれども、ここなんですよね。一昨日のエントリーで筆者が「中国が、日本の親中マスコミに手を回して『中国を挑発するからだ論』を騒がせ支持率を削りにくる」といったのはそういう意味です。

実際、日本の世論全体を見渡してみると、まだこれが結構残っているのではないかと思うんですね。まぁ、昨今はネットの発達と反比例するかのように、マスコミの影響力が相対的に落ちていますけれども、それでも、筆者は五分五分あるいは四分六分で、"伝統的な平和ボケに基づく事勿れ主義"の人達が残っていると見ています。opera様はいいとこ五分五分といってますね。まぁそんなところだと思います。勿論、違う意見があるであろうことは承知しています。

多分、中国は安倍総理でさえなければ、自民党政権でもよいと思っているのではないかと思います。「安倍以外ならいくらでも籠絡できる」とまぁ、ある意味、舐めて掛かっているのかもしれません。けれども、実際、安倍総理の他に、中国に対して、安倍総理以上にモノが言える政治家がいるか、といわれると、殆ど見当たらないですよね。

筆者は、第二次安倍政権の凄さは、アベノミクスとか、地球儀外交といった目に見える派手なものではなくて、水面下の"根回し力"にあるのではないかと思っています。安倍総理はこれまでの日本の総理では考えられない程、日本政府の考えや方針を世界に向けて発信していますけれども、それらは特亜以外の殆どの国に受け入れられています。今回の安保法案にしてもそうですね。

けれども、それは何もなしに、いきなり全開でブーストしたものではない筈です。海外に向けて何かをいうにしても、事前にちゃんと根回しして、了解を得てから進めているように見えるんですね。確か、安倍総理就任当初は、アメリカのオバマ大統領も冷たかったように記憶してますけれども、今ではあんなですからね。気が付けば安倍総理のペースになっている。

実際、僅か2年とそこらで「中国包囲網」を殆ど作ってしまいましたしね。中国にしてみれば実に"嫌な奴"に見えていると思いますね。

だからこそ、中国は安倍総理を引きずり降ろしにかかる。「安倍=独裁者」というイメージを作りにくる。もしも、日本の世論がその工作に乗ってしまうようなことがあれば、それ相応の代償を払わないといけなくなるような気がします。

ですから、ここはやはり、悠然かつ粛々を安保法案を通過させ、中国の工作を"静かに"空振りさせることが一番だと思いますね。

この記事へのコメント

  • 八目山人

    そのように考えると、パリに住んでいる朝日新聞のえらいさんが 安保法制と全く関係ないハーケンクロイツの旗を掲げてデモをする写真を出して 英語とフランス語で こいつらが安倍の支持者だとツイートした理由が見えてきますね。

    朝日の中には中国の意向に沿って動いている輩が相当いそう。戦前はスターリンの意向に沿っていた。
    2015年08月06日 06:52
  • よしぷー

    安全保障は日本人が目を背けてきた部分だから
    政府がそこに真剣に向き合わなきゃいけない状況に
    追い込まれると支持率が落ちるって算段なのか
    2015年08月06日 10:31
  • おじじ

    自分が高校生の頃、左翼系の社会科教師が中国へ教師間の交流で旅をしてきた話を聞いて、驚いたことがある。
    日本は、資本主義が横暴して公害が発生して、人民は苦しんでいる。
    その内に、人民は団結して社会主義革命を起こして、現状の政権を妥当するだろう。
    そんなことが教科書に書かれてあったと、この先公は淡々として話をしてくれました。
    もう、四半世紀も前のことですが、他人の国を貶めて、どれだけ嘘をつくんだろうって思った。
    以来、中国は信用していない。
    何が表向きの日中友好かって、良く分かった分けですが、未だにクソ優しい変態左翼が生きていること自体、激しく憤慨しておりやす。
    2015年08月06日 10:57
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    日々野庵殿の考え方は従来の知識人の考え方だと思う.
    しかし, 歴史的には役に立たない考え方でもあった.
    何が問題かというと, この説明は全く国内的であり,
    日本が我慢しても外交的に日本が取れるものがないことだ.
    世界の他の国ではこの様な考え方はしないと思う.
    なぜなら, 下手を打つと国が滅んでしまうからだ.
    我慢するのであれば必ず見返りを求める.
    そもそも, 見返りをくれる国・組織が無くとも良いというのを
    一人相撲という.

    だから二つの問題がある.
    一つは, 明らかに主権を損なう報道を平気で行なうメディアに
    正しく法律に基づいた要請を行ない得ない現状.
    一つは, 高度な政治判断であると自己満足してしまうこと.
    江戸時代以前の日本ならそれでも良かろうが,
    あっという間にミサイルが飛んできてしまう現代では
    明治維新以上の考え方の転換が必要である.

    支那という国は有効な反撃を受ければ引っ込む国である.
    歴史は正しく認識したいものだと思う.
    2015年08月06日 11:58
  • 白なまず

    日本人は情報シャワーでちょっと前のニュースを良く忘れます。マスゴミが使う武器ですが、これを何とかしないといけない。知らせない重要ニュース、伝えるミスリードでは対抗できないので、やっぱり、マスゴミに仕事をさせない工作や政府が大本営発表の様に重要ニュースを直接国民へ知らせるのが良いと思います。勿論、先の大戦での大本営の嘘ニュースはもってのほかですが、大本営発表に対してマスゴミが反発してネガティブ活動を開始すればマスゴミの嫌うポイントが明確になるので、あらゆるメディアを使いマスゴミの嘘を暴いていけばTV放送の信用がガタ落ちになり、思う壺です。最後には放送免許没収をちらつかせて支那スパイを炙りだせると思います。
    2015年08月06日 12:39
  • KKY

    中国は日本のマスメディア、特に新聞の報道傾向から日本の世論を読んでいると仮定すると、
    領海侵犯した中国船(尖閣にこだわらずどこでも)を拿捕した日本政府に強い態度を示せば、
    もしくは日本の民間船を公海上で拿捕したり攻撃したりすれば、
    日本人が動揺しアベ降ろしに走ると読んでいてもおかしくない(笑)
    2015年08月06日 13:19
  • 泣き虫ウンモ

    野党弱しと見れば、郵政解散のように解散に持ち込むし、安倍首相の体調弱しと見れば自民党内の権力闘争が激化することも考えられますかね。
    まぁ、参院での安保法制の結果しだいでしょうか。

    話は変わりますが、いちばん上記にあるコメントが自分が言いたかったことで、和製英語でエージェントと表現しますが旧ソ連は自国人のエージェントを雇うのではなく、日本国内の人間をエージェントにしたのです。

    何が言いたいのかというと、旧ソ連の手法を中国は使用してきた形跡があるので、歴史は繰り返すではないですが日本国内のエージェントを育成し各マスコミに送り込んでいるのではないかという見方があるほうが自然ですかね。

    個人的には、外国語が苦手なので証拠を取り揃えるのは難しいですが、是非得意な若者にね、挑戦してほしい分野ですかね。
    2015年08月06日 19:56

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