EUの乗用車市場から叩き出されるヒュンダイ

 
昨日のエントリーの続きです。

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フォルクスワーゲンの排出ガス不正操作は、排ガス規制をクリアするためのものだったのですけれども、他のメーカーも他人事だと笑ってはいられません。なぜならEUは2017年に更に厳しい排出ガステストを適用することにしているからです。

このテストはRDE(Real Driving Emissions)と呼ばれる方式で、その名のとおり、試験場で決められた走行パターンでの排ガス測定ではなく、実際に路上走行しての排ガス試験を行うとするものです。その詳細は分かりませんけれども、おそらく、昨日のエントリーで、フォルクスワーゲンの不正を暴いたウェストバージニア大学の路上試験と同じようなことをやるものと思われます。

そのフォルクスワーゲンの排出ガス不正を発表した国際クリーン交通委員会(ICCT)が、このほど、2017年に導入されるさらに厳格な排出ガステストに現代自動車、ボルボ、ルノーとともに通過が困難とする報告を出したと報道されています。

その報告書はおそらくこちらの「NOx control technologies for Euro 6 diesel passenger cars」と思われます。

報道では、「実験室ではなく実際の道路条件方式(RDE)で合計32台を調査した結果、ボルボ、ルノー、現代自動車の実験車両(各1種)が窒素酸化物を非常に多く排出した」と報じていますけれども、報告書を見る限りでは、実際に路上試験したわけではなく、NEDCとWLTCの2つの走行モードによる結果からの推定のようですね。

NEDC(New European Driving Cycle)は昨日のエントリーで紹介した欧州の走行モードであるECE15(市街地)とEUDC(高速)を合わせたものです。

それに対して、WLTC(Worldwide. Light-duty Test Cycles)とは全世界共通の軽量車走行モードとして、日米欧印韓の走行データを元に策定が進められているものです。

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上図は、そのWLTCモードの走行パターンと日本のJC08モードとの比較を示したものですけれども、WLTCモードは、低速(50km/h)、中速(70km/h)、高速(100km/h)、超高速(130km/h)の4つのフェーズに分かれ、コールドスタート条件に加え、フラットな走行区間が殆どないなど、従来より実走に近づけた走行モードになっています。

また、次の図は、国際クリーン交通委員会(ICCT)が調査した32台のリストですけれども、BMWやベンツと並んでマツダも5台調査されています。現代自動車はUpper medeiumクラスの1台のみのようです。

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そして、調査した結果から、NEDCモードを縦軸にWLTCモードを横軸にプロットしたのが次の図になります。

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図で左下にいけばいくほど、NOxの排ガスが少ないということになるのですけれども、一目で分かるとおり、BMWが非常に優秀な結果となっています。調査した32台中13台がBMWなのですけれども、ほぼ全部が左下に固まっています。

まぁ、BMWもフォルクスワーゲンと同じく不正をしていたら分かりませんけれども、フォルクスワーゲンの排ガス調査をしたウェストバージニア大学の路上試験では、BMWも同様に調査(Vehicle C:BMW X5)していて、丘陵地帯(Route3)以外は「Tier2-Bin5 Standard」規格をクリアするという結果がでていますから、BMWのNOxの低排ガスは実力とみていいと思いますね。

一方、マツダは"Average"の評価、アウディ(AUD)とオペル(OPL)は"Poor"、現代(HYU)、ルノー(RLT)、ボルボ(VLO)は"Very Poor"となっています。
※報告書では横軸の値が6以上を規格外(outliers)としている。

この図では、縦軸のNEDCモードより横軸のWLTCモードのほうがよりばらつきが大きいですから、RDEに比較的近いとされるWLTCモードで悪い結果がでている車はRDEでパスしないだろうと評価されるのは、ある意味当然で、"Very Poor"と評価されたメーカは相当これらを改善しないと、EU市場から叩き出される可能性は十分ありますね。

また、この結果を見る限り、NOxの低排出ではBMWの一人勝ち状態ですね。しかもフォルクスワーゲンがあんなになってしまいましたから、もしかしたら、近い将来のEUのディーゼル車市場はBMWが独占してしまうかもしれませんね。

この記事へのコメント

  • 白なまず

    高級車はBMW、小型低排気量で安価な車はマツダのエンジンを搭載する欧州メーカー群になると思いますが、、、それでも、特許とかよりクリーン&ハイパワーにするキーデバイスをデンソーが供給する事で欧州メーカーも復活すると思います。因みにターボなどは三菱重工とIHIが世界の4強の一角で、自動車用ターボは、米ボルグワーナーと米ハネウェル、三菱重工、IHIの4社で市場の9割以上を寡占だそうです。高性能エンジンは既に日本の部品を使わないと作れないレベルだと思います。

    【三菱重工とIHI、ターボ事業が大繁忙の理由】
    http://toyokeizai.net/articles/-/61647

    【排出ガス浄化技術】
    http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200803/02.html

    【クリーンディーゼルの小型化が可能なEGRバルブユニット、デンソーが開発】
    http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1402/18/news078.html
    2015年09月28日 12:24

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