今日は、この話題を極々簡単に…

9月27日、国連本部で、国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)に向けた話し合いを行っていた各国首脳に、ちょっとユニークなランチが振舞われました。それは、本来なら廃棄処分されるはずだった材料だけを使った料理でした。
そのメニューは、規格外の野菜と再利用パンで作られた『ベジタブル・バーガー』。傷のついたビートで作られた『ケチャップ』、キュウリの切れ端『ピクルス』、牛の飼料やバイオ燃料として使用されるはずのコーンから作られた『フライ』の付け合わせ。
更に、野菜くず、規格外のリンゴ・梨、ひよこ豆缶を開けたときに出る汁で作られた『サラダ』。ビールの醸造・蒸留過程で出た "穀物のカス" とカボチャの種の"未精製油"で作られた『パン』。
デザートには、カカオ油を採取する過程で出た残骸や。コーヒーチェリーで作られた『カカオ・カスタードクリーム』。
一体どんな味だったのかは分かりませんけれども、ネットで出回っている画像を見る限りでは、凄く普通というか、とても廃棄食材からつくったとは思えない出来栄えでした。
この料理を考案したのは、ニューヨークにある有名レストラン「Blue Hill」の共同経営者で、著名な料理人のダン・バーバー氏とホワイトハウスの元アシスタントシェフ、サム・カス氏。
バーバー氏はこの料理を考えるにあたって「典型的なアメリカ料理だが考え方を変えてみた。ビーフではなく、牛の餌となるトウモロコシを食べるんだ。…通常なら捨ててしまうものから、本当においしいものを作り出すことへの挑戦だ。…長期的な目標は、残飯から食事を作らないようにすることだ」と語っています。
けれども、ハーバー氏は、この料理を頼まれて作ったわけでもなく、どうやら彼自身が「食物の無駄を知ってほしい」と考えているようなのですね。
彼は、レストラン業界を始め、アメリカで多くの食材がゴミとして捨てられている現状を変えていくことを目的として、ニューヨークで、食材を捨てることなく丸ごと使うことを提唱するワークショップ「WastED(waste education)」を開催しているのですけれども、彼の経営するレストラン「Blue Hill」の料理も実にユニークです。
例えば、こちらとかこちらに、その様子の記したブログがありますけれども、剣山に人参やトマトを茎や葉をつけたまま刺してそのまま出すなど、まるで"畑からそのまま"食材を持って来たかのような演出が施されています。
事実、ハーバー氏は"ファーム・トゥ・テーブル(畑から食卓へ)"の提唱者とされているそうですから、こうしたことは当然なのかもしれません。
彼は、「重要なのは、食事という手段によって、大地の恵みの物語、そして生産者たちの声をいかに上手に消費者たちに伝えるか。…たとえばサラダ。野菜が持つ繊細な酸味や風味を味わってもらえるように、あえてビネガーは使っていないんだ」と語っていますけれども、実際、「Blue Hill」で出される料理は、
レストランから北に45キロにある実験型農場で採れたものを使っているのだそうです。
「Blue Hill」の料理には、あらゆる種類の穀物を使っているのですけれども、中でもソバの実や大麦、ライ麦など、厳しい気候でも生き抜けるような丈夫な穀物をハーバー氏は好み、精白していない穀物を調理する時には、わざと湿度の高い環境に置いておいて、発芽させてから使うのだそうです。そうすることで、ビタミンやほかの栄養素が増えてくるのだ、と。
これらを、今流行りの「意識高い系」と呼ぶのは失礼に当たるかもしれませんけれども、思い起こせば、物を無駄にしない、という感覚は昔の日本人であれば当たり前に持っていた感覚ですし、おからや酒粕など、豆腐や酒を造る時にでる残りかすをまた料理に使ってしまうのは、日本では昔からやっていました。或は、蕎麦汁に蕎麦湯を入れて飲むなんてのもそうかもしれません。
日本の食文化の奥行きが、どこまで世界に知られているかは分かりませんけれども、今後、和食がヘルシーというだけではなくて、物を無駄にしない「意識高い系料理」という面から注目されるときがくるのかもしれません。
ただ、今の日本は食材を無駄にしている現実があります。
農林水産省によると、日本では、年間約1700万トンの食品廃棄物がでていて、このうち、本来食べられるのに廃棄されているものが年間約500~800万トンあるそうです。
その意味では、和食が本当に「意識高い系料理」になる前に、まず「勿体ない」を取り戻す必要があるのかもしれませんね。
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