落日の上海

 
 今日は極々極簡単に……

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 1月26日、中国株式相場が急落しました。上海総合指数は前日比6.4%安の2749.79、工業やエネルギー、テクノロジー銘柄が下落の中心だったようです。

 中国経済が減速し、人民元の相場下支えで中国の外貨準備高も減る中、資本流出が加速するとの懸念が広がったという見方があるようです。

 君康人寿保険の呉侃ファンドマネジャーは「これは信頼感の問題だ。現在の中国株式市場への信認がない。……人民元の下落や経済成長率の鈍化がしばらく市場を悩ましている。春節まで2週間を切っており、さらに取引を手掛けるムードは乏しいようだ」とコメントしています。

 この呉侃氏は10日前にも「市場は年初に大惨事モードに入り、今なおその状態にある。……市場は完全に信頼を失っているが、その根底にある理由は特に小型株など株価が割高であるためだ」と同じ事を述べているんですね。

 遡って、昨年の12月21日、この日は上海総合が3週間ぶり高値を付けたのですけれども、この時、呉侃氏は「中央経済工作会議で国有企業改革が加速または大きく前進するかもしれないとの期待がある。市場関係者は国有企業の効率改善を期待している」と述べています。

 そして更にひと月ちょっと前の11月13日、中国の証券取引所が信用取引の証拠金率を50%から100%に11月23日から引き上げると発表したのですけれども、呉侃氏は「市場は証拠金率引き上げを予想していなかった。投資家は恐らくネガティブに反応するだろう。……当局は信用取引を秩序立って増やしたいと考えており、証券会社がその影響をまともに受けることになりそうだ」とコメントしています。

 これらのコメントを追って筆者が気になったのは、中国株式当局の動きに振り回されているというか、そのまま反応しているということです。

 呉侃氏が指摘する年初の大惨事モードというのは、年明けから中国株がダダ下がりしていることを指しているかと思いますけれども、サーキットブレイカーも導入した途端に撤回に追い込まれていますからね。中国当局の失策が、中国株市場全体の信頼を失わせる後押しをしているようにも見えます。

 そんな中、中国の政府系シンクタンク「中国社会科学院」が自国経済について「春は二度と来ない」とうショッキングなレポートを出して話題になっているようです。

 中国社会科学院は1977年に設立された、多数の研究者を擁する中国国務院直属の最高学術機構です。それが去年の秋に「『メイド・イン・チャイナ(中国製造業)』の新常態」というレポートを発表しました。

 それによると、最近の中国の貿易状況を「振るわない状態が続いているだけでなく、ますます悪化しているとも言える。…心配なのは、中国の製造業が直面しているのは、不景気という一時の落ち込みではなく、国内外の経済環境の変化がつくり出した新常態である」と警告。更にアメリカのボストンコンサルティンググループ(BCG)が発表した報告書「主要輸出国25カ国の生産コスト比較世界の生産拠点の勢力図の変化」で、中国の生産コストは、すでにアメリカと差がほとんどなく、米国の生産コストを100とすると、中国の指数は96に達しているという指摘を引用し「少なくとも一定程度、製造業における労働コストという強みが確実に低下していることを説明している」とこれを認めています。

 以前のエントリーで中国は中進国の罠に嵌っていると述べたことがありますけれども、この中国社会科学院のレポートはそれを認めているのではないかと思うんですね。

 実際レポートでは、「労働力の比較優位性は次第に弱まり、構造転換と高度化をせまる十字路に至って、方向転換のために速度を落とさざるを得ない。製造業は内憂外患の双方からの圧力のもと、ボトルネックに入り込んでいる……『前門の虎、後門の狼』の中間に深く入り込んだ」と指摘している程です。

 巷で噂される中国発の「世界恐慌」が起こるかどうか迄はまだ分かりませんけれども、中国にどっぷりと足を入れた外資はどんどん厳しくなっていくと思われます。

 昨年の日本の対中投資は32億1000万ドルとなり、前年比25.2%減。3年連続で減少していますけれども、大枠では逃げ出して正解ではないかと思いますね。

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