今日はこの話題を極々簡単に……

7月8日、韓国の国防省と在韓アメリカ軍は「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を配備すると発表しました。
これは、北朝鮮が6月22日のムスダン発射成功を受け、北朝鮮の脅威から国民を守るため、国益の観点から朴大統領が最終判断をしたと言われています。
これまでムスダンは発射失敗が続いていて、韓国政府は「欠陥ミサイル」と見ていたようなのですけれども、今回の成功で「改良が進んだ可能性がある」として、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を招集しています。一部には、この時、THAAD配備の機運が高まったとも見られています。
これに対して、中国が速攻で反応しました。
7月8日、中国外務省は「THAAD配備は朝鮮半島の非核化にプラスにならない上、中国を含めた各国の安全保障を著しく損なう」と強烈な不満と断固たる反対を表明し、米韓に対して配備の動きを停止するよう要求しました。更に北京に駐在するアメリカと韓国の大使を呼んで、厳重抗議をしています。
中国がTHAAD配備を嫌がる理由はこれまでに何度も触れてきましたから、繰り返しませんけれども、余程THAADのレーダーの監視下に置かれるのが嫌なのでしょう。
中国官製メディアである「環球時報」は「環球時報は国に対し、米韓がTHAADミサイルを配備することに対応するため、5項目の制裁措置をとることを提案する」として「韓国行政部門に制裁を行い、THAADミサイル配備と関係する韓国企業とサービス機構に制裁を加えること」「積極的にTHAAD配備を推進した政界人を制裁し、中国への入国を制限すること」、「解放軍がTHAADによるダメージを最大限に低下させるような研究を行うこと」、「北朝鮮の制裁の再評価を行うこと」、「中露連携の可能性を模索すること」を提示しています。
まぁ、ある意味では、これからやることを予告していてくれる訳です。
中国の反発に対し、アメリカは考え過ぎだと一蹴しました。アメリカ国務省のカービー報道官は記者会見で、「これまでも中国側に対して、この迎撃ミサイルシステムは純粋に防衛目的だと説明してきた。われわれは韓国を防衛する義務があり、だからこそ配備を決定した。中国が懸念を抱くようなシステムではない」とコメントしています。まぁ、表向きの回答でしょうけれども。
けれども、韓国側からみた安全保障を考えると、この判断も当然のことだと思われます。なぜなら、韓国の安全保障について中国がアテにならないことを中国自身が証明してしまっているからです。
今年1月、北朝鮮が核実験を強行した際、中国は何もしませんでした。折角開設したばかりの中韓ホットラインでも中国は韓国の呼び掛けにまったく応じないばかりか、中韓外相会談でも、中国は鼻を括ったような対応で韓国を適当にあしらいました。
これでは、韓国も失望するのも無理ありません。まぁ身から出た錆というべきでしょうね。
一方、韓国も蝙蝠よろしく、一度中国側に行ったのを再び日米側に戻って来ざるを得なくなりました。また日本にすり寄って来ることが予想されるのですけれども、早くも、リ・ジュンギュ駐日韓国大使が今年の日米韓首脳会談の時期に、朴大統領が就任以来初となる訪日を計画しているとコメントしています。
予測される中国からの経済制裁を考慮して、日本に経済協力を求めることは勿論のこと、暗礁に乗り上げている、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や燃料などを融通しあう枠組みとなる物品役務相互提供協定(ACSA)の締結についてもイシューに上がって来るものと思われます。
まぁ、困った時だけ擦り寄って来るという、実に身勝手な行動ですし、今回のサード配備で、安全保障面で韓国が完全に中国と手を切ったとも考えないほうがいいような気がします。
またぞろ機密を中国に流さないとも限らないですから。それだけ信頼を失った国が他国と連携するのは難しいということです。日本にとって、国民感情は元より、韓国は地政学以外の意味が大分薄れているのかもしれません。
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