今日はこの話題を極々簡単に…

中国国内で、日本人が中国当局にスパイ容疑で拘束されていることが次々と明らかになっています。
5月には、浙江省の軍事施設周辺で写真撮影していた51歳の愛知県在住の元公務員男性と、遼寧省丹東市で拘束された神奈川県在住の54歳の元脱北日本人妻の子供。6月には元航空会社勤務で、牧場経営者の北海道在住男性が拘束。そして、新宿の日本語学校のスタッフを務めている中国から日本に帰化した50代の女性が上海で拘束されたようです。
わずか2月のうちに4人も拘束。ただごとではありません。
しかも、拘束されたのは日本人だけではありません。3月にビジネスツアーで広東省を訪問したアメリカの女性企業家、昨年夏には、遼寧省でカナダ人夫婦がスパイ容疑で逮捕されているとの報道もあります。
更には、そうした"外国のスパイ"に情報提供した中国人も機密漏洩罪で次々と逮捕されているようです。
中国政府は昨年11月に「反スパイ法」なる法律を制定しています。
これは、"国家の安全を守ること"を目的に制定されたもので、総則を定めた第1章(第1条~第7条)、スパイ取締り活動における国家安全機関の職権を定めた第2章(第8条~第18条)、国民及び組織の義務及び権利を定めた第3章(第19条~第26条)、法的責任を規定した第4章(第27条~第37条)と、附則の第5章(第38条~第40条)の5部構成になっています。
けれども、この法律は「反スパイ法」と銘打ってはいますけれども、取締りを行う機関に対する職権が事細かく定められていて、「規定に照らして、身分証明証等を提示してから」、とか「活動によって損失を与えたならば、これを弁償すべし」とか、果ては「押収した財産は適切に管理し、一律国庫に納めるように」などの規定があり、取り締まり当局を管理する側面を持っています。
そして、肝心のスパイ行為の定義は第5章の附則第39条に規定されています。それは次のとおり。
1)スパイ組織及びその代理人が行い、又は中国大陸内外の機関等が結託して行う中華人民共和国の安全に危害を及ぼす活動実は、2014年8月に提出された「反スパイ法」の草案の中では、この項目はなかったそうなのですけれども、この追加条文で規定される範囲が広く、ふとしたことで拘束される危険があると指摘されています。
2)スパイ組織への参加又はスパイ組織及び その代理人の任務引受け
3)スパイ組織及びその代理人以外の中国大陸外の機関等が行い、又は当該機関等と中国大陸内の機関等が結託して行う国家秘密若しくは情報を窃取、偵察、買収若しくは不法に提供する活動、又は公務従事者に国家を裏切るよう扇動、誘惑、買収する活動
4)敵に対する攻撃目標の指示
5)その他のスパイ活動
例えば、2項目目にあるスパイ組織の"任務引き受け"、などは注意が必要ですね。まぁ、スパイ活動をやるから協力してくれと依頼され、そうとハッキリ認識したならいざ知らず、「ちょっとこの手紙をを誰それに渡して頂戴」とか、「あそこの写真をとってきて」という具合に、それがスパイ行為だと知らずに引き受けてしまう場合ですね。なんでも中国では、どこに「撮影禁止」の印があるのか分からない場合が多いそうですから、迂闊に写真をとろうものなら、あとから当局に、国家機密を漏洩させたと捕まってしまう危険があるということです。
そして、極め付きは5項目の「その他のスパイ活動」です。要するに当局がスパイ活動だ、と判断すれば、何でもかんでもスパイにされてしまうわけです。
これをみると、筆者には、外国人を好き勝手に人質にとることを合法化した法律に見えて仕方ありません。非常に危険だと思いますね。
去年8月のエントリー「尊共攘夷に走り出した中国」で述べましたけれども、中国は自身に西洋的価値観が浸透することをとても警戒しています。
その意味で、反スパイ法は中国国内から西洋的価値観を叩きだすための道具に使われる可能性は高いと思いますし、また、人質を取ることで政治的カードにも使えますね。
勝手に足を踏み入れたら最後、命の保証はない、中国は、そんな"暗黒大陸"になりつつあることを自覚する必要があると思いますね。
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almanos