テロから身を守る三つの方法

 
昨日の続きです。

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1.テロから身を守る三つの方法

7月2日午後11時半から始まった緊急記者会見で、菅官房長官は、首都ダッカで起きた武装勢力による人質事件で、人質となった日本人7人が死亡したことを明らかにしました。発表によると、バングラデシュ政府が遺体を搬送した病院で、日本人の死亡を確認。所持品や写真などから、国際協力機構(JICA)のプロジェクトに関わっているコンサルタントの男性5人、女性2人としています。氏名については「ご家族の了解を得ていない」として公表を拒みました。

菅官房長官は「残虐非業なテロで罪のない人の命が奪われ、強い憤りを覚える。断固として非難します」と述べ、3日にも政府専用機を現地に派遣し、遺族らを向かわせるとしています。

また、安倍総理も「今回の残虐非道なテロによって、何の罪もない多くの方々の命が奪われました。強い憤りを覚えます。私たちや国際社会が共有している普遍的価値に対する挑戦であり、断固抗議をいたします。……今後も内外の日本人の安全確保のために全力を尽くしていく考えであります」とコメントしています。

けれども、「言うは易く行うは難し」です。2015年2月、ISISによる日本人人質殺害事件が起きた時、安倍総理は「日本人にはこれから先、指一本触れさせない決意と覚悟でしっかりと事に当たる」と派閥横断のグループ「きさらぎ会」で発言しています。それから1年余り経ち、安保法制が成立しました。けれどもそれは集団の安全を確保するもので、個人個人の安全確保となるとまだ手が行き届いているとは言い難い。そもそも、世界最強の軍事力を持つアメリカでさえもテロに苦しんでいます。

日本国内からテロを無くすことはまだ可能性があるにしても、海外でそうするのは至難の業です。特に今回のような各国大使館が立ち並び比較的治安のよいとされていたグルシャン地区での惨劇です。

テロから身を守ろうとするには基本的に三つの方法しかありません。一つは「テロに巻き込まれないこと」、二つ目は「テロを未然に防ぐこと」、最後に「テロに対抗できる防御力・自衛力を持つこと」です。

これらを海外でどこまでやれるか、を考えてみれば大体答えは見えると思うんですね。

最初の「テロに巻き込まれないこと」ですけれども、これは昨日のエントリーで触れた渡航注意勧告の徹底、および現地での情報収集と展開ということになるでしょう。今回の事件についても外務省は「ラマダン月の金曜日が危険だ」と警告していました。それに従って、7月1日の外出を控える行動を取っていれば、巻き込まれることはなかったかもしれません。

二つ目の「テロを未然に防ぐ」ですけれども、これも実際は難しい。テロリストの動向を逐一かつ24時間体制で監視して怪しい行動を取るや否や即拘束するくらいでなければ、難しいでしょう。しかも海外で、です。現実的には無理ですね。唯一可能性があるのは、テロリストを一人残らず国外退去させ、二度と入国させないことくらいです。

そして三つ目の「テロに対抗できる防御力・自衛力を持つこと」ですけれども、これは個人レベルでいえば、自分がグリーンベレーのような特殊部隊並の能力と訓練を受けて自衛力を蓄えるか、屈強のボディーガードを始終身辺の傍に置いておくということになります。ただ、大金持ちなら兎も角、個人全員となるとこれも難しい。

今回、被害者となられた方はJICAに関わっていた方だそうですけれども、JICAの北岡伸一理事長は「犯人に対し強い憤りを覚える。JICAとして安全対策を一層強化する」と述べています。ただ、実際に有効な手立てを打てるのかどうかは分かりません。防弾チョッキを着こんだところで、ナイフで喉笛を掻っ切られたら、それで終わりですからね。襲撃直後に逃げ出せなければ、相当厳しいことになる。



2.目安となるリオ五輪のテロ対策

これら対策がどれだけ難しいのかについて、こんな言い方は不謹慎なのかもしれませんけれども、目前に迫ったリオ五輪がある意味目安になるかもしれません。

既に色んな所で注意喚起されていますけれども、リオの治安は良くありません。

6月19日には、オリンピック会場とは目と鼻の先にある五輪指定の病院が武装グループの襲撃に遭い、銃撃戦の末、患者1人が死亡、看護師と警官の2人が重体だと報じられています。

JOCは大会毎に安全管理マニュアルを出していますけれども、今回のリオ五輪については特に厳しい内容となっています。たとえば、マニュアルでの「強盗に遭遇した時の対応」では、「抵抗せず要求された金品は素直に渡す」「相手の顔を直視しない(顔を覚えられたと認識されないため)」などに加え「他人が襲われているのを見ても、むやみに助けに行かない」となっており、警察を含めた警備関係者や大会関係者もまったく「信用できない」という無法ぶり。

選手団についても、リオの街でのジョギングは禁止。外出するときは基本的に団体行動。IDカードは勿論、「JAPAN」と書かれたものを身に着けるのもNG。街中での買い物も駄目という徹底ぶりです。平和の祭典とは程遠いですね。

このマニュアルは、先に挙げたテロを防ぐ三つの方法の一番目に相当すると思います。これが何処まで有効なのかは注目に値します。

そして二番目の「テロを未然に防ぐ」については、事実上殆ど期待できない状況のようです。なにせ、リオデジャネイロでは治安を守る筈の警察官や消防士たちまでが抗議デモを行っている始末です。彼らは「Wellcome to HELL(地獄へようこそ)」という横断幕を掲げ「警察や消防士は給与をもらっていません。リオデジャネイロに誰が来ようとも、安全ではありません」とアピールしています。

どうも、リオデジャネイロ州では五輪の準備による財政難から、警察官や消防士の給与遅配が生じていて、こんな状況では観光客の安全を守るのは難しいということのようなのですね。これは既に、テロを防ぐ二番目の方法が崩壊している訳です。

尤も、リオ五輪の大会組織委の広報を務めるマリオ・アンドラーダ氏は「五輪の警備態勢は国家の問題である。……リオだけでなく、ブラジル全土で選手、観光客、メディア、そして関係者を保護することになる。……われわれは、2014年にサッカーW杯(2014 World Cup)を経験している。12か所のスタジアムで行われた世界最大のサッカー大会では、大きな問題は起きなかった。W杯で培った国の警備態勢、経験、そしてテクノロジーによって、大会期間中のリオは世界で最も安全な街になることは確実である」としていますけれども、大会目前の6月になっても武装グループの襲撃を防げない状況では、本当なのか不安になります。

最後の三番目についても、やはり個人あるいは組織としても対応は厳しいでしょうね。観戦客一人一人にボディーガードを付けることなど不可能ですし、警官隊にびっしりガードさせた道だけを歩かせることも出来ないでしょう。第一スタジアム内でテロられたらお手上げです。あとは現地の組織委員会がどこまで警備を頑張れるかどうかですけれども、計算できないというのが正直なところだと思いますね。

これらを考えると、リオ五輪について、現時点で打った目に見える手立てとしては、一番目の「テロに巻き込まれないこと」くらいしかないのですね。これでどこまで何事もなくリオ五輪が行われるのか。これも海外テロの対策の一つの目安になるかと思いますね。

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