今日は感想エントリーです。

6月26日、スペイン総選挙が投開票され、中道右派の暫定政権与党、国民党が議席数を123から137に伸ばし、第1党を維持しました。
※一昨日のエントリー「軋み始めたEU」でスペイン総選挙を28日としていました。お詫びして訂正いたします。
その他の政党はというと、社会労働党は85議席で5議席減。注目のポデモスは71議席と変わらず。新興リベラル政党のシウダダノスは32議席と8議席減となりました。
ラホイ暫定首相は勝利宣言し、国民党が政権運営する権利があると述べましたけれども、国民党は過半数の176議席に届いていないため、これから各党との連立政権協議が行われると見られています。
事前の世論調査では、ポデモスが議席を大きく伸ばすのではないかと思われていたのですけれども、蓋を開けてみれば横這い。要するにスペイン国民は"現状維持"を望んだ、ということです。おそらく先にイギリスがEU離脱を決めた国民投票の影響もあるものと思われます。急激な変化を嫌ったということかもしれません。
その急激な変化に晒されることになったイギリスですけれども、国民投票結果を巡って早くも荒れています。
6月24日、離脱派を引っ張ってきた英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首はこれまでEUへの拠出金が週3億5000万ポンド(約480億円)に達するとしていたのを、テレビ番組で、「離脱派のキャンペーンで起きた間違いの一つだ」と述べ、残留派が主張する「週一億数千万ポンドだ」が正しいことを認める発言をしました。
また、同じく離脱派のダニエル・ハナン欧州議会議員は移民の問題についても「移民がゼロになるわけではなく、少しだけ管理できるようになる」と発言を修正しています。これは、今後EUとの間で行われる離脱交渉でEUと貿易協定を結ぶために「人の移動の自由」が条件になる可能性があることから、予防線を張ったとみる観測もあるようです。
けれども、流石にこの発言にイギリス国民が激怒。「嘘を信じてしまった」とツイートされ、離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加したとも伝えられています。国民投票前にキャメロン首相は、「EU離脱派は6つのウソをついている」と力説していましたけれども、もう後の祭りですね。
下の図は、みずほ総研が作成したEU各国のEUへの供出金(2014年)と、今後イギリスがEUとの間で交渉する協定のオプション一覧です。
オプション一覧の図の最下段(5b)に「離脱の場合に英国が目指すもの」とありますけれども、EUへは金を出さないけれども、これまで通りEUの財とサービスは享受する。移民はちょっとだけ受け入れる、という実に都合のいいものとなっています。残ったEU各国から見れば、なに虫のいいこと言ってるんだ、となるでしょうね。
ただ、イギリスはEUに対しドイル、フランスについで三番目に多く金を出しているんですね。イギリスにとっては、これを払わなくて済むことは助かるでしょうけれども、EUにとっては大きな痛手です。何故かというと、EU加盟国の半分以上は、EUに金を払うどころか貰っている側であるからです。グラフをみて分かるとおり、EU加盟28ヶ国中、EUに金を出しているのは10ヶ国で、残りは貰う側です。先のスペインですら、僅かながら貰う方になっています。
中でも、ドイツの供出金が突出しており、フランス、イギリス、オランダ、イタリアを咥えた5ヶ国で殆ど賄っている状態です。ここでイギリスに逃げられるとその分の負担を他の国が被ることになります。流石にドイツ一国で全部肩代わりするのは無理でしょうから、フランス、オランダ、イタリア辺りにもツケが回って来るでしょうね。
問題はそれに耐えらえるのかどうかです。
フランスやオランダでは、離脱を問う国民投票をやるべきだ、との声も上がっています。もしも、フランスか、オランダがEUを抜けるとすると、イギリス分と合わせてドイツが丸ごと無くなるくらいの減額になります。こうなったら、もう支えることはできなくなるでしょうね。EUは既にクライマックスにいるのかもしれません。
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