昨日の続きです。

EU離脱を決めたイギリスの国民投票が波紋を広げています。イギリス連邦からの独立を指向する動きが活発化してきました。昨日のエントリーではスコットランドが独立の動きを見せていることに触れましたけれども、イングランド内でも足下が火を噴きました。ロンドンです。
ロンドンのサディク・カーン市長は、EUからの離脱交渉において、ロンドンには発言権があるはずだと語り、「イギリスからのロンドン独立を宣言し、EUへの加盟を求める」署名サイト「change.org」が立ち上げられ、既に数万人が署名したようです。
また、そればかりでなく、国民投票そのもののやり直しを求める請願への署名が、イギリス下院のサイトに殺到、24日にはサイトがダウンした程です。25日には署名が100万を超えました。こちらにリアルタイムの署名数がありますけれども、26日0時30分現在で175万を超えていますね。まだまだ伸びそうです。
請願は去年の11月から出されていて、投票率が75%未満で、多数だった方の得票率が60%未満だった場合、やり直しを求めるという内容なのですけれども、今回の投票率は約72%で、離脱支持は約52%と条件を満たしてはいます。
規定では、署名者が1万人を超えると政府が何らかの回答をする義務があり、10万人を超えると議会がその問題を審議しなければならないとなっているのですけれども、民主主義の根幹に関わる問題ですから、まず認められることはないと思います。万が一認めるのであれば、投票率が75%未満、勝利した側得票率が60%未満という条件は民意を反映していないという証明をしなければならなくなります。やはり難しいでしょうね。
更に、やり直しではなく、EUの市民権を求めて、イギリスから逃げ出す動きも出始めました。何でもアイルランドのパスポートの取得方法をググり捲っているようです。
そして、こういう時に、火事場泥棒が現れるものです。24日、スペインのガルシアマルガリョ暫定外相は「英国との共同統治、つまり、スペイン国旗をジブラルタルに立てることが、これまでよりも現実味を帯びることを願う」と述べ、スペイン南端の英領ジブラルタルの共同統治を検討する意向を示しました。
ジブラルタルは人口約27000人程の都市ですけれども、ジブラルタル海峡につきだした要衝で、1700年から14年続いたスペイン継承戦争を終結させるため結ばれたユトレヒト条約でイギリス領となりました。けれども、スペインはジブラルタルを自国領と主張し、1984年の「ブリュッセル・プロセス」によって断続的に共同統治について協議されているのですけれども、決着はついていません。
2002年にイギリスとスペインの共同統治の是非を問う住民投票では99%が反対の票を投じイギリスの統治を支持しています。
今回のEUから離脱についての国民投票では、ジブラルタルは残留派が96%、離脱派が4%と残留が圧倒的でした。
恐らく、この結果を見たスペインは、ジブラルタルに対して「スペインはEU加盟国であるから、共同統治を受け入れさえしてくれればEUに残留できるぞ」と甘い囁きを掛けてくるのではないかと筆者は見ています。弱みに付けこむではないですけれども、まぁ、世の中はそんなものです。
「岩山に猿がいる限りイギリスの統治が続く」という言い伝えがあるジブラルタルといえども、この状況下ではどうなるか分からないですね。
ただ、そういう策を巡らすスペインですら、EUを揺さぶる震源となる可能性があります。というのも総選挙が目前に迫っているからです。
スペインは昨年12月の総選挙で、主要政党の議席が伯仲し、新政権が樹立できなかった為、
ポデモスは「私たちはできる」という意味のスペイン語で、いわば、オバマ大統領の「Yes,We Can」をそのまま名前にしたような政党です。
政治思想は左翼大衆主義、反体制主義、欧州懐疑主義で、極左に分類する人もいます。
ポデモスは2014年1月に結党されたのですけれども、同年5月の欧州議会議員選挙で、いきなり第4党に躍進。その年の終わりには25万人以上と国民党に次ぐ党員を抱える政党に躍り出ています。その後も党員を増やし昨年末には38万人を超えました。
このポデモスですけれども、2014年の欧州議会議員選挙のために書いたプログラムで、リスボン条約の廃止を主張しているのですね。
リスボン条約とは、既存の欧州連合の基本条約を修正する条約のことで、要するにEU基本条約のことです。これの廃止をするということは、そのままEUからの脱退を意味します。尤も、現段階ではポデモスもEU離脱までは訴えてはいないようです。
ただ、ポデモスのイグレシアス党首が、イギリスのEU離脱決定後に「公平で統一された欧州ならば誰も離脱は望まない。欧州は方針転換が必要だ」とツイートしています。ポデモスが躍進すれば、スペインの態度も変わる可能性があります。
このようにEUの色んなところで軋みが起こり始めているように見えます。これから何が起こるかちょっと予測がつきませんね。
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