EUによる難民の信用保証はできるか

 
昨日の続きを極々簡単に……

画像

 ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします。

パリのテロ事件を受けて、EU各国がシリア難民に対する態度を硬化させる動きを見せています。

11月14日、フィンランドのシピラ首相はテロ事件が自国への難民申請者に直接影響することはないと述べましたけれども、国境での入国審査を復活させる意向を示しました。昨日のエントリーで、加盟国相互の通行自由化と手続き簡素化を目的とした共通滞在協定「シェンゲン協定」について触れましたけれども、フィンランドはこの「シェンゲン協定」の加盟国です。

フィンランド当局は「戦争犯罪やテロ組織に関わった申請者がいないか調べるのは義務」と説明していますけれども、入国審査を復活させるということは、事実上「シェンゲン協定」を破棄するということです。

また、ポーランドもシリア難民受け入れを撤回する方針を出しています。

ポーランドは先月25日の上下両院選挙で、保守の最大野党「法と正義」が圧勝し8年振りの政権交代が予定されています。この「法と正義」は難民受け入れに反対し、協力は資金支援にとどめるべきだと訴え選挙に勝っているんですね。

ポーランドの現コパチ政権は、今後2年間で7500人の難民受け入れを表明していたのですけれども、新政権の欧州担当相に内定しているシマンスキ氏は「実行に移す余地はなくなった」と撤回する考えを述べています。

EUの基本理念のひとつに経済活動や人の移動の自由化があったと思いますけれども、テロ事件一つでそれが崩れさるかもしれないということです。

もう既に何千、何万と受け入れている難民の中にISILの工作員がいるかもしれない、そしてそれが誰だか分からない、となると、難民全部が怪しいという扱いになってしまいます。

これは、2007年のサブプライム問題、すなわち、サブプライムローンに関わる債権が組み込まれた金融商品が丸ごと信用を失ったのと構造的には極めて良く似ていると思いますね。

ただ、金融商品には"信用格付け"というものがありますけれども、難民に"信用格付け"というものはありません。強いて上げるとすると、それは入国時における"入国審査"ということになります。

その意味では、先に取り上げたフィンランドの「入国審査の厳格化」というのは、難民に対する「格付け」とは言わないまでも、「信用保証」を行なおうとしていると思うんですね。けれどもこれは先にも述べたとおり、事実上の「シェンゲン協定」の破棄であり、EUの理念の一部を放棄することになります。

となると、EUが自身の理念を保持するためには、今後、EUが難民に対して、テロリストではないという「信用保証」をしなければならないということになります。

では、そんなことが実際できるのかというと、それは難しいと思います。なぜなら、それはEUの各国が持っている移民政策の主導権を取り上げ、統一化することを意味するからです。

英王立国際問題研究所のリチャード・ホイットマンは、テロの脅威について「明らかに国境を超えた複合的問題だが、各国政府はこの件で主導権を手放したがらない」と指摘していますけれども、まぁそういうことですね。

ですから、今回のテロ事件はある意味、EUそのものを揺るがしかねないという問題を孕んでいるのだと思いますね。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック