孤立の長城に引き籠る中国

 
今日はこの話題を極々簡単に……

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6月5日、フランスのルドリアン国防相は、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、EUは「航行の自由」によって経済的利益を得ているとし「EU各国の海軍は、アジアの海域で目に見える形のプレゼンスを確保するため協調できるのではないか」と南シナ海の公海に海軍艦艇を派遣し、定期的に航行するよう近く呼び掛ける考えを明らかにしました。

このアジア安全保障会議とは、アジア太平洋地域の防衛問題や地域間防衛協力に関し、各国の防衛担当閣僚や専門家などが議論を行う多国間会議で、イギリスの国際戦略研究所(IISS)が主催し、2002年から毎年開催されているものです。アジア安全保障会議は、第1回会議から毎年シンガポールのシャングリラホテルで開催されていることから「シャングリラダイアローグ」とも呼ばれています。

2002年にこの会議が始まった当初は、グローバルなテロへの懸念が多くを占め、アメリカと対テロ戦争に多くの議論が費やされましたが、その後はASEANの安全保障や防衛対話、協力強化に注目が集まりました。そして、2012年以降になって、アメリカの『リバランス(再均衡)』政策に関心が寄せられ、同時にこの地域での中国の戦略への懸念が聞かれるようになったそうです。

以前「安倍総理のアジア安全保障会議基調講演について」のエントリーで取り上げたことがありますけれども、2014年には安倍総理がここで基調講演を行っています。この時、安倍総理は「法による支配」を訴えていました。

この時は、「法の支配」を訴えるだけでしたけれども、今回はフランスのルドリアン国防相の発言に見られるように「軍事プレゼンス」が出てくるようになりました。「法の支配」はそれを在らしめるだけの"強制力"がなければ絵に描いた餅にしかすぎません。話し合いで解決しなければ、力づくで言う事を聞かす。これが現実です。

その意味では、世界もようやく中国というものを知り始めたのかもしれません。

今回の会議では米中の対立が際立ちました。

アメリカのカーター国防長官は、中国の南シナ海侵略の動きについて「みずからの孤立を招き、孤立の長城を築くことになるだろう。……そのような活動は挑発的であり地域を不安定化させるもので、アメリカなど各国は対応を取るだろう」と中国を強く牽制しました。

これに対し、中国軍統合参謀部の孫建国副参謀長は、記者団に対し「中国は孤立していない。彼の話は間違っている、……『孤立している』という考え方はでっち上げで、中国を孤立させたいという目的によるものだ」と反発。孫建国副参謀長はこの会議で、フィリピンが南シナ海の領有権問題で常設仲裁裁判所に訴えた件について、「フィリピンの一方的な仲裁申し立ては国際法違反で、中国は受け入れない。……南シナ海は昔から中国のもので、長い間、異議は出されてこなかった。……ある国は公然と武力をひけらかして仲裁結果に従うよう圧力をかけている。……中国の安全や利益が脅かされれば座視しない」と述べています。

相当焦ってますね。無論、中国に不利な判断が示されるだろうと見られているからです。
この件について、中国は裁判結果を無視する立場を公言していますけれども、それでも"孤立"するのは嫌であるらしく、自分を支持してくれる国を増やそうと、ロシアや中央アジア、中東、アフリカの国々と次々に会談し、40か国以上から支持を得たと発表し、また、仲裁結果を無視したときの批判に備えて「国際的な前例において、判断に従わなかった国々も国際法や国際秩序に挑戦したなどとはいわれていない」などと国際的な司法判断を受け入れなかった事例は、過去にも多くあると言い訳を始めています。

ただ、どんなに言い訳したところで、「我のみ正し」という中華思想を持つ限り、現行の国際法や国際秩序に自動的に挑戦することになります。中国の理屈は世界のコンセンサスとその多くが一致しないからです。法治が訊かない。党指導部が最高最上という世界観を一から見直さない限り、最早、世界との摩擦や対立は無くならないのではないかと思いますね。

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