習近平の懐刀とリアリズムの目

 
今日も極々々簡単に…

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中国の対日軍事戦略に少し変化の兆しが出てきているようです。

この程、中国空軍上将で、国防大学政治委員の劉亜州氏が尖閣に関する論文を公表し、日本と中国が軍事衝突すれば「中国は勝つ以外に選択肢はなく、退路はない」とし、「極力戦争を回避」すべきだと主張しました。

劉亜州氏は、中国軍きっての戦略理論家として知られ、「大国策」など多数の著述は将校らへ絶大な影響を与え、高い人気を集めている人物です。

一方、反日タカ派軍人としても知られ、朱成虎、熊光偕、羅援などと並んで「対日タカ派」四天王とも呼ばれているそうです。

しかも、彼は、第3代国家主席李先念の娘婿にあたり、太子党の主要人物の一人で、共産党参謀本部政治部のトップとして、習近平主席のゴーストライターの役割も担っていると言われています。

日本福祉大学の前原清隆教授は、中国軍の動きをウォッチングする場合、習近平主席の軍師と目される上将級の幹部の発言に注目する必要があるとし、特に劉源総後勤部政治委員、劉亜州上将、張海陽上将の3名を上げています。つまり、劉亜州氏は、習近平主席の軍師であり、懐刀だということです。

劉亜州氏は、2005年のレポートで尖閣奪取を宣言し対日強硬派として有名になったのですけれども、彼は、対日賠償請求権放棄を明記した共同声明などを破棄する立法措置や、領土、領海防衛で対日強硬姿勢堅持など過激な発言をしてきました。

その彼が突然、戦争を回避すべきだと言い出した。

一体何があったのかと思うのですけれども、どうも彼の過去の発言を負っていくと単なる対日強硬派ともいえない気もするんですね。

劉亜州氏は2013年、いくつかの論文を発表しているのですけれども、その内容は中国の政治体制の自由化を提唱するものでした。

彼は「天安門事件の反省を急ぐべきであり、劉暁波を拘束したことは共産党自らを敵とした。司法は独立すべき存在で党の干渉をうけるべきではない。言論の自由を確保し、複数政党制に移行し、いずれ選挙を実施しなければならない。こうして政治改革を進めなければ、次の革命に遭遇し、次ぎに被告席に座るのは我々になる」と述べ、強烈な民主化を主張しています。

また、その一方で、アメリカとは当面協調し、台湾独立派と日本を「仮想敵」にして、国民の団結心を高める戦略を提唱していたそうです。

これらを見る限り、狂信的な反日論者ではなく、中国国益を第一とするリアリストではないかと思いますね。リアリストであるからこそ、彼我の戦力を冷静に分析して取るべき手段を提唱する。無論、国益の為と判断すれば、民主化も厭わない。

これ程のことを、唱えて粛清されないのは、余程習近平主席から信頼されているものと思われます。

となると、彼の「日本との軍事衝突を避けよ」という提言は、今後の中国の動きに影響を与える可能性があります。

今、中国は南シナ海での人工島で軋轢を起こしていますけれども、イギリスのあるエコノミストは、この動きについて「東シナ海で日中領土紛争の対象である尖閣諸島をめぐって、日本が攻勢に出て、それにアメリカが肩入れしたので、中国は大国である日米と直接争うよりも、やや弱い相手であるベトナム・フィリピンのいる南シナ海に進出しようとしている」とコメントしています。

尖閣で日本との軍事衝突を避け、返す刀で比較的南シナ海への圧力を強める。まぁ軍事的には常識の動きではありますけれども、中国をしてそのように戦略転換させたのは、日米同盟が強化されたからであることはいうまでもありませんし、自衛隊の足枷をほんの少し外した安保法制も聞いて居ることは間違いないですね。

その意味では、日米同盟も安保法制も「戦争を未然に防ぐ」効果を十分に発揮しているといっていいと思いますね。

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