台湾を巡る米中冷戦の深化
今日はこの話題を極々簡単に……
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12月16日、アメリカ政府は、台湾に海軍のミサイルフリゲート艦2隻など総額約18億3000万ドルの武器を売却すると議会に通知しました。
国防総省によると、今回売却するのは、フリゲート艦のほか、携行式地対空ミサイル「スティンガー」や水陸両用強襲車両などとのことで、カービー国務省報道官は16日の記者会見で、武器売却について「台湾の防衛上の必要性を評価した」と説明しています。
これについては、軍事的というより政治的な意味合いが強いという指摘があります。
確かに、これらを売却することで、中国の南シナ海への拡張政策に対する牽制のメッセージとなっているとみていいと思います。
けれども、それが軍事的に意味があるかどうかについては、やはり別に考えるべきだと思いますね。
なるほど、フリゲート艦や携行式地対空ミサイルや水陸両用強襲車両と並べると、さも防衛力が強化されたかのように見えます。けれども、これらは全て陸か海で使うもので、空からのものがありません。戦闘機や爆撃機の類ですね。
台湾は本当に防衛力を強化しようと思うと、空もしくは海中の装備を強化しなければなりません。なぜなら台湾は「島」だからです。
台湾は九州を一回り小さくした程の島ですけれども、中国が台湾を軍事的に占領するためには、大規模な揚陸作戦を展開する必要があります。その時天敵となるのが航空兵力であり、潜水艦です。
楊陸を阻止するためには態々上陸させるよりも、海上で揚陸艦ごと沈めてしまったほうが早いですからね。だから航空兵力や潜水艦の出番となるわけです。
特に揚陸艦が相手となると、航空兵力はより重要になります。なぜなら、揚陸艦のでてくるまで海岸に近づけさせてしまうと、浅瀬に過ぎて潜水艦では攻撃できなくなってしまうからです。その時は空からの空爆が最も効果的になります。
ところが台湾は中国大陸からわずか200キロしか離れていません。これくらい近いと、中国大陸から直接、中国軍の戦闘機が飛んでくるのですね。
アメリカのランド研究所が2015年9月に発表した報告書によると、中国軍戦闘機が無給油で行動できる範囲を台湾から800キロとし、中国の海空軍が約40カ所の基地から作戦を行えるとしています。
中国はこれらの基地に戦闘機で35個、爆撃機で5個の飛行旅団を配備でき、最大作戦投入可能機数は600機に及ぶと試算しています。しかもこれら戦闘機の中心は殲10や殲11、殲16といった第4世代戦闘機が中心なのですね。
対する台湾の航空兵力は貧弱です。台湾空軍の主力戦闘機はF16A/Bが146機に自主開発の経国126機。そして56機のミラージュ2000に、60機のF5です。
F16は確かにベストセラー機ではありますけれども、F16A/Bは一番最初の量産型であり、能力的に不足が目立ってきていますし、経国も作戦行動半径とペイロードに制約があり、空対空能力に不安があります。ミラージュ2000は部品の不足などにより作戦可能機数が少なく、F5は型落ちで訓練用がメインです。
このように今の台湾空軍は中国空軍と比べて劣勢なのですね。
そこで台湾は、かねてからアメリカに新型のF16C/Dの売却を求めていました。ところがアメリカは中国を刺激するとして、F16C/Dの売却を認めてきませんでした。その代りに現行のF16A/Bの近代化改修を提案したのですね。
ただ、ここからが少し面白いところなのですけれども、このF16A/Bの改修というのが、最新型レーダー「アクティブ電子走査アレイ(AESA)」を搭載のみならず、その他にも最新式空対空ミサイルの搭載や各種対地誘導爆弾などの兵装アップグレードやリエンジン研究もするという案も取り沙汰されています。
これらの改修が順調に行なわれれば、その性能はF16C/Dを上回るとも言われています。要するに「魔改造」ですね。
ただ、キルレシオにもよりますけれでも、質で量をカバーするにも限界はありますから、根本対策とまではいかないかもしれません。ただし今よりは、軍事バランスを取る方向になるとは思います。
つまりアメリカは、フリゲート艦等を売却することで表のメッセージとして中国を牽制し、裏ではF16の「魔改造」とやって、事実上の台湾の防衛能力の向上を図っているということです。強かですね。
中国外務省は、今回の台湾への売却について、アメリカ臨時代理大使を呼んで「断固反対する」と抗議し、関与した企業への制裁措置を伝えたそうですけれども、アメリカとて十分承知しているでしょう。
ここでも米中冷戦が起こっているということですね。
この記事へのコメント
opera
また、来年以降は、台湾の国連加盟の動きも出てくると思いますが、これにどう対応するかで、日米ともに真価が問われることになりそうです。