インド高速鉄道に日本新幹線が採用されることについて

 
今日はこの話題を極々簡単に……

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12月8日、日本、インド両政府はインド西部の最大都市ムンバイから西部グジャラート州アーメダバード間を結ぶ高速鉄道計画で、日本の新幹線方式を採用することで合意する見通しと報じられています。総事業費は約9800億ルピー(約1兆8000億円)で、そのうち1兆円超は、約1000億円を10年間程度にわたって円借款で供与する方針で調整していると伝えられています。

現在最終調整中で、12日に行われる安倍総理とインドのモディ首相との首脳会談で合意の上、共同声明に盛り込むようです。まぁ、共同声明に入れるということは国家間の約束ですからね。声明の盛り込まれるのであれば、必ずやることになります。

今回の対象路線はムンバイからアーメダバードまで、インド西部の南北に延びる505キロメートルの区間で、最高時速は320キロメートル。所要時間は現在の約8時間から2時間程度への短縮を予定しているそうです。

モディ政権は、景気対策の一環として高速鉄道の整備を積極的に推進する方針を打ち出しているのですけれども、ニューデリー、チェンナイ、コルカタ、ムンバイの4大都市を高速鉄道で結ぶ「ダイヤモンドの四角形」構想を掲げています。

インドに鉄道がひかれたのは今から160年以上前、当時の宗主国であったイギリスが導入した1853年にまで遡ります。

インドが独立する以前には、40以上の鉄道会社があったのですけれども、1951年に国有化され、インド国鉄が誕生します。これにより、インド国鉄はインドの全域、ほぼ全ての州を一つの鉄道でつなぐこととなり、国家の統一に大きな貢献をしたとされています。

ところが、数多くの鉄道会社の統合で設立されたインド国鉄は、レールのゲージ幅が統一されていないなど、さまざまな問題を抱え、鉄道の延伸も思うように進みませんでした。

インド国鉄の鉄道網は総延長距離で6万4099キロありますけれども、これは1947年当時の5万3996キロと比べて、わずか1万キロしか伸びていないのですね。

また、鉄道事故の問題も深刻化しています。インドでは年間200件以上の鉄道事故が発生しているのですけれども、その殆どが無人踏切で起きています。其の無人踏切はインドで17000ヶ所もあるそうですから、潜在的事故のリスクは相当高いとみていいと思われます。

更には、インド鉄道の機関車はディーゼルエンジンの車両が多く使われ、軽油の大量消費も問題となってきています。インド国鉄は世界一運賃が安い(イメージ的には東京-鹿児島間の運賃が500円!)のですけれども、様々な理由で燃料費を運賃に転換できず、赤字が膨らんでいます。

しかし、その輸送量は物凄く、1日当たりの輸送人員は2500万人以上、年間では72億人。1日当たりの運行列車本数は1万9000本で、そのうち1万2000本が旅客用で、7000本が貨物列車です。駅の数は7083もあります。

モディ政権はここにメスを入れようとしているのですね。インド政府は、今回の計画を皮切りに7路線の高速鉄道を計画しているのですけれども、勿論、日本だけでなく、他国も受注しようしています。

今のところ、日本以外に中国、フランス、ドイツなどが受注競争を展開していますけれども、もしも、モディ政権掲げる「ダイヤモンドの四角形」構想の路線全部を同じ車両システムで運用しようと考えているのなら、今回受注する日本の新幹線方式は運行システムの一つの基準になると思います。

なぜなら、日本の新幹線は、レール、車両などをトータルで運用して安全性を確保するようになっているからです。

以前「新幹線と日本製品の信頼性」のエントリーで取り上げましたけれども、2011年の中国・温州での新幹線衝突事故は中国製の信号システムの問題だったといわれています。しかも同一路線に、日本、ドイツ、フランスなどの車両を走らせているのですね。

インドでも同一路線にそれぞれ別の国の車両を走らせるとなると、安全性の面で問題が起こらないとも限りません。この問題をどうするか。路線毎に車両を完全に分けるのか、それともどれかのシステムに統一するように要求するのか。

今回日本の新幹線が受注できたことは、喜ばしいことではありますけれども、本当に大変なのはこれからだと思いますね。
 
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