昨日のエントリーに関連した話題です。


2月22日、フランスのマクロン大統領は、海外投資家による農場買収の阻止につながる措置を講じる構えを示しました。
これは、パリの大統領府を訪れた若い農業従事者らに対して語ったもので、マクロン大統領は「フランスの農地はわが国の主権が関わる戦略的な投資だと私は考えている。よって購入の目的も把握しないまま、何百ヘクタールもの土地が外資によって買い上げられるのを許すわけにはいかない」と懸念を示し、「規制予防策を確実に講じ、皆さんと協働していく」と規制する考えを述べました。
この背景には中国ファンドが昨年、仏中部の穀物産地アリエ県で900ヘクタールの土地を購入、さらに、2016年にアンドル県で1700ヘクタールが買収されたという事情があります。
アリエ県とアンドル県は、フランス中央部に位置し、フランス革命期の1790年3月4日に設置された83県です。
アリエ県はブルボン家ゆかりのブルボネー州とほぼ重なる県域を持ち、食品産業、林業、家具製造、化学工業、金属加工、電気機器製造、自動車製造等々が県の経済を支えています。かつてはベリ地方から運河で運ばれてくる鉄鉱石と結びついた鉄鋼業も発達していましたけれども、現在、工業は衰退ぎみと言われています。
一方、アンドル県はコムギ、オートムギ、マイス、オオムギ、ナタネ、ヒマワリを精算し、ワインの産地も抱えています。
中国企業は、これらの土地の地価の安さと地方部の経済的困窮に乗じて農地買収を進めているそうで、現地で懸念の声が上がっているのですね。
海外からの用地買収をめぐっては、2月1日、オーストラリアがに新たな規制を発表しています。
これは、外資による送電網や農地の取得に関する規制で、送電網については、全ての売却案件が外資の出資上限などの規制対象となり、農地に関しては、売り手に対し国内で最低30日間、売却広告を出すことを義務付け、国内の買い手に優先権を与える規制のようです。
オーストラリア政府は送電網規制について「安全保障リスクの管理と雇用や経済成長の促進との適度なバランスを実現する、開かれた海外投資制度にコミットしている」と述べていますけれども、国内で買い手がいなければ、結局、外資に買われてしまう訳ですから、根本解決とは言い難い。
規制が効いているうちに国内経済を活性化させるのが急務です。
翻って日本はというと、大差ありません。同じように中国にバカスカ土地を買われている事実があります。
農水省は、市町村等への届け出情報などから全国の森林の土地所有者を調査したところ、2016年の1年間で202ヘクタールもの土地が所在地を海外に構える外国資本によって買収されたことを発表しています。
これは前年買収された67ヘクタールと比べて3倍の伸びを示し、国内に拠点を持つ外資系企業による買収事例も含めると、その買収面積は777ヘクタールに及びます。
しかも、これら買収された森林の殆どが北海道で、香港・台湾を含む中国系の土地取得者による買収面積が81%にもなっているそうです。
日本維新の会の丸山穂高衆院議員は「海外資本から国土を守る法制度は事実上ないに等しいのが現状です。だからこそ、今の森林法を改正して山林などの売買を事前届け出制にすることを求め、改正案の提出準備を進めている最中です。……農地、水源地など広大な土地を外国資本が買う動きを見せた際にきちんと審査に掛けて、場合によっては取引を規制できるようにするべきです。仮に問題のある取引であることが判明すれば、既に買われてしまった土地でも国が収用できるようにもすべきと考えます。国土を守ることと安全保障は密接にリンクするため、早急に国会での議論を始めたい」と述べていますけれども、手を拱いていれば、いくらでも買収できてしまうのですね。
領土は戦争でしか奪われないという訳ではありません。
買収した土地に企業を多数進出させ、さらに本土から多くの従業員を移動させてしまえば、実質上そこを抑えることも出来なくもありません。
東京ドーム何十個分かの土地が全部中華街になって、その真ん中に大使館でも建てられても放置するのか。
そうした事を考えるとやはり、度を越えた買収には一定以上の制約があってしかるべきだと思いますね。
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