戦後70年談話に関する報告書がみせた現実認識

 
今日はこの話題です。

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8月6日、安倍総理の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」が「戦後70年談話」に関する報告書を総理に提出しました。

報告書を受け取った総理は「この報告書を基に、先の大戦から何を学び、どのような道のりを進んでいくべきかを世界に発信する談話を作成したい」と、14日に発表するとみられる安倍談話の参考にする旨を述べていますけれども、元々、安倍総理はこの懇談会の最初の会合で、5項目について議論するように述べているんですね。それは次の通りです。
1 20世紀の世界と日本の歩みをどう考えるか。私たちが20世紀の経験から汲むべき教訓は何か。
2 日本は、戦後70年間、20世紀の教訓をふまえて、どのような道を歩んできたのか。特に、戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献をどのように評価するか。
3 日本は、戦後70年、米国、豪州、欧州の国々と、また、特に中国、韓国をはじめとするアジアの国々等と、どのような和解の道を歩んできたか。
4 20世紀の教訓をふまえて、21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描くか。日本はどのような貢献をするべきか。
5 戦後70周年に当たって我が国が取るべき具体的施策はどのようなものか。
懇談会は計7回行われ、今回の報告書となったわけですけれども、目次をみれば明らかなように、これら5項目に沿って検討したことがはっきり分かる報告となっています。

報告書では、これら5項目について、次のように報告しています。
1)20世紀の世界と日本の歩みをどう考えるか。私たちが20世紀の経験から汲むべき教訓は何か。

20世紀後半、日本は、先の大戦への痛切な反省に基づき、20世紀前半、特に1930年代から40年代前半の姿とは全く異なる国に生まれ変わった。平和、法の支配、自由民主主義、人権尊重、自由貿易体制、民族自決、途上国の経済発展への支援などは、戦後の日本を特徴づけるものであり、それは戦後世界が戦前の悲劇から学んだものをもっともよく体現していると言ってよいのではないだろうか


2)日本は、戦後70年間、20世紀の教訓をふまえて、どのような道を歩んできたのか。特に、戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献をどのように評価するか。

戦後70年の日本の平和主義・国際貢献路線は、国際社会及び日本国民双方から高い評価を受けている。…戦後の日本の自由主義的民主制の確立や、日本の国際社会復帰 に米国が果たした役割は大きかったが、明治以来の民主主義の発展や、民主主義 国家として、国際平和、民主主義、自由貿易を基調とする国際秩序形成に積極的 に関与してきたことが、戦後日本と通底していることを忘れるべきではない。


3)日本は、戦後70年、米国、豪州、欧州の国々と、また、特に中国、韓国をはじめとするアジアの国々等と、どのような和解の道を歩んできたか。

日本と米国、豪州、欧州は戦後70年をかけて国民レベルでも支持される和解を達成したと評価できる。中国、韓国との和解は完全に達成されたとはいえない。


4)20世紀の教訓をふまえて、21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描くか。日本はどのような貢献をするべきか。

21世紀の世界と日本の平和と安定のためには20世紀後半の国際的共存システムを維持することが非常に重要である。その一方、21世紀の世界における 新たな潮流を前に、これからの日本には従来とは違う役割が求められてくる。米 国の力が圧倒的でなくなり、国際秩序における不安定要因が多様化する中、日本 はこれまで以上に積極的に国際秩序の安定に寄与する必要がある。


5)戦後70周年に当たって我が国が取るべき具体的施策はどのようなものか。

「歴史に関する理解を深める」「国際秩序を支える」「平和と発展に貢献する」「国を開く」
と、このような内容なのですけれども、細かい表現は兎も角として、安倍談話の大筋はこれらを踏まえてのものになると思われます。報告書の流れは先の大戦の教訓と諸外国との和解、そして今後の国際貢献、ですからそれなりにバランスが取れていると思いますね。

この報告書が公開されるや、やはりというか様式美というか、韓国が植民地化に触れていないとして反発しています。

韓国メディアは「日本政府が朝鮮の植民地化は合法だったとの認識を盛り込んだ可能性がある。もしくは、報告書を作成した専門家らが、慰安婦問題や強制徴用問題など未解決の懸案がある中で朝鮮の植民地化を認めれば、日韓間の協議や裁判などで日本側が不利になると判断したのではないか」と指摘しているようです。

もしかしたら、韓国メディアは、報告書のその部分だけを強調しただけなのかもしれませんけれども、報告書全体の何分の一かの部分を取り上げて批判しても、各論批判にしかならないというか、どうも彼らは、自分の側からの視点に囚われ過ぎているように見えなくもありません。

まぁ、自国の視点から批判をするのはある意味当然のことなのかもしれませんけれども、それに囚われる余り、他国の視点を忘れると相互の和解は遠のくばかりです。

報告書では、和解について次のように述べています。
戦争を戦った国々においては、終戦後二つの選択肢が存在する。一つは、過去 について相手を批判し続け憎悪し続ける道。そしてもう一つは、和解し将来における協力を重視する道である。日本と米国、豪州、欧州は、後者の道を選択した。

…日本との関係で一つ目の道を選択し、和解の道を歩まなかった国々との違いはどこにあるのか。その解は、加害者、被害者双方が忍耐を持って未来志向の関係を築こうと努力することにある。加害者が、真摯な態度で被害者に償うことは大前提であるが、被害者の側もこの加害者の気持ちを寛容な心を持って受け止めることが重要である。
と、このように、和解に双方の国の努力が必要だとし、アメリカ、オーストラリア、欧州とはそうした努力を行い、和解に至ったと結論づけています。

これは、同時に、和解が十分ではないとした中韓については、その努力が足りていないということを意味するのですけれども、報告書では特に韓国について次のように述べています。
未だ成し遂げられていない韓国との和解を実現するために我々は何をしなければいけないかという問いへの答えは、韓国が持つ理性と心情両方の側面に日本が働きかけることであると言える。

理性への働きかけにおいては、日本と韓国にとって、なぜ良好な日韓関係が必要であるかを再確認する必要がある。…このためには、自由、民主主義、 市場経済といった価値観を共有する隣国という側面だけではなく、二国間の経 済関係やアジア地域における安全保障分野における日韓協力がいかに地域そして世界の繁栄と安定に重要かといった具体的事例を持って、お互いの重要性につき韓国との対話を重ねていく必要がある。

…心情への働きかけについては、日本は、特に1990年代において河野談話、 村山談話やアジア女性基金等を通じて努力してきたことは事実である。…にもかかわらず、その後も、韓国 政府が歴史認識問題において「ゴールポスト」を動かしてきた経緯にかんがみれば、永続する和解を成し遂げるための手段について、韓国政府も一緒になって考えてもらう必要がある。二国間で真の和解のために韓国の国民感情にいかに対応するかということを日韓両国がともに検討し、一緒になって和解の方策を考え、責任を共有することが必要である。
このように、理と情それぞれにアプローチすべきだとしているのですけれども、韓国側が歴史認識で「ゴールポスト」を動かしてきたと指摘した上で、韓国政府にも和解のための方策について責任を共有し、一緒に考えて貰う必要がある、と述べているんですね。

これは要するに、"対等の立場"で、和解に向けた努力をしようということなのですけれども、一昔と比べれば、随分と変わったものです。はっきりと甘やかすのを止めたということですね。

まぁ、あれだけ色々とやらかしたことを考えると、こうなるのも当然だと思いますし、世論もこれ以上甘やかすのを許さないでしょう。

報告書でも触れられていますけれども、ここ最近になって、韓国は日本にすり寄る姿勢をちらちら見せていますけれども、世界遺産の一件がありますから、また騙すのではないか、どうせまた「ゴールポスト」を動かすに決まっている、という具合に警戒していると思います。

韓国は、日本に対して自国の「歴史認識」を押しつけ、永遠の謝罪を求めていますけれども、それは最早、日本は韓国を特別扱いすることは止めたという「現実認識」を確認することにしかならなくなってきたと思いますね。

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