BMWは排出ガス基準を大幅に超過していたか

 
今日はフォルクスワーゲンの排出ガス不正に関する補足エントリーです。

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数日前、フォルクスワーゲンの排ガス不正について、いくつかエントリーしましたけれども、その後のネット上で、他のドイツ車メーカーも不正しているのではないかという書き込みや、「フォルクスワーゲンのクリーンディーゼル不正問題について」のコメ欄で、白なまず様から、陰謀論的な裏があるのでは、とのコメントをいただきましたので、整理を兼ねて考えてみたいと思います。

まず、他のドイツ車メーカーについてです。

フォルクスワーゲンと他の自動車メーカーの排ガス量については、「EUの乗用車市場から叩き出されるヒュンダイ」のエントリーで取り上げたことがあります。

このエントリーでドイツ車では、BMWが優秀な結果を出していると述べましたけれども、次の報道を例に出して、BMWも駄目だ、という書き込みがちらほら見受けられます。その記事は次のとおり。
 ドイツ自動車専門誌「アウト・ビルト」(電子版)は24日、米環境団体ICCTが実施した実走試験で、ドイツ大手メーカーBMWのディーゼルエンジン車の排ガスから欧州の制限基準値の11倍を超える窒素酸化物(NOx)が検出されたと報じた。

 大規模な排ガス規制逃れが発覚した欧州最大手のフォルクスワーゲン(VW)の場合、試験時だけ排ガス浄化機能がフル稼働するよう違法ソフトを車に組み込んでいた。BMWの広報担当者はこうした不正行為はないと否定しているという。

 基準を上回るNOxが検出されたのはスポーツ型多目的車(SUV)の「X3 xDrive20d」。試験を実施したICCTは「(基準値超えが)VW特有の問題ではないことをデータは示唆する」と指摘している。(共同)

この記事では、BMWの「X3 xDraived20d」という車種が欧州基準の11倍だったとしています。まぁ、肝心の実走試験のレポートを見ていないのでなんともいえないところがあるのですけれども、「フォルクスワーゲンのクリーンディーゼル不正問題について」で取り上げたICCTのレポートには、比較のためなのか、フォルクスワーゲンと一緒にBMWも路上試験しています。

くだんのレポートにはBMWとハッキリ記載されていませんけれども、その他の報道でBMWのX5と報じられていましたので、BMWのX5として扱いましたけれども、その結果のグラフは次のとおりです。

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こちらのグラフは縦軸をレシオで取ったもので、Vehicle Cが「BMW X5」です。この調査では、「BMW X5」はRoute3の丘陵地帯の路上試験でのみ、アメリカの排気規制である「Tier2-Bin5 Standard」の約10倍のNoxを排出している以外、残りのコースでは基準をクリアしています。

BMWのX5のカタログスペックを見てみると、ディーゼル車かつ、2014年3月以前のモデルとなると、「xDrive 35d」になると思われますけれども、こちらは排気量2992ccで直列6気筒DOHCターボ。最大トルクが57.1kg・m/1500~3000rpmあります。

それに対して、くだんの記事で挙げられているX3の「xDrive 20d」は、排気量1995ccで直列4気筒DOHCターボ 。最大トルクは38.7kg・m/1750~2750rpmです。つまりX5に比べてX3は小型だということですね。

X5もX3も同じエンジン特性を持っていると仮定すると、仮にX3が同じX5の路上試験と同じコースを走ったとしても、X5と同じく、Route3の丘陵地帯こそ排ガス(NOx)は多いものの、それ以外のコースでは非常に少なくなるだろうと思われます。

ただ、上述のとおりX3はX5に比べてトルクがない分、丘陵地帯のような上り坂では、X5と比べてもっとエンジンを吹かさないといけませんから、当然、その分だけNOxの排出量は多くなる筈です。

そこからいくと、記事にあるとおり、基準の11倍のNOx排出、というのは、上り坂のようなエンジンに高負荷を長時間かける走行では有り得ると思います。実際X5では、10倍(対Tier2-Bin5 Standard:0.04 [g/km]規格)でしたしね。

その意味では、くだんの記事は"嘘"は言っていないと思いますけれども、"全体"を記事にしていない。少なくとも路上走行のコース条件と、欧州基準とはどの基準のことなのか(EURO6だとNOx許容値:0.08mg/Km)を示さないと、判断できないですね。

これについてBMWは次のようにプレスリリースしています。
BMW Group statement concerning the current discussion of diesel engines

TOP 24.09.2015

Munich. The BMW Group does not manipulate or rig any emissions tests. We observe the legal requirements in each country and fulfill all local testing requirements.

In other words, our exhaust treatment systems are active whether rolling on the test bench or driving on the road.

Clear, binding specifications and processes are in place through all phases of development at the BMW Group in order to avoid wrongdoing.

Two studies carried out by the ICCT have confirmed that the BMW X5 and 13 other BMW vehicles tested comply with the legal requirements concerning NOx emissions. No discrepancies were found in the X5 between laboratory-test and field-test NOx emissions.

Auto Bild has published a clarification of their article released on 24 September concerning the emissions of a BMW X3: “No evidence of emission manipulation by BMW (…) The values mentioned in the document were only generated in a single, one hour-long road test. Auto BILD has no access to the details of this test trail, which might explain the discrepancies to the test cycle NEDC.”

We are willing to discuss our testing procedures with the relevant authorities and to make our vehicles available for testing at any time.
このプレスリリースで、「ICCTによる2つの研究で、BMW X5と他の13のBMWモデルがNOx排出基準を満たしていることが確認されている」と述べているのは、筆者が「フォルクスワーゲンのクリーンディーゼル不正問題について」と、「EUの乗用車市場から叩き出されるヒュンダイ」のエントリーでそれぞれ取り上げたICCTのレポートを指していると思われます。

そして、問題の「アウト・ビルト」紙が報じたX3のNOx排出の記事について、ロードテスト結果を知らされていない、と言っているのですね。従って、記事についてコメントできず、「アウト・ビルト」に説明を求めているとしています。まぁ、走行条件が分からない以上、そう答えるのも当然ですね。

これについて、「アウト・ビルト」紙は、こちらで釈明しているようなのですけれども、筆者はドイツ語は分からないので、翻訳WEBを使いながら読んだ限りでは、どうやら、この路上テストは、イギリスのテスト機関からICCTに提供したもので、「アウト・ビルト」紙は詳細を把握していないようなのですね。

ですから、この「アウト・ビルト」紙の記事を引用した他の記事の信憑性もまぁそういうことですね。

筆者としては、おそらくX5の結果から、エンジンに高負荷を長時間掛ける路上走行をして、基準をオーバーしたのだろうと思いますけれども、その結果だけで、基準を11倍もオーバーするダメ車だ、と言うのはちょっと勇み足かなと思いますね。

今日は、ここで力尽きました…。続きは明日。

この記事へのコメント

  • 白なまず

    またまたお題と関係無くて済みません。不思議の国日本の技術は石油を醸す秘術を見出したか、、、この燃料使えばNoxは、、、合成油は精製する必要がなく、硫黄や窒素成分を含まないので燃焼時に地球温暖化ガスも出ないということです。 そう言えば、ベンツもBMWもCo2のデータは実データの5割増で燃費は良くないようですね、、、光化学スモッグの原因のNoxは大気汚染に直結しますので改善してもらう必要がありますが、Co2の方は問題視されてないようなので、、、本当にご都合主義な世界ですね。

    【快挙】京都大学名誉教授 今中忠行 炭酸ガスと水を使い効率的に石油を合成することに成功!!!!
    https://www.youtube.com/watch?v=JS6JT9akZo8

    【京都】炭酸ガスと水で効率的に石油を合成と発表
    http://webnews.asahi.co.jp/abc_2_005_20150918008.html

    【朗報】京大名誉教授『水と炭酸ガスがあれば、石油を増やせるぞ!』←3円分の電力で100円分の石油 日本が石油国になる!
    http://www.scienceplus2ch.com/archives/5118815.html
    2015年10月04日 05:25
  • 白なまず

    訂正します。
    >Co2のデータは実データの5割増
    Co2のデータは実は、データの5割増
    2015年10月04日 05:32

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