昨日の続きです。


1月21~22日、北朝鮮から「三池淵管弦楽団」の使節団7名が韓国を訪問しました。
これは、平昌五輪でソウルなどで公演する会場の事前確認の為です。19日夜には使節団派遣を中止すると揺さぶりを掛けていたのですけれども、結局1日遅れで視察に来たという訳です。
韓国側は使節団の為に移動に使う高速鉄道を貸し切りで臨時運行するなど下へも置かぬ歓迎ぶり。
使節団はオリンピックの競技会場がある韓国東部の江陵市で、会場の候補である体育館や文化施設を視察したのですけれども、韓国メディアはその模様を大々的に報じました。
中でも注目を集めたのは「三池淵管弦楽団」の玄松月団長です。黒い毛皮のマフラーに黒のコート姿で韓国入りした玄松月団長は、行く先々で、多くの報道陣に囲まれながらも、時折笑みを浮かべる余裕の表情。
聯合ニュースは、玄団長のファッションについて、「コートのボタンには宝石が光り、ブーツにも金色の装飾が入っていて、洗練されている」などと詳細に報じ、複数のニュース専門チャンネルも、昼食で「カルビチム」という料理を食べたなどとちょっとしたアイドル扱いです。
この"我が物顔"の態度に韓国では反発の声も上がっています。
東亜日報は「北の傍若無人な振る舞いは昨日今日のことではない。韓国政府は北一行の経由地に数百人の警官を配置し列車も貸し切るなど、大切な客人のように接待している」と北朝鮮に甘い文在寅政権を批判しています。
更に玄氏ら視察団がソウルに戻ってきた22日にはソウル駅付近で市民らが「江原道、平昌の住民の汗と努力が水の泡にされる」と訴え、金正恩の写真を燃やすなど抗議の声を挙げています。
この世論を反映してか、文大統領の支持率は低下。世論調査会社リアルメーターが22日に発表した世論調査では、文大統領の支持率は66%で、前週より4.6ポイント下落しています。
22日、文大統領は「奇跡のような対話の機会を五輪後まで生かす知恵と努力が必要だ」と南北協力への理解を求めていますけれども、足下が揺らぎ始めています。
勿論、この状況は北朝鮮の金正恩にとっては、望むところでしょう。韓国に対して主導権が握れますから。
あるいは、この機会に文在寅大統領の支持率を落とす為に、殊更に使節団に"我儘に振舞え"と指示を出していることだって考えられなくもありません。
更に北朝鮮は、22日に韓国の保守系団体が22日の集会で、金正恩の写真や北朝鮮国旗を燃やしたことに強く批判する談話を発表。文在寅政権が「妄動を黙認した」と批判し「冬季五輪に関連した今後の措置も慎重に検討せざるを得ない」と参加撤回も仄めかしています。
ここぞとみたのか次々と上から目線で揺さぶってきます。もう徹底的に五輪が政治利用の道具にされていますね。
このように平昌五輪対応を切っ掛けとして文在寅大統領の支持率が低下しているのですけれども、どうも大統領府はこの事態を予測できていなかったようです。
1月22日、大統領府の高官は記者団に対し、「昔と同じように全国民が何の異論もなく受け入れてくれると考えていたが、特別な状況が発生した……青瓦台のブレーンたちは、五輪を成功させ、南北関係を改善する新しいモメンタムを形成する上で、至急かつ必要なことだと考えていた……不公正だとして20-30代が敏感に反応しているということが分かったのは事実だ」と驚きを隠しません。
そして、関係改善のために合同チームの結成は唯一の代案で、異論が出るとは思わなかったとして「異論があっても、より重要な価値だとも考えられるため、理解してもらえるものと思っていた……20-30代が就職難や青年失業といった切迫した状況に追い込まれ、『公正』というキーワードに敏感に反応したことは、極めて重要で反省すべき問題」だとして「この世代にわれわれの論理を押し付けて『理解してくれ』というのは無理だと思う」と若者層の反発が想定外だったことを認めています。
この現実を突きつけられて、文大統領は政権運営を変えるのか。それともこのまま北朝鮮べったりで突き進むのか。まだまだ6割以上の支持率を誇る文大統領ですけれども、対応をミスれば一気にレイムダックに陥るかもしれませんね。
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