中国の利、トランプの理
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トランプ大統領誕生で、急激に日本人の安全保障に対する意識が高まる中、ほくそ笑んでいる国があります。中国です。
11月14日、中国メディアのBWCHINESEは「日本は今後、米国が中国を牽制することを期待できなくなる」と主張しました。
BWCHINESEは有力企業の最高経営責任者、政治家、企業幹部やビジネスエリートを含む以上260万人のメンバーを有する、グローバルなビジネス情報とビジネス分析のサービス行う会員制サイトのようです。
記事では、トランプ氏が「アメリカが世界の警察としての役割を続けることを見直す必要がある」と、選挙期間中に発言したことについて、アメリカが世界の警察としての役割を止めれば、東シナ海問題や南シナ海問題で米国が中国に対して「横やり」を入れることが減るとして、それは中国にとって非常に好都合であると述べています。
また、別メディアでも、トランプ氏がTPPに否定的であることを取りあげ、アメリカがTPPから離脱すれば、貿易拡大を見込んできた日本にとっては大きな打撃となると述べています。
これらメディアは、どうやらトランプ大統領は中国に対して有利に働くと見ているようです。
けれども、トランプ氏は中国に甘い発言をしている訳ではありません。例えば、中国が人民元の押し下げ行為を止めなければ、中国製品への関税を引き上げるべきだとして、中国製品に最大最大45%の輸入関税をかけるとも主張しています。
これに対して、当然ながら中国は反発しました。けれども、それはいつもの彼の国らしいというか、半分恫喝に近い反発です。
11月13日、「環球時報」は「中国政府は米国のボーイング社の代わりに欧州のエアバスの航空機を購入する。米国の大豆やトウモロコシの輸入も中止する。さらに、米国で学ぶ留学生の数も制限する。やり手のビジネスマンであるトランプはそんなにも愚かな人物なのだろうか……トランプが中国に関税を課すのなら、iPhoneの売上は打撃を受けることになるだろう」と主張しています。
尤も、トランプ氏の発言に対する反発は中国だけではありません。日本もしています。
11月14日、安倍総理は在日米軍の駐留経費を全額負担するよう主張していることについて、「在日米軍は地域全体の平和と安全を守る上で重要な役割を果たし、米国の前方展開戦略の要だ……米国のさまざまな権益を守っていくことにつながっていく……日米間で適切な分担が図られるべきだ」と拒否する考えを示しています。
一見するとどちらも同じく全拒否のように見えます。けれども両者には大きな違いがあります。それは「利」と「理」です。
安倍総理の拒否は「在日米軍は地域全体の平和と安全を守っている。その上でアメリカの利益にも繋がるのだ」と「理」をベースに「利」を説く形となっています。
それに対して中国のそれは、「輸入を中止する」といった利益誘導だけ、どこまでいっても「利」しかありません。
以前「理の国(国家の性格について考える その5)」や「理和利情の外交(国家の性格について考える その6)」のエントリーで述べたことがありますけれども、トランプ氏がその外交において「理」を重視するのであれば、安倍総理の言葉に耳を傾けるでしょうし、「利」しか目に入らないのであれば、中国の言にころりとやられてしまうことになるでしょう。
果たしてトランプ氏は「理」と「利」のどちらを選ぶのか。
もちろん、100%どちらか、ということはないでしょうけれども、今のところ筆者はトランプ氏は「利」を追及しても「理」を捨てることはない、と見ています。
昨日のエントリーでも取り上げましたけれども、トランプ氏は同性婚も判決が出たということを以て、許容する発言をしていますし、先の中国の関税の問題にしても、アメリカ政府が中国からの輸入品にほとんど関税を課してない一方で、中国は自国のメーカーを保護するため、米国製の自動車に約20%の関税を課している件を取り上げ、「俺はアメリカの貿易担当者たちに、この件で中国を訴えさせてやる。アメリカだけでなくWTOでも問題にしてやる」と問答無用で関税を掛けるというのではなく、法に訴えると述べているのですね。これは「理」を捨てていない証拠だと思いますね。
もしかしたら、中国はトランプ氏について「札束で引っぱたいてやれば、コロッといくだろう」くらいに舐めているかもしれませんけれども、トランプ氏は大統領選で一切の献金を受け取らず、自身のポケットマネーだけで戦ってきた人です。大統領としての給与も受け取らない、と表明しています。つまり世界で最も金銭的ロビー活動が通用しない人物の一人といっていいように思われます。
その彼に単に「札束で引っぱたいて」上手くいくのかどうか疑問ですね。おそらくは安倍総理的な「理」をベースにして、互いに「利」を得るような外交交渉の方が結果として上手くいくような気がしますね。
この記事へのコメント
sdi
現にそれであっさり転んだ大統領とその夫人がいましたからね。
アメリカ人を舐めるのも無理はないですよ。