幻の木

 
今日は、日比野庵ラノベのタイアップエントリーです。

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「幻の木」というのをお聞きになったことがあるでしょうか。

幻といっても、勿論存在しないわけではありません。市場に滅多に出ないことでそう呼ばれるようになりました。それは「榧の木」です。

榧は、イチイ科の常緑針葉高木で、日本国内では、岩手県、山形県以南の本州、四国、九州の山野に分布しています。

この木を燃やすとその煙が蚊を追いやる性質がある事から「カヤ」の名がついたと言われています。

榧は高さ25m、直径2m程度にまで育つのですけれども、成長は極めて遅く、30センチ伸びるのに3~4年、直径1.1mほどの成木になるまでには300年かかると言われています。寿命は長く1000年にも及びます。

材質は硬くかつ弾力性に富み、建材・家具・碁盤・将棋盤・彫刻材に向いているとされています。また、実から油が獲れ、食べることもできます。

けれども、榧は、杉や檜に比べて成長まで数倍の時間がかかる上に、伐採から製品になるまで10年以上を必要とします。また苗木を植えても鹿や猪が食べてしまいますし、草引きしないと直ぐ枯れる。更には夏の暑さにも弱い。

要するに、手間がかかる癖に、成長がとても遅いので、「お金」にならないという訳です。そうしたことから、榧は植林されることが殆どなく、今では国産の榧は「一山に一本」と呼ばれるまで少なくなっていて、絶滅が危惧されています。

以前は中国産の榧も輸入されていたりしたのですけれども、90年代後半から輸出が禁止され、榧の原木が木材市場に入荷することはほとんどなくなりました。それ以来、榧は「幻の木」と言われるようになりました。

今や国産の榧は希少品となっていますけれども、将棋や碁の愛好家に言わせると、国産の榧の指し味は格別なのだそうです。それは適度に弾力があるからで、打った時の衝撃を吸収してくれるからです。

これが、中国産の榧となると、油分が少なく、固い打ち味で疲れるのだそうです。

そんな国産の榧が絶滅してしまうのは非常に惜しいと、ごく僅かですけれども、榧の植林に努めている方もいらっしゃいます。三百年後の日本人へ、榧の木を残していけることを切に願います。




日比野庵ラノベ第六話に榧の将棋盤を登場させました。

筆者も恥ずかしながら、ラノベに出した程立派ではありませんけれども、本榧の将棋盤を持っています。本当に甘い香りがします。天然アロマと言って差し支えありません。

確か漫画の「ヒカルの碁」で、新榧(スプルース)の碁盤を本榧と偽って売っていたのを、主人公ヒカルに取りついた平安の幽霊佐為が見破るというシーンがあったと思いますけれども、本榧の香りを知っていれば、香りのない新榧など、一発で見破れる筈です。香りを嗅げばそれで終わりです。目利きなど要りません。

それに指し味も素晴らしい。駒を打つと「パシーン!」と高い音が返ってきます。なのに硬くはなく、弾力があります。これは確かに癖になるでしょうね。珍重されるのも分かります。

そして、ついでの駒の方ですけれども、将棋の駒は国産の本柘植の駒が最高級品とされています。特に御蔵島の柘植から作った駒が最上とされ、次いで、鹿児島県の柘植から作る薩摩柘植が良いとされていいます。

柘植の木は材質が非常に緻密で堅く、しかも弾力があるため、古くから櫛の材料としても使われています。この柘植の木もまた成長が遅いのですね。

もちろん、タイ・中国などからの輸入物の黄楊、シャム黄楊とも言われますけれども、こちらは新品の内は本柘植と左程違いはないのですけれども、長年経つと、黒ずんで見た目が悪くなります。それに対して、国産の本柘植の駒は年月と共に、段々と渋みと光沢を持ってきて、飴色になります。

筆者も薩摩柘植の駒を一組と、シャム黄楊の一字駒を一組持っていますけれども、十年経つとその差は一目瞭然です。全然違います。

日本贔屓というわけではありませんけれども、盤駒に限れば国産に勝るものはないのかもしれませんね。

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