ダウェイ開発は甘くない

 
今日はこの話題を極々簡単に……。

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この程、ミャンマー南部で進む日本とタイ、ミャンマーの3ヶ国共同事業「ダウェイ経済特区」の開発で、中国が4車線道路と港湾の整備に参加する方針をミャンマー側に伝えたことが明らかになりました。

何でも、中国が提案しているのは、タイ国境からダウェイまでをつなぐ全長約130キロの4車線道路と、港湾施設の建設で、総事業費は約275億バーツ(約900億円)に上るようです。

ダウェイ経済特区の開発に関しては、2015年7月に日本がミャンマー、タイと開発協力で合意し、覚書を交わしています。それによると、3年以内に開発計画を策定し、4車線道路の建設などを含めた本格的な開発に踏み出す予定となっています。

ただ、計画開始前の初期段階では、ミャンマーとタイの建設会社が開発を進めることになっているのですけれども、中国はこの段階で食い込んで開発しようという腹積もりのようです。

日本政府は当初の合意通り、3ヶ国で計画を進めることをミャンマーとタイに確認するそうですけれども、タイとミャンマーは、日本が採算性や環境への影響を調査するというやり方について「日本のやり方は理解しているが、あまりにも遅い」と不満の声も上がっていたようです。中国はここを突いてきたというわけです。

ミャンマーの経済特区については、2013年1月のエントリー「麻生副総理のミャンマー訪問と『自由と繁栄の環』」で取り上げたことがありますけれども、とりわけダウェイ経済特区の開発は一筋縄ではいきません。

ダウェイはタイの首都バンコクから西方約350kmに位置するタニンダーリ管区の区都です。この地区の開発は、ダウェイ北方約20kmの農村地域に工業団地 20451ヘクタールを開発し、深海港、造船場、石油精製コンプレックス、製鉄所、 肥料・石油化学工場、パルプ・製紙工場、中・軽工業工場、発電所等の建設が計画され、完成すれば東南アジア最大の工業地帯になると言われています。

開発は、2008年にタイとミャンマー両国政府が二国間で協力して進めることを確認し、タイの民間企業が主体となり進められてきたのですけれども、2013年に資金調達の失敗からタイ企業が撤退した後は、開発主体がタイ・ミャンマー両政府の出資する特別目的事業体の手に移り、その後、タイの政情不安から、事業の先行きが怪しくなっていました。

2014年10月にタイ・ミャンマー両政府がこの事業の再開を確認した後、新たな投資元として日本が求められたという経緯があります。

ところがいざ開発となると問題が山積しています。

ダウェイ特区の開発には、その地区の20~36村の約4384~7807世帯(22000~43000人)が直接影響を受けると言われていて、工業団地周辺の環境問題も懸念されています。

当初の建設予定地とされる地域の周辺は、住民の立ち退きが済み、整地が進み、住民用の新しい住居も立ち並んでいるのですけれども、それは外見だけで、実際にはその殆どは空いたまま。多くの住民は周辺に移っただけのようです。

ですから、開発が遅れたりすると、立ち退きをした農民が仕事にあぶれて、元の用地に戻ってきたり、開発地区の地価高騰を受けて補償のやり直しを要求してくるなどの問題も予想されます。これらはヤンゴンからほど近いティラワ開発特区で実際に起こったことです。

ミャンマーのテイン・セイン大統領は、ダウェイ開発について「ダウェイ開発は簡単ではない。できるのに30年や50年はかかる。もし、開発が順調に進んでも成果を得るのはタイで、ミャンマーに成果が回ってくるのはその後だ」と述べていますけれども、相当長期に渡って腰を据えて掛からなければならない事業です。

中国はタイ国境からダウェイまでの幹線道路と、港湾施設の建設といっていますから、比較的簡単にできるところだけ"つまみ食い"的にやって、美味しい港湾設備の権益だけ我が物にしたいという思惑があるかもしれません。

タイとミャンマーが日本のやり方を遅いと文句をいうのは勝手ですけれども、急いでやった後困るのは自分達です。そんなに急ぎたいのなら、常識破りの速度で開発してくれる中国にお願いすれば如何でしょうか、と言ってやりたくなりますけれども、中国すらダウェイ特区の全部には手を出さないとするならば、相当困難な事業であることは容易に想像できます。

まぁ、インドネシアの高速鉄道を中国が受注した後どうなっているかを見れば、インフラ開発に中国を噛ますリスクは小さなものとも思えません。

タイ・ミャンマー両政府がどういうか分かりませんけれども、日本は焦って開発を急ぐなど軽挙に走らないことを望みます。

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