台頭するオルト・ライトと問われるリベラルメディア

 
今日は感想エントリーです。

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1月26日、アメリカのニューヨーク・タイムズはトランプ政権のスティーブン・バノン大統領上級顧問兼首席戦略官が、電話インタビューでメディアを敵視する姿勢を鮮明にしたと報じました。

バノン氏は大半のメディアがトランプ大統領の当選を予測できなかったと指摘した上で、「メディアは(失態を)恥じて屈辱を味わい、しばらく黙って、ただ聞いているべきだ……メディアは対抗勢力であり、この国を理解していない。なぜドナルド・トランプが米大統領になったのかをいまだに理解していない」と述べています。

バノン氏は右派メディア「ブライトバート・ニュース」の前会長で、トランプ政権で就任した首席戦略官兼上級顧問というのはバノン氏のために特別に設けられたポストのようです。

「ブライトバート・ニュース」はその名のとおりアンドリュー・ブライトバートという人が立ち上げたサイトです。ブライトバート氏は記者としてリベラル系ウェブメディア「ハフィントン・ポスト」でも働いた経験があるのですけれども、保守のハフィントン・ポストを目指して「ブライトバート・ニュース」を立ち上げたそうです。

けれども、ブライトバート氏は2012年、43歳の若さで他界。スティーブン・バノンがブライトバートの運営に乗り出し、同サイトをオリジナル記事を中心とした保守系ウェブメディアに変えていきました。

スティーヴン・バノン氏は映画監督出身です。ハーバード大学でMBAを取得してゴールドマン・サックスで働いた後、自ら投資会社を立ち上げ、映画への出資を始めました。

1991年に『インディアン・ランナー』。99年にアンソニー・ホプキンス主演『タイタス』を製作。2004年にはレーガン元大統領がソ連との冷戦に勝利するまでを描くドキュメンタリー『イン・ザ・フェイス・オブ・イーブル/レーガンの世界戦争と功績』を自ら監督。これが切っ掛けで、バノン氏はブライトバート氏と知り合いました。

このバノン氏は2016年3月に大統領選挙中のトランプ陣営に参画。8月には選対本部長に就任します。ですから、トランプ政権がバノン氏専用のポストを設けてまで遇するのも、論功行賞だと思えば理解できなくもありません。

バノン氏は「ブライトバートはオルト・ライトのプラットフォームだ」と述べています。

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オルト・ライト(Alt-Right)とはオルタナティヴ・ライトの略で"今までとは違う右翼"という意味です。

この運動の名付け親は"クックサヴァティヴ"運動の参加者の一人、リチャード・スペンサー氏。"クックサヴァティヴ"とは、鳥のカッコウ(Cuckoo)とコンサヴァティヴの合成語。カッコウは他の鳥の巣に卵を産んで育てさせることから、英語のCuckooには「妻を寝取られる夫」の意味があり、そこかれあ"クックサヴァティヴ"は「寝取られ保守」という意味になるそうです。

で、何に寝取られるのかというと、リベラルやマイノリティ。共和党員や旧来の保守は、不法移民やイスラム教徒に寛容なところがあり、それに対する批判を込めた運動だということですね。

スペンサー氏に言わせると共和党はみんなクックサヴァティヴなのだそうで、オルト・ライトの人達はほぼトランプ氏を支持しています。それを考えると共和党はある種の対立を内包しているとも言えます。

そして対立はそれだけではありません。

スペンサー氏はいわゆる白人至上主義者で、自ら会長を務める「ナショナル・ポリシー・インスティテュート」という団体で、知能指数において白人が最も優れているという「人種的事実」を研究しているそうです。

当然の如く、"リベラル"な人達はスペンサー氏を敵視します。

トランプ大統領就任式があった1月20日、スペンサー氏は反トランプのデモ参加者に襲撃されました。

スペンサー氏が、トランプ大統領の就任式中に勃発した暴動についてテレビのインタビューを受けていた時、フードをかぶったデモ参加者が右から横切り、無防備なスペンサー氏を殴ったのですね。

その模様は動画でネットにアップされ波紋を呼んでいます。

スペンサー氏は「突然やって来て、奴は私の耳をいきなり殴った。今、私の右耳はよく聞こえない……襲ってきた男は前にも自分を殴ろうとしたが、完全に接触することはできなかった……暴行されたのはこれで3度目だ。本当にひどい暴行だ。一番卑怯なやり方で殴られた」と述べていますけれども、こんなやり方では増々自身の説得力を失うだけでしょう。

トランプ政権によって、クローズアップされてきたメディア不信の構図。その成り行きによっては日本にも影響が及ぶかもしれませんね。

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