内外に単一の歴史観を強要する韓国
昨日の続きです。
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昨日のエントリーで、韓国が日本の検定教科書に文句をつけていることを紹介しましたけれども、その韓国は自国の教科書を国定制に戻しています。
昨年10月、韓国政府は10月12日、中学・高校の歴史教科書を、複数の教科書会社が発行する検定制から、国家が単一の教科書を編集・発行する「国定制」に戻すと発表しました。
これについて、黄祐呂・副総理兼教育部長官は「理念の偏向を払拭し、青少年に正しい国家観とバランスの取れた歴史認識を育てられるよう、憲法の精神と客観的事実に即した教科書をつくる。出版社の教科書の執筆陣が書いたものを部分的に直すだけでは、問題の根本的解決にはならない」と説明しています。
ただ、この国定化については、朴槿恵大統領の強い意向が働いているようです。朴槿恵大統領は、2013年の就任直後から「正しい歴史観」「バランスの取れた歴史教育」を強調し、教科書の国定化に意欲を見せていました。
国定化の発表後、朴槿恵大統領は国会での演説で、検定制の現行教科書に李承晩、朴正煕政権など韓国の歴代政権を否定し、北朝鮮の正当性を認めるような記述があることを念頭に「教科書国定化に歴史歪曲や美化ではないかとの憂慮があるが、そんな教科書は絶対に座視しない。……歴史を正しく受け入れることが政争の具になってはならない……歴史教育の正常化は当然の課題であり、われわれの世代の使命だ」と述べています。
この朴大統領の演説と黄祐呂教育部長官が指摘する「出版社の教科書の執筆陣が書いたものを部分的に直すだけでは、問題の根本的解決にはならない」の部分を重ね合わせると、北朝鮮の工作がかなり浸透しているように見えます。だとするとそれ故に是正したいということなのかもしれません。
そして、何故是正しなければならないのかというと、おそらく北朝鮮の正当性を認めることは、そのまま、韓国という国の正統性を否定することに繋がることになるからだと思われます。
実際、朴大統領はこれについて閣議ではっきりと次のように述べています。
「現行の歴史教科書は、わが国の現代史を正義に反する歴史として否定的に描写している。大韓民国は『政府の樹立』、北朝鮮は『国家の樹立』と記述され、大韓民国に分断の責任があるかのような印象だ。6・25戦争(朝鮮戦争)の責任も南北双方にあるかのように記述され、戦後の北朝鮮による各種の挑発は矮小(わいしょう)化されている。……このように誤った内容でバランスを欠いた歴史教科書で学んだ生徒たちは、『大韓民国は生まれてはならない恥ずべき国』という認識を持ち、国家に対する誇りを失わざるを得ない。自国の歴史を知らなければ、魂のない人間になり、正しい歴史を学ぶことができなければ、魂が不正常な人間にならざるを得ない」
つまりはそういうことですね。これ以上放置すれば国が揺らぐと判断しているのでしょう。
現在、韓国国内で歴史観が大きく対立するのは、大きく次の三点だと言われています。
1)1910~1945年の日本の植民地支配を、日本による抑圧と収奪と否定的にみるか、朝鮮半島の近代化に一定の貢献があったとみるか
2)主に1945年の解放以降、韓国(南朝鮮)で起きた反政府暴動を、民衆運動と肯定的にみるか、北朝鮮の指示を受けた左翼テロと否定的にみるか
3)1960~70年代の朴正熙政権を、民主主義を弾圧した独裁者と否定的にみるか、経済発展の立役者と肯定的にみるか
韓国では、進歩派は前者、保守派は後者の見方を取る場合が多いのですけれども、歴史学や教育学界では進歩派が優勢なのだそうです。これに対して、朴政権は今の教育現場で使われている歴史教科書が「反米的で北朝鮮に甘い」と批判してきました。
自分の国がこういう歴史観の分裂を抱えた中で国定教科書を定めている癖に、日本の検定教科書に「正しい歴史を教えろ」と文句をつける神経が理解できないのですけれども、自分の国の正統性を主張するために、他国の教科書もそれに合わせろ、というのは傲慢に過ぎると思いますね。
この記事へのコメント
J.O.