枯れた技術で枯れないもの

 
今日は軽い話題です…。

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最近、音楽用カセットテープの人気が高まっているそうです。

もちろん、アナログな温かみのある音が欲しいというのもその理由の一つなのですけれども、それ以外に、記憶媒体としての価値が見直されているようです。

馬場章・東京大学院情報学環教授教授は、「磁気テープは実用化して50年以上、記録の原理は変わっておらず、枯れた技術といえます。…複数の方法でデータ保存するのが理想ですが、コストを考えると磁気テープは有力手段の一つと評価されているのです」と述べていますけれども、HDDのようにコンピューターウイルスにさらされる恐れもなく、記録媒体として優れているというのがその理由です。

そうした背景から、ここ数年は、カセットテープの売り上げが伸びています。全米で最後のカセットテープメーカーに「ナショナル・オーディオ・カンパニー(National Audio Company)」というのがあるのですけれども、このメーカは、カセットテープ人気の復活に乗って、創業以来最高の売り上げを上げているそうです。

音楽用カセットテープは、CDに取って代わられ、多くのカセットテープメーカーが生産を中止していったのですけれども、それでも粘って生産を続けてきたメーカーに陽が当たるようになったというわけです。

枯れた技術からといって馬鹿にできないですね。

"枯れた技術"は、枯れているが故に、最先端の分野にも使われることがあります。例えば軍事分野がそうです。

アメリカのジョン・リーマン海軍長官が、昔「まさか、中国もF-22が1983年に作られたビンテージのIBMソフトで動いているとは考えないだろう(No one in China knows how to program the '83 vintage IBM software that runs them.)」とのコメントを残していたことが、最近話題になったそうなのですけれども、或は、近年サイバー攻撃が問題視されているが故に注目を集めたのかもしれません。

最近は、パソコンのOSでよく脆弱性(セキュリティホール)という言葉を良く聞くことがありますけれども、脆弱性とは通常「プログラムに存在するセキュリティ上の欠陥や不備、プログラムをつくった開発者が予期しない動作や結果をもたらすもの」と定義されています。

要するに、ソフト上の弱点ですね。これは、プログラム開発段階での設計、製作上のミスが原因で発生するのですけれども、この弱点を狙って、ウイルスなどの攻撃をされたりすることがあるわけです。

普通、パソコンがウイルスに感染すると、誤動作あるいは、ネットに繋がる他のパソコンへの感染の危険を回避するため、ネット回線から切り離して、ウイルスチェッカーを掛けたり、場合によっては、OSの再インストールしたりします。

けれども、軍事兵器には、ウイルスチェッカーや再インストールなんてやる余裕がない場合だってあります。作戦行動中にウイルス感染して、システムがハングアップしたら、話になりませんからね。

ですから、軍事兵器には、通常とは格段に高い信頼性が要求されるわけです。脆弱性など以ての外ですね。

軍事兵器というと、科学技術の最先端というイメージが強いと思われがちですけれども、その中枢に意図的に"枯れた技術"を使うことで、信頼性を確保するという考え方は意外と大事なのかもしれません。

技術は枯れても、信頼性も一緒に枯れるとは限らないということです。

まぁ、民間は効率重視で技術革新を進めていってもよいかもしれませんけれども、国家レベルでは、古くなったからといって、"枯れた技術"を全て捨ててしまうことのリスクを考慮したほうがいいかもしれません。

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この記事へのコメント

  • ななしさん

    核とローテクと特殊部隊を組み合わせた朝鮮人民軍が最強というのも、あながちウソでは無いのかも。。。
    レーダーに映りにくい木製プロペラ機に原爆を積んでヨタヨタと低空で奇襲特攻を掛けて来る。
    冷戦時代、赤の広場にプロペラ機が飛んできて着陸した事件があって、ソ連の防空責任者が解任されたことがありました。
    こういうのは最新のミサイル防空システムではなかなか迎撃できない。
    実は、サイバー攻撃や電磁パルス兵器によってコンピューターが使えないという状況を想像すると、現時点では北朝鮮軍が最強なのではないでしょうか?
    2015年09月23日 03:18
  • 白なまず

    記録メディアの寿命は、、、CD-Rで10~30年、フロッピーディスクで20年以上、磁気テープは30年以上、、、HDDはメカが故障して交換する必要があり、平均故障間隔(MTBF)でたとえ10年保証と書かれていても、10年に1度故障するのですから、自分のHDDが5年以内に壊れる可能性が結構あると言う不安な状況です。実際に一番丈夫で大丈夫な物は紙でしょう。つまり、先日の日比野さんの記事で取り上げられたセルロースナノファイバーを材料とする電子記録メディアが実現できれば、人間が作る上げた最も堅牢な物となるでしょうね。日本最古の文書群はおおむね奈良時代(700年代)のものだそうですから、1300年前の実績があり、虫食いなどへの対応ができればもっと行けるかもしれません。セルロースナノファイバーベースの不揮発性メモリは既に研究されているようですので、近い将来実現すると思われます。
    2015年09月23日 09:46
  • 白なまず

    【自然の力を借りた新素材セルロースナノファイバー】日比野庵本館
    http://kotobukibune.at.webry.info/201508/article_17.html

    【記録媒体の保存条件と推定寿命】富士マイクロ(株)
    http://www.fujimicro.co.jp/enter/product/rec.html

    【ペーパーエレクトロニクス 】大阪大学 産業科学研究所 特任助教 古賀大尚さん
    http://kogahirotaka.com/about/research

    【ハードディスクに関する4つの都市伝説】
    http://gigazine.net/news/20070222_about_hdd/

    【「日本最古の文書」群は、おおむね奈良時代(700年代)のもの。】
    http://hyakuninnissyu.seesaa.net/article/149953277.html
    2015年09月23日 09:46
  • sdi

    音楽用カセットテープの復権、といってもそれはCD、DVDという記録手段があることを前提としたものです。
    メインストームの技術に不足している部分を補う、という程度の位置づけですね。
    決して、メインストリームに取って代われるもしくはそれを凌ぐ性質のものではありません。
    2015年09月23日 20:46
  • 日比野

    白なまずさん、こんばんは。

    電解水の件は、私も見かけて、エントリーできないかとちょっと調べてみたのですけれども、メカニズムが良く分からなかったです。微生物のアレよりは可能性ありそうですけれども、今は、続報待ちですかね。電解水を噴霧するだけで3割減ですからね。本当にあれば夢の技術になると思いますね。
    2015年09月24日 00:20

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